仮面ライダーストロンガーに見る、ルチャ・リブレとの共通テクニック
先日、日本に帰国した時、MXテレビで仮面ライダーストロンガーが再放送されていた。
これまでウルトラマンシリーズにおけるプロレス技術については何度か書いてきたが、今回はストロンガーの受け身と、ルチャ・リブレとの共通の技術をフォーカスしてみたい。
筆者は以前、ウルトラマンの前回り受け身がルチャ・リブレの受け身「トレス・クアルトス」と同じものである、ということを書いた。
ルチャの前回り受け身は従来のプロレスとは違い、日本からメキシコに渡った柔術の受け身であり、柔道式とは違ってひざをまげて前転するようにして取るものだ。
仮面ライダーストロンガー第20話「恐怖の大砂漠!二人の藤兵衛!?」を見ると、ストロンガーは変身前を含め、何度もこの受け身を取っていた。
たまたまかもしれないが、この話の舞台が砂漠だったので、受け身が取りやすかったこともあるのだろう。
そして奇械人アリジゴクもストロンガーに負けず、よりきれいにトレス・クアルトスを披露。タックルに変身前の岬ユリ子も、一度前回り受け身を見せている。
初期のウルトラマンシリーズでは格闘技の経験のない役者さんが、なれない着ぐるみを着用しながらアクションをやっていたのに比べると、仮面ライダーシリーズは最初から大野剣友会という、アクション専門の部署が担当していただけに、受け身も板についているというか、危なっかしさがみられない。
今回ストロンガーを視聴して驚かされたのは、受け身だけではない。
ユリ子が戦闘員の手首を取って投げる、合気道の投げ技を見せたところだ。(作品中ユリ子は合気道の達人とされている)
この技はルチャでいうところの「ラティゴ」と呼ばれる基本的な技である。
そしてストロンガー変身前の城茂は、相手の左手首を取った投げ技を二度披露。これはルチャとは違うが、合気道の投げ方で、ラティゴの変形といっていい投げ技だ。
合気道の技が仮面ライダーとルチャ・リブレに取り入れられているというのを令和になって気づいたわけだが、先にルチャの受け身は柔術のもの、と書いたのに、なぜ合気道?と思われるだろう。
実は1933年にメキシコにルチャ・リブレ団体CMLLができた時、最初にコーチとなったゴンサロ・アベンダーニョ・ゴンサレスという人物が身につけていたのは、大東流合気柔術という格闘技だった。
大東流合気柔術は、のちに合気道の創始者となる植芝盛平も学んだ、いわば合気道の元となった武術で、柔術の基礎と合気道のテクニックの両方を兼ね備えた武道なのだ。
メキシコでCMLL旗揚げから30年以上に渡り、ルチャのコーチを務めたアベンダーニョは、メキシコの陸軍士官学校で大東流合気柔術の原田信蔵に学び、のちに前田光代(コンデ・コマ)、佐竹信四郎の講道館出身者にも指導されている。
たまたまではあるが、ストロンガーとルチャ・リブレには、受け身以外にも合気道の技という意外な共通項があったわけだが、アベンダーニョと大野剣友会、どちらも日本古来の武道をベースにしていたことによるものだろう。
そんな中でもストロンガー作品中、ブラックサタンの戦闘員の前回り受け身が、柔道式の片足を伸ばすものだったシーンも見られることから、必ずしもアクション担当の人たち全員が同じ技術だったわけではない、というのも興味深かった。
近年の仮面ライダーシリーズや戦隊シリーズを見ると、屋外で前宙受け身を取っているシーンをよく目にする。空中で一回転し、背中を地面に叩きつけて受け身をとるのは、本来自殺行為といっていい。
そのため彼らは回転した際、背中ではなく足の裏から落ちるようにして、体重を殺し、受け身を取っている。
とはいえ決して安全なわけではなく、背中から落ちてしまうこともあるだろうし、ちゃんと受け身をとっても、足首、かかとを負傷することもあるはずだ。
視聴者を楽しませようと、より激しいアクションと、進化していく技術を見ていると、アクション担当の人たちにプロフェッショナリズムを感じ、敬服せざるをえない。
最近のプロレスもそうだが、くれぐれも行きすぎないように、と思うのだ。
(ちなみにストロンガーの写真はなかったので、仮面ライダーエックスのものを使いました)
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