$”悪夢の超特急”リニア中央新幹線
$解説
「夢があっていい! 」「地域が活性化する! 」と思っているあなた。覚悟はできていますか?
新幹線の3倍以上かかる電力を原発再稼働でつくる? 南アルプスの天然水を枯らし、稜線に残土を積み上げる? 1日に1700台ものダンプカーを街中に走らせる? 日本最大のウラン鉱床地帯にトンネルを開ける?
【著者メッセージ】 総事業費9兆円。この史上最大の鉄道事業は、その問題点をほとんど報道されることなく着工目前まで来た。 東京・名古屋間の286キロのうち86%の246キロがトンネルになることで発生する水枯れの可能性、処分方法の決まらない膨大な建設残土、掘り当てるかもしれないウラン鉱床、一日に1700台ものダンプカーが12年も走る村、10年以上も続く騒音と振動と土ぼこり、喘息、生活と交通阻害、生態系の劣悪化、立ち退き等々。
私がリニアに関して取材を続けるのには理由がある。いま伝えるしかないからだ。
3・11の前、原発の危険性を訴えるマスコミはきわめて少なかった。事故が起きてから、多くの記者が饒舌になった。原発関連の本にしても、事故のあとは数百冊も出ているはずだ。もちろん否定しているのではない。次から次へと新たな問題が発生する以上、どれも大切な情報である。
だが、その礎を作ったのは、原発事故以前の数十年間、事故の可能性を訴え、反原発を訴えていた少数の市民団体やジャーナリストや研究者だ。たとえば、原発事故のあと、どの講演会場も立ち見が出るほどに時の人となった小出裕章・京都大学原子炉実験所助教は、事故の前は10人前後しか聴衆のいないときもあった。それでも腐ることなく、淡々と講演活動を続けた。市民団体も廃炉を視野に入れた運動を展開したり、東京電力に何度も申し入れを行なっていた。 だが、マスコミは東京電力という大スポンサーに配慮して、こうした声を拾わなかった。東京電力はひたすら「原発は安全です」を繰り返し、国民的検証もないまま、ついに事故が起きた。
リニアが事故や問題を起こすとは断言しない。ただ人間が造るものである以上、その可能性はある。リニア計画では、すでに山梨県のリニア実験線周辺で、起こらないといわれていた水枯れが頻発しているだけに、問題発生の可能性は低くはないと推測する。しかし、その検証がされていない。
あるテレビ関係者は言った。「JR東海がスポンサーである以上、報道は難しい。でも、事故や大問題が起これば取材できる」と。だが、私は事故を待ってなどいられない。いま伝えることで、多くの人にリニアに関する情報を知ってもらい、議論をしてほしい。 なぜなら、リニアは似ているのだ。原発の推進の仕方と。
$読者レビュー引用・編集
某大学系出版社から出版間際に没にされた書籍。
おそらく自主規制という文脈で理解出来る。
本書は樫田さん(1959-)が長期にわたり自分の足で取材した内容が書かれている。橋山氏の「リニア新幹線 巨大プロジェクトの「真実」 (集英社新書)」が俯瞰的あるいは鳥瞰的な立場で書かれているのに対して本書はまさに地を這い回ってリニア新幹線構想の問題点をあぶり出している。
元国鉄技術者の告白(消費電力問題等)、電磁波問題を追い続けている市民団体、国家プロジェクトの言葉をちらつかされて土地を売ってしまった地域住民。
1999年、リニア推進団体も反対団体もリニアは実現しないと思った、そして樫田氏も取材を止めたと綴っている。しかし、2007年JR東海がリニアを自費建設すると発表。そこからまた利権が動きだす。
是非ともリニアが想定されている地域の皆さんには読んで欲しい。もちろん、飲み水が烏奪われる静岡県大井川下流域の皆さんも。
備忘録メモ
国交省交通政策審議会 鉄道部会・中央新幹線小委員会が2011年5月12日にリニア中央新幹線計画は妥当であるとの答申(家田委員長) さらに家田氏は保安院は浜岡原発の停止期間は2年程度としているため、現時点ではリニア計画には影響しないと発言。
同様に葛西JR東海会長は盛んに原発再稼働を主張。
自治体にも公開されないJR東海の調査。
2011年 上野原市秋山の棚の入沢やいくつかの沢での沢枯れ。戸別訪問で賠償額を決定。
(独法 鉄道建設・運輸施設整備支援機構が対応)
実験線残土捨て場は借金で住宅地計画、そして破綻、土地は県に売却。使用方法未定。
1日最大1736台のダンプが走る大鹿村。(環境影響評価)
ローカル線の無人化を進めるJR東海(飯田線ほか)
リニアが来れば町興しが出来ると期成同盟。リニアが来なければ町興しが出来ない?
メディアの自主規制(大広告主にたいする怯え?配慮? チラシ折り込みへの対応、JR東海に批判的な企画は出版社やメディに通らない)
人口減少社会においても乗客が1.5倍に増えるというJR東海試算の謎
アリバイ作りの地元説明会(JR東海は質問数を限定し、同じ解答を繰り返す)
あまりに不誠実なJR東海の対応(情報公開性の欠如)
地方公務員が用地買収や地元対応している現実
読み終わって再認識した。原発ムラ(マフィア)が存在するようにリニアムラ(マフィア)が存在する。安全神話が新聞や広告のプロパガンダで作り上げられた様にリニア中央新幹線も本当にリニアが必要な訳ではなく、リニア新幹線工事が欲しい一部のムラの人々により行われているのだろう。そこには、政治家、行政、学者らが蜘蛛の巣を張り巡らすように魑魅魍魎な世界が広がっているのだろう。フリージャーナリストや一部鉄道専門家が昔から指摘しているリニアの危険性(環境破壊、経済性、技術性)に対する回答はいまだJR東海からはない。
なぜ、リニア中央新幹線構想に大蔵省(現財務省)がゴーサインを出さなかったのか、国費導入が馬鹿査定と言われるのが分かっていたからだと想像するのである。官僚としてのプライドとして。
商品の説明
著者について
樫田秀樹(かしだ・ひでき)
1959年北海道生まれ。岩手大学卒業。コンピュータ関連企業勤務を経てフリーのジャーナリストに。NGOスタッフとしての活動や取材でアジア・アフリカ各地に赴く。著書に『9つの森の教え』(築地書館。ペンネーム峠隆一)、『「新しい貯金」で幸せになる方法』(築地書館)、『自爆営業』(ポプラ新書)、編著書に『世界から貧しさをなくす30 の方法』(合同出版)など。各誌で環境問題、社会問題、市民運動、人物ルポなどを手がける。自身のブログやホームページでも多くのテーマを執筆している。
登録情報
出版社 : 旬報社 (2014/9/17)
発売日 : 2014/9/17
言語 : 日本語
単行本(ソフトカバー) : 264ページ
ISBN-10 : 4845113643
ISBN-13 : 978-4845113644
寸法 : 18.8 x 12.8 x 2.5 cm
Amazon 売れ筋ランキング: - 838,922位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- 3,155位鉄道 (本)
- 108,403位社会・政治 (本)
- 134,801位ノンフィクション (本)
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
樫田 秀樹
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?