$風景をつくるごはん: 都市と農村の真に幸せな関係とは 単行本(ソフトカバー) 真田純子 (著)
$風景をつくるごはん: 都市と農村の真に幸せな関係とは
単行本(ソフトカバー)
真田純子 (著)
$解説
地方創生やB級グルメなど地方を盛り上げようとする取り組みが盛んだ。だがなぜ地方の人たち、とりわけ中山間地の人たちばかりがんばらなくてはならないのか? 都市と農村の関係から、農業生産のあり方や流通、食べ方の変化に目を向けたとき、そこには都市を優先し合理性を重視する社会のシステムがあることが見えてくる。農村風景の変容も、このシステムとふかく結び付いている。農村風景を入り口に、食と農業のあり方から、都市と農村の幸せな関係を構想する。
$読者レビューより引用・編集
多くの里山で過疎化が進み、山は鬱蒼として暗く、田畑は耕作放棄地になり、さまざまなものが失われつつある。
都市集中が進み地方が衰退する流れは海外でも同様ですが、欧州のいつくかの田舎は、目を見張るような風景が広がり、その地域ならではの豊かな食と居心地のよい宿があり、自然が豊かなのはなぜなのか。
本書は、50年、あるいは100年かかるかもしれませんが、日本の中山間地に別の未来があることを教えてくれる。
マクロな分析や専門的な考察が充実していますが、農村風景を「美しくない」と著者が思ったところから始まる序章が、さまざまな当たり前、生き残りをかけて頑張る中山間地や、便利な食を享受している都会について別の視点を示し、自分を起点に、違う未来があるのではという扉を開けてくれる。
欧州の魅力的な田舎は、たまたまの産物ではないことが、1章と2章で明かされます。農産物の生産だけでなく、農村の環境や風景について、1999年にEUで政策が打ち出され、2005年には財源が確保され、2007年から各国でさまざまな事業が進んでいます。とりわけ、風景に重点を置き、「社会・経済・環境の幸せな統合」と風景を定義したイタリアの取り組みは示唆に富んでいて、3章と4章でぐっと解像度があがる。
5章から日本の話が前景に出てきます。農業の近代化はなんだったのか。流通や消費がどう変わったのか。「外からのエネルギー」を使うようになった農業が、食はもちろん、環境や風景をどのように変えていったのかを振り返ります。道路と擁壁についての歴史が興味深く、1987年までは道路の土木指針に石積みがあったのが、1999年以降は想定されていません。欧州では、石積みが再評価されています。
9章と10章は未来の話なのですが、やわらかな語り口ながら、国内の表層的な動きへの問題意識が底流にあるように思います。たとえば、農業や林業の生産以外の価値、生物多様性、気候変動の抑制、土壌の機能、そして風景について、日本では「多面的機能」呼ばれますが、欧州では「公共財」と位置付けられていて、ルールや財源のあり方がまったく異なるという考察は考えさせられる。
社会システム変革を、身近なところからおだやかに進めていく。このアプローチが、成果が出ない表層的なルール形成や仲良しだけが集まりがちな共同体に対して、とても魅力的な提案になっていると思う。
商品の説明
著者について
真田 純子(さなだ・じゅんこ)
東京工業大学 環境・社会理工学院 教授。1974年広島県生まれ。東京工業大学在学中の1996年にヴルカヌスプログラム(日欧産業協力センター)にてイタリア留学(1年)。2005年東京工業大学博士課程修了、博士(工学)取得。徳島大学助教、東京工業大学准教授を経て、2023年3月より現職。石積み技術をもつ人・習いたい人・直してほしい田畑をもつ人のマッチングを目指して2013年に「石積み学校」を立ち上げ、2020年に一般社団法人化。同法人代表理事。専門は景観工学、緑地計画史。著書に『都市の緑はどうあるべきか』(技報堂出版 2007)、『誰でもできる石積み入門』(農文協 2018)がある。
登録情報
出版社 : 農山漁村文化協会 (2023/10/10)
発売日 : 2023/10/10
言語 : 日本語
単行本(ソフトカバー) : 288ページ
ISBN-10 : 4540231243
ISBN-13 : 978-4540231247
寸法 : 14.8 x 2 x 20 cm
著者について
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真田 純子
広島県生まれ。東京工業大学大学院博士課程修了。東京工業大学教授。博士(工学)。ベネチア建築大学客員研究員(2015)。2007年に徳島大学着任後、石積み修行を開始。2013年石積み学校設立。2020年一般社団法人化に伴い代表理事就任。主な著書に「都市の緑はどうあるべきか」(技報堂出版、2007)、「誰でも出来る石積み入門」(農文協、2018、土木学会出版文化賞)、「風景をつくるごはん」(農文協、2023)など。専門は緑地計画史、景観工学、農村計画、土木史、石積み。