ワンダーワールド 第一幕「草原の街」

果てしなく続く空の下の緑色の草原
そこに敷かれたアスファルトの道をバイクが疾走する。

バイクを運転する人の名はアリス
彼女は花畑で目覚めた。前世の記憶は、まるでコラージュのように散り散りとしている。首縄、黒猫、仲間、お煎餅…どれも前世の記憶であろう。
アリスは起き上がると、辺りを見回す。後ろを振り向くと一台のバイクが置いてある。スーパーカブ110だ、ご丁寧にヘルメットと鍵、大きなバックもある。バックの中にはコートと水と財布があるだけで、他は何もない。が、旅をするには十分な大きさだ。アリスはコートを着て、ヘルメットを被り、ゴーグルをつけ、バックを背負い、スーパーカブのエンジンをかけて跨って、その先にある道を走り始めた。

暫く走ったであろう。このバイクは不思議なことに、いつまでも走れるようだ。
太陽が西に傾き始めた頃、草原の先に連なる建物が見えた、街だ。

雲のように白い建物とのどかな雰囲気がアリスを優しく出迎える。街は活気に溢れていた。アリスは宿屋を見つけると、駐車スペースにバイクを停め、宿屋でチェックインを済ませた。案内された部屋に入り、荷物を下ろした。アリスは大きく背伸びをすると、部屋を出て、街を歩くことにした。この街の心地よい風はアリスの金髪を靡かせる。街は比較的小さいものの、高低差がなく歩きやすい。店では野菜や肉などといった食料品や紙や石鹸などの日用品が売られている。食堂からは、とてもいい匂いがする。人々は平和そうに過ごしている。街を歩いていると、あっという間に空はオレンジ色になっていた。アリスは哀愁漂う街を駆け抜け、宿屋に戻った。

アリスは宿屋の中にあるお風呂に入った。若草色の水と綺麗な夜空が、アリスを癒した。きっと、前世では見ることができなかった景色であろう…
アリスはお風呂からあがると、自室に戻り、雲のようにふかふかなベットで眠った…

翌朝
アリスはこの街の最後の思い出にと、食堂で朝食をとることにした。彼女が頼んだのはフレンチトーストだ。
柔らかく、甘いフレンチトーストは朝食にもってこいだ。淡い青色の空の下で食べるフレンチトーストはきっと格別だろう。
朝食を済ませ、代金を払い、荷物を持ち、チェックアウトを済ませ、バイクにのると、この草原の街を出た。

このアスファルトの道の先には、次なる出会いが待っているであろう…

続く

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