乳がんになったので遺伝子検査を受けてみた
乳がん患者のうち、5~10%は遺伝性だと言われている。
この数字を多いと見るか少ないと見るかはともかく、遺伝性乳がんの人は将来もう片方の胸も乳がんになったり、卵巣がんになったりする可能性が高いそうだ。
ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーが両胸を全摘していることはご存知だろうか。
彼女は遺伝子検査の結果、乳がんや卵巣がんに罹患しやすい「BRCA遺伝子」の変異を持っていたため、予防として両方の乳房と卵巣、卵管を切除した。
BRCA遺伝子変異を持っていた場合は、自分の親族も同じ遺伝子を持っている可能性が高い。
母親と娘が2人とも乳がんになった、姉妹2人とも乳がんになったといった話を聞いたことがある人もいるだろう。
また、かなり若い年齢で乳がんになったり、両方の胸が同時に乳がんになったり、男性で乳がんになったりするケースもあるが、そういった場合も遺伝性であることが稀ではないそうだ。
乳がんになると、医師から遺伝子検査を勧められることがある。
かくいう私も主治医とセカンドオピニオンの医師の両方から勧められた。
ではどういう人が勧められるのかというと、以下の項目にひとつでも当てはまるものがある場合だ。
45歳以下
60歳以下でトリプルネガティブタイプの乳がんを発症
2個以上の原発性乳がん(再発は含めない)
男性乳がん
卵巣がん(卵管がん・腹膜がんを含む)
3親等以内に乳がんや卵巣がんを発症した血縁者がいる
しかし検査代が高く、保険適用で自己負担が3割であっても6万円くらいかかる。
それでも2020年4月までは全額自己負担だったらしく(つまり20万円くらい)、3割で受けられるだけでもありがたいことだ。
いや、そうは言ってもそれ以外にもいろんな検査を受けてるし、入院して、手術して、治療を受けて……とかなりのお金が掛かっているので、病気になると経済的な問題がめちゃくちゃ重くのしかかってくる。
検査を受けてBRCA遺伝子変異を持っていたことが分かった場合、考えることがいくつかある。
まずは親族、特に女性の親族に伝えるかどうか。
私の場合は従姉妹と姪っ子(って言ってもまだ小さいので兄夫婦に)ということになるが、人によっては姉妹や娘さんに「あなたは将来、乳がんや卵巣がんになるリスクが大きいよ」と伝えることになるのでかなりしんどい。
そしてアンジェリーナ・ジョリーのように、予防として乳房や卵巣を切除するかどうか。
とりわけ卵巣がんについては健康診断などで見つけることができないそうで、発覚した時にはかなり進行していることもあり得るらしい。
こういった現実に向き合うことがつらいため、遺伝子検査を受けないという選択をする人も少なくないそうだ。
もちろん金額の問題もあると思うが。
だから私の主治医は「あくまでもこういう方法がありますよというお知らせなので、ご自身で受けてみたいと思ったら受けてください。後からでも受けられるので、治療が落ち着いてからでもいいですし」と言っていた。
遺伝性であることが分かった場合はそれに合わせた治療薬もあるので、私としては知っておくことのメリットのほうが大きいと思った。
それに乳がんになった原因も分かってスッキリするかなとも思った。
遺伝性でなければ、やっぱりとんでもなくひどい生活習慣を送っていたことが原因かなって思うので、改善の余地は多くある。
だけど私の場合は親族の誰にもがん患者がいないため、恐らく遺伝ではないだろうなと最初から思っていた。
あまりにも誰もいない。
だからこそ、自分もがんにはならないだろうとタカを括っていたのだ。
反対に夫は祖父も父親もがんで亡くしているし、父方・母方どちらの叔父叔母も複数名ががんになっているので、夫にはいつも検診をしっかり受けるよう言っていた。
そんな私が遺伝子検査を勧められた理由は、年齢の部分が該当するから。
大勢いる親戚の誰ひとりもがんに罹患していないとは言え、可能性はゼロではないし、とにかく白黒ハッキリさせるために受けることにした。
検査方法は血液検査なので、採血をされて終わり。
そして3週間後に結果を聞きに行った。
陰性だった。
つまり、遺伝性ではなかった。
私は以前、叔母から「あんな無理な働き方してたら、そりゃ身体も壊すよ」と言われてムッとしたことがある。
がんの原因はそういうことではない。
患者自身が自分の生活習慣を正すためにそう思うのは自由だが(実際私もそう思ってるし)、他者から言われるのはすごく嫌。
私は主治医から言われた「がんになったのはあなたのせいじゃない」という言葉をとても大切にしている。
その言葉を言われた時に「これから遺伝子検査を受けるんだけど、遺伝の可能性だってある」と言い返したのだが、遺伝ではなかった。
結果は聞かれない限り報告しないでおこう。
他者から「ほら、やっぱり遺伝じゃなかった。無理な働き方をしたせいじゃん」とでも言われたらハラワタ煮えくり返っちゃいそうだが、自分で自分の過去を省みて改善することについてはポジティブだ。
私が乳がんになった理由は複数あるだろうが、自分で改善できることはいくらでもあるので、再発を予防するためにできることは何でも取り組んでいこうと思う。