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動機付け面接②:子供との関わりとよく似ている


動機付けの前に「信頼関係」を作る

動機付け面接の第一段階:関わり


動機付け面接①で触れたように、動機付け面接を行う際には
「変化を起こすのは医療者ではなく、患者自身である。」という前提がある

患者自身が変化していけるようにする第一ステップを’関わり’と言います。

関わりとは

信頼し合い尊重し合える「援助関係を確立するプロセス」である

動機づけ面接 第三版 上

つまり、信頼関係を築くことです。
もっと、平たく言うと、「この人は私の話を聞いてくれる。この人だったら何でも打ち明けてもいいかも、もっと話してもいいかも、と思ってもらえるような関係」を築くことでしょうか。

’関わり’を阻害する因子

しっかりした’関わり’を作るには、まずは患者の話をよく聞くことが基本である。
ただ医師は相手の話を聞くというのがとても苦手で、よく以下のような反応をして、患者との関わりを阻害していしまうらしい

☆医師がよくやりがちな反応

  • 警告、脅かす、用心するように促す

  • 助言を与える、提案する、解決策を提示する

  • 論理的に説得する

  • 判断する、批判する、避難する、反対する

  • 同意する、承認する、褒める

  • レッテルを張る

  • 同情する、慰める、安心させる

  • 質問する、探りを入れる

専門家である医療者はどうしても、患者の話を判断しがち(批判や同意、硝酸、レッテルetc)であり、かつ、何か解決策を与えないといけないんじゃないかと思いがちなので、このような反応をしやすい
しかし、
話を聞くフェーズでこれらをやってしまうと、患者自身が自発的にしゃべることができなくなり、患者は’この人には話を聞いてもらえない’と感じてしまい、結果として信頼関係を築けなくなってしまう

例えば、糖尿病で肥満の患者に対して
「痩せないと透析になりますよ(脅し)」「痩せるために白米を玄米に変えてみましょうか(提案、解決策の提示)」「仕事が忙しいから痩せるのが難しいんですね(判断)」や、初対面で「食事はどうされてますか?、運動は?飲酒は?間食は?。。。etcと矢継ぎ早に質問する(探りを入れる)」等をしても上手くいかないことが多いのではないでしょうか

子育てでも同じような反応をしがち

最近、上記リンクの子育て本を読んだが、同じようなことが書いてあった。

最初は優しく注意しているつもりだったのに、
「いい加減にして!」「どうしてやらないの」
「何度言ったらわかるの!」「早くしなさい!」

子どもに怒っちゃダメ…と思っているのに、
ついつい声を荒げてしまい、あとから罪悪感を抱いてしまう。

かといって、新しいことに挑戦するのを嫌がるわが子に
「やりたくないなら、やらなくていいよ」と言ったり、
あいさつがなかなかできないわが子に
「おはようございます、でしょ!」と教えたりしても、
なんだか微妙な反応…

よかれと思って発した自分の声かけが、子どもに響いていない気がして、
どうしていいかわからなくなったことはありませんか?

こそだてしているとこのようなことはよくあると思います。
ついつい、命令や非難、助言、説得をしてしまいがちです。

子供が遊んでいる時に「そろそろ風呂にはいろうね」「そろそろおきがえしようね」と言っても大抵言うことを聞いてもらえずイライラしてしまうというのはよくあります。

では、どうすればよいのか?

OARSを上手く使う(特にAffirmationを意識する)

解決策の一つとして、OARSという技能が紹介されています。
「医師が良くやりがちな反応」を意識的に避けるのは難しいので、普段からOARSを用いて面接するようにすると、自然にやりがちな反応を避けた面接が可能になるだろう

OARSは以下の要素で構成される

  1. Open question 開かれた質問

  2. Affirmation   是認(認める)

  3. Reflection   聞き返し

  4. Summary   サマライズ

この中で、特にAffirmationが特に大事だと思ったので、紹介します

Affirmation 是認(認める)

是認とは、相手が人として持っている固有の価値を見つけ、認めることである。また、ポジティブな部分を強調することでもある。

注意点としては是認(認める)≠賞賛(褒める)ではないということだ

褒めるというのは、立場が上のものが下の者に対して賞賛を与えるというニュアンスがあり、
あくまでも医療者が上で、患者が下という立場を暗に強調してしまうので、動機付け面接には悪影響を与える

是認(認める)はあくまでも事実を事実として認めることであり、評価することではないというのがポイントです。

例えば、子育てで言うと
「(あなたは)今日は早くお風呂に入れて偉いね」というと賞賛ですが
「今日は早くお風呂に入れたんだね」というと是認になる
ということでしょうか

また、患者がおかれた状況をポジティブにリフレームしてフィードバックするのも是認の一つです
例えば、
かなり頑張ったのにHbA1cが下がらなかった患者に対して
「結果は出なかったですが、よく●●や○○など努力を重ねて、続けることができましたね」
etc

また、本書には書いてありませんでしたが、相手が明らかに間違っていることを言ったとしても、まず相手の言っていることを事実として認めることも経験上は有用だと思います

例えば
患者(肥満)「なんで体重が減らないのか分からないんです。食べている量はふつうの人と比べて多いわけじゃないんですよ」
医師(んなわけねーだろと思いながら)「そうなんですね、食べる量が多くないのに、体重が減らないんですね。」
という要領である。(Reflectionの手法でもありますが)

上記の子育て本には、以下ようなことも是認(認める)として取り上げられていました。

例えば
親は早く風呂に入ってほしいが、積み木遊びに夢中な子供に対して、
「積み木遊びが楽しいんだね。」
「積み木をこうやって工夫して積むのを練習しているんだね」etc
と声をかけて、子供と一緒に遊ぶのがよいのだと

つまり
子供がやっていることをまず認めて、子供と世界観を共有するところから始める。そうすることで、初めて親の言うことを聞いてくれるスタート地点に立てるというのです。

Affirmation(是認)が前提、その上でOARSを用いる

ここまで書いてみると、個人的には
相手の話をうまく引き出すOARSを上手く用いるには、まず、面接者がAffirmativeになるというのが最も重要で、それがすべての前提になっているのではないかと思いました。

子育てでも、診察中でも、夫婦での会話でもなんでも、Affirmativeになるというのはとても難しいことです
Affirmativeになるということは「そうじゃないだろ」という感情を抑えることであり、それはとてもストレスだからです。

でも、最初からAffirmativeに対応した方が上手くいくことが多いということですね

まとめ

動機付け面接のファーストステップは関わり
関わりとは、なんでも打ち明けられるような関係になること
医師は「関わりを阻害する因子」をやりがちなので、会話する時に意識的に是認するように心がける
是認した上でOARSのスキルを使いこなす

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