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晴れたね

七夕というと、たいてい曇ったり雨が降ったりして星が見えないことが多いんだけれど、今年は晴れた。
たまにはこういう年もあるのだ。

星空が見えない年は会えないと偉い人から聞いていたから、今年もダメなんだろうなと思っていたら晴れちゃってびっくりというのが正直な気持ちだった。だから彦星と会う準備なんてなんもしてない。ていうか、機織りの納期がせまっているのを数件かかえてて、それどころじゃない。
今どきの織姫は忙しいのだ。

それでも、まぁ年イチで合うのも悪くないかなぁと思って、織姫は出かける支度を始めた。
最近開発した、天女の羽衣風の透明感としなやかさを兼ね備える織物で作った着物を着て、百年くらい前にもらった髪飾りを付けた。

毎年、天の川銀河ばっかりでちょっと飽きてきたから、今年はアンドロメダ銀河はどう?って言ったら「いいね!じゃあ、そこで待ち合わせな!」って返事が来た。

地球の人間によれば長い長い時間が過ぎると、天の川銀河とアンドロメダ銀河はいずれぶつかってしまうらしいんだけれど、ぶつかるって言っても広いし、隙間だらけだし、何とかなりそうだなと織姫は思っている。

織姫は、彦星の好きな「吉野家の牛丼の並」を抱えて出発した。

彦星は地球温暖化とか、円安とかいろんな問題を抱えてわりと多忙な日々を送っていた。牛を育てるのもラクじゃない。店先に220円で牛乳飲み放題のミルクスタンドを設置しているのを褒めてほしい。しかもジャージー牛の日とホルスタイン牛の日をちゃんと分けているのだ。

彦星は百年くらい前に織姫が仕立ててくれた浅葱色の衣を着ていくことにした。この色が一番イケメンに見えると自分では思っているし、お気に入りの色でもある。

今年のプレゼントはだいぶ前に織姫が食べたがっていた「フリーズドライいちごのホワイトチョコがけ」を用意してある。牛乳に関して専門家である彦星は牛乳を使った食品をいくつも開発している。今回のデザートも何回も試作品を作りレシピを完成させたものだ。彦星は自信をもって出発した。

地球にある日本は夕方になり、夜になった。
国立天文台によれば夜九時くらいにはふたりが南東の夜空に見える予想になっているけれど…
外出するから見えなくなる予定だ。
この後のSNSやニュースがどんなことになるのか、ちょっとだけ気になるふたりだった。




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