$TRON純国産OS
$革新的だった国産OS「TRON」の普及を妨げた通産省とマスメディアの横槍。健全な業界発展を阻害したのは誰か?【連載】サム古川のインターネットの歴史教科書(4)
$TRONとは「The Realtime Operating system Nucleus」の略称で
今から約40年前の1983年に日本人「坂村健教授」によって開発された国産のOSです。
OSにはパソコンなどに使われる情報処理系のもとと組み込み式のものがあります。
組み込み式OSは自動車のカーナビ、情報処理以外のスマホの動作、人工衛星のネットワークなど一般家庭から宇宙で使用されるものまでありとあらゆるものに使われています。
TRONが大事にしているところはまさにRealtime(リアルタイム)ということです。
モノに組み込まれているOSは即時性が最も大事とされるのでそこにこだわっているOSです。
またスマホならばiOSやAndroidが有名でそれしかスマホで使われていないと思われている方もいらっしゃると思いますが、データを基地局とRealtimeにやり取りしているコンピューターのOSはTRONが使われています。
また皆さんの記憶に残っている人工衛生の「はやぶさ」を制御しているOSにもTRONが使われています。
まさに縁の下の力持ちと行ったところでしょうか。
$TRONとは、「The Real-time Operating system Nucleus」(リアルタイムオペレーティングシステム核)の頭字語である。組み込み向けのRTOSの仕様の策定をプロジェクトの中核としているが、本来は応用(アプリケーション)のユーザインタフェースのデザインやハードウェアの仕様策定など、様々なサブプロジェクトを含む。
TRONプロジェクトの中心人物である坂村健
は、TRONプロジェクトが開始した1984年頃より、リアルタイムカーネル(組み込み向け)のITRONと、より大きなシステム(パソコン向け)のBTRON、それらを統合するシステムであるMTRON、といったロードマップを示していたが、1987年に発表した論文『The Objectives of the TRON Project』において、HFDS(Highly Functionally Distributed System、超機能分散システム)と言う構想を発表。未来の地球人類社会では、日常生活のあらゆる部分(電球1個、壁パネル1枚)にまでマイコンが入り込み何らかの形で人間と関わりを持つようになると予想し、それらのコンピュータをそれぞれの機器別にバラバラに扱うのではなく、標準によってうまく連携させるのだという未来像が提示され、TRONはその実現に向け準備するプロジェクトだ、と規定された。すなわち、μITRON3.0仕様書の言葉を借りれば「コンピュータ組み込み機器をネットワーク接続し、それらに積極的に環境を演出させる」という「電脳強化環境(Computer Augumented Environment)」の実現こそがTRONプロジェクトの目標であると提示され、これを一般向けに解りやすく言い換えて「どこでもコンピュータ」とも称していた[4]。
1980年代にTRONプロジェクトの中核とされたサブプロジェクトのうち、組み込み向けオペレーティングシステム(OS)のITRON以外は2000年代を迎える前に頓挫したものの、2000年頃には身の回りのほとんどの電気/電子機器に組み込みシステムが応用されるような時代となった。TRONプロジェクトはこのような「ユビキタス社会」において、組み込みシステム用のリアルタイムカーネルのデファクト標準仕様としてのμITRONを中心として、「どこでもコンピュータ環境、ユビキタスネットワーク社会」https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h16/html/G1401000.html#:~:text=%E3%83%A6%E3%83%93%E3%82%AD%E3%82%BF%E3%82%B9%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E3%81%A8%E3%81%AF,%E3%81%AB%E3%81%99%E3%82%8B%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8B%E3%80%82
