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絆創膏と飛行機と執事

このところ雨続きで、洗濯物を室内干しすることが多かった。
うちには乾燥機が無い。きっと気付かないうちに生乾きの衣類をしまっていることも多いと思う。
おそらくそれが原因と思われるのだが、今現在私から、3日くらいつけっぱなしにした絆創膏みたいなニオイがする。なんともいえない匂いだ。

そして私は国内線の飛行機の中にいる。機内は狭く、わたしの両端には知らない人が座っている。つまり、3人掛けのシートの真ん中にいるのだ。
「これはよくない…」
そして私はまだ分析の途中だった。はたして、私のどこから匂うのか。音楽を聴いて気分を和らげながらさりげなく鼻先に神経を集中させる。
ふと後ろから話し声が聞こえた。
「なんか雑巾の匂いしない?」
「そう?する?」
私はギクリとした。人によっては雑巾の匂いに感じるかもしれない。その原因は私で、背後にまで匂っているのかと思うといたたまれない気持ちになる。心に突き刺さる痛みに耐えながら匂いの元をたどっていると、ようやく発生場所を特定できた。
「ここだ!」
それはTシャツの襟ぐりだった。それ以外の場所からは匂わないことも確認できた。おそらく前回この服を着た時に、たくさん汗をかき、洗濯したものの、生乾きのまましまってしまったのだろう。
ならば話は早い。「フタ」をしてしまえばいいのだ。
私はおもむろにカバンから「フェイスタオル」を取り出した。それは知る人ぞ知る「執事の限定タオル」で、持っている者は全国に五人しかいないというレアな品だ。さりげなく両端には執事の麗しいお顔がプリントされている。
私はぐるりと首に巻いた。
「執事ありがとう。今日もあなたに助けられています…」
私は感謝の気持ちに満たされ、着陸まで目を覚ますことはなかった。

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