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私立探偵ホームズ、光の問題を考える2

$私立探偵ホームズ、光の問題を考える2
自信たっぷりに語るホームズ、ワトソンは呆れた顔で眺めていた。
「君の自信は、相変わらずだ。ノーベル賞を受賞した博士の説を素人の君が否定してしまうんだから」
「専門家だからこそ、常識に囚われることがあるんじゃないか。僕はもともとエーテルなるものは存在しないと睨んでいるんだ」
「え?でもエーテルが存在しなかったら、波である光はどうやって伝わるんだ」
「光の正体を粒だと考えればいい。光が粒子であれば自力で移動していけばいい。エーテルなど必要ない」
「だって光は波って証明されているんじゃない?」
「でも光は波のような性質をもった粒なのかもしれない」
「それ屁理屈に聞こえるよ」
「そう言うなら、エーテルの性質だってずいぶんヘンテコだよ。その中を運動する物質の長さを縮ませてしまうくせに、運動そのものを止めてしまう抵抗力は及ばさないなんて、エーテルは固いのか柔らかいのかどっちなんだい?まだ実際には見つかってない存在を仮定するくらいなら、実際に存在する光の未知の性質を想像するほうがまだマシさ」
「だがホームズ、もし仮に光の正体が波のような性質をもつ粒だとしても
だよ。東西方向と南北方向で光の速度が同じであることはどう説明するんだい」
「それなんだ。地球が太陽の周囲をまわっている以上、東西方向と南北方向で光の速度が同じになることはありえない。ならばアメリカ人たちの実験はどこかで間違っていたのだろうか。それとも・・・・」
ホームズは、言葉を発することをやめて、じっと考え込んだ。彼の青白い顔に緊張が走り、なにかに心奪われたような表情をみせている。これが彼の天分が至高の活動始めた証拠なのをワトソンは経験によって知っていた。
たっぷり考えてホームズは口を開く。
「ワトソン、見えてきた気がする、すべての謎を解く鍵は<時間>にあったんだ」
「さっぱりわからない、時間が鍵とは?」

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