をゴールとして掲げた。例えば任天堂が2017年に発売したゲーム機「Nintendo Switch」のコントローラー「Joy-Con」にμITRON4.0が[注釈 3]、セイコーエプソンが2008年に発売したプリンター「カラリオ EP-901F」にeT-Kernel Multi-Core Editionが搭載されているなど、TRON系OSは2000年代以降も、主に炊飯器・洗濯機・カメラ・ゲーム機などと言った日本メーカーの家電製品に搭載されたマイコンを制御するための組み込み用OSとして、広く使われている
坂村は2015年、身の回りのあらゆるものがローカルのネットワークでつながる「ユビキタスコンピューティング」の次の段階として、身の回りのあらゆるものがクラウドコンピューティングを通じてつながるという「アグリゲート・コンピューティング」という構想を発表。TRONは2010年代以降のIoT時代においても、IoTを実現する様々なデバイスを制御するための組み込み用リアルタイムOSの一つとなるべく、クラウドソリューションのMicrosoft Azureを提供する日本マイクロソフト社とも連携しながら、開発が行われている。
TRONプロジェクトは、1990年代後半にインターネットを通じたフリーソフトウェア運動が盛んになる以前より、OSのソースコードや仕様書などを含めた全ての成果物を一般向けに無償で公開しており、その使用に際しては実施料を要求されず、実装・商品化は誰でも自由に行える。2010年代以降にはフリーソフトウェア運動に倣って「オープンソース」「オープンデータ」「オープンAPI」を標榜している。一方で、ユーザー側で実装したアプリケーションについては、クローズでもよいということを表明しており、これが「ノウハウを公開したくない」と言う組み込みメーカーの支持に繋がっている。TRONのライセンスであるT-Licenseは、フリーソフトウェア運動で主流のライセンスであるGPLやBSDライセンスなどと比べてかなり緩く設定されており、派生物においては全てをオープンにする義務が課されず、オープンにしてもしなくても自由で、また一部をオープンにして一部をクローズドにするといったことも可能である。かつてのTRON系OSはトロンフォーラムのみが配布元であり、再配布は原則として禁止されていたが、2011年策定のT-License2.0においては時代に合わせて自由度を高め、ソースの改変履歴をトレースするための「ディストリビューションucode」を付与することを条件として、トロンフォーラムが著作権を持つオリジナルのソースをユーザー側で再配布したり、オリジナルのソースに改変を加えたものを再配布したり、オリジナルのソースを第三者が改変して再配布したものに、さらに自分で改変を加えて再配布したりすることも可能となった。TRON系OSの仕様書やT-LicenseといったTRONプロジェクトのオリジナルの成果物の著作権者はトロンフォーラムあるいは坂村健となっている。
TRONプロジェクトは1984年の開始以来、日本の坂村健が中心となって推進しているが、この活動をサポートする組織としては、2019年現在、坂村が会長を務める「トロンフォーラム」が存在する。トロンフォーラムの会員は日本企業が多いが、幹事会員を務める日本マイクロソフト社を始めとして、外資や海外の企業も存在する。なお、1980年代には「OS」という分野においてTRONプロジェクトとマイクロソフト社の対立が報道されたが、坂村によると実際には「対立していない」とのことで、2003年にはTRONプロジェクトのOSであるT-Engineの上にマイクロソフトのOSであるWindows CEを移植したり、2014年にはIoT分野においてMicrosoft Azureを利用するために日本マイクロソフトとの提携を発表したりなどしている。
2017年には、IoT時代においてTRONのさらなる世界的普及を目指して、坂村健とトロンフォーラムはTRON系の組み込み向けリアルタイムOS「μT-Kernel 2.0」の著作権を米電気電子学会IEEEに譲渡。2018年9月11日、μT-Kernelベースの「IEEE 2050-2018」が、IEEE標準として正式に成立した。これによってTRON系OSが、IEEEによって標準化されるOSの国際標準規格の一つとなった。2019年にはTRONプロジェクトにおいて初めてGitHubが採用され、μT-Kernel 3.0の仕様書やソースコードなどが世界に公開された。2023年、仕様書やサンプルソースコードをオープンかつ自由に提供し、開発者や利用者のイノベーションを促進したことや、世界中で数十億台の組み込み機器に採用されていることを評価され、IEEEによってIEEEマイルストーンに認定された。