
Vaccine_新型コロナとインフルエンザワクチン、同時接種しても副作用は変わらない?
Walter EB, Schlaudecker EP, Talaat KR, Rountree W, Broder KR, Duffy J, et al. Safety of Simultaneous vs Sequential mRNA COVID-19 and Inactivated Influenza Vaccines: A Randomized Clinical Trial. JAMA Network Open. 2024 Nov;7(11):e2443166.
背景
本研究の計画段階では、メッセンジャーRNA(mRNA)COVID-19ワクチンと不活化インフルエンザワクチンとの同時投与の安全性を説明するデータは限られてた。
本研究はmRNA COVID-19ワクチンと不活化インフルエンザワクチンの同時接種と時差接種における反応原性、安全性、短期的な健康関連QOL(HRQOL)を比較し、現在の安全性に対する追加のエビデンスを提供するために実施された。
研究デザイン
方法:ランダム化プラセボ対照臨床試験
期間:2021年10月8日〜2023年6月14日
対象:インフルエンザおよびmRNA COVID-19ワクチン接種希望者
除外:5歳未満、妊娠または妊娠可能性のある者、いずれかのワクチンに禁忌のある者、免疫抑制患者
場所:米国の3つの臨床サイト
接種方法:
同時接種群:mRNA COVID-19ワクチンと不活化インフルエンザワクチンを両腕に同時接種
時差接種群:初回にmRNA COVID-19ワクチンとプラセボを接種、1〜2週間後にインフルエンザワクチン接種
主な評価項目
主評価項目:
発熱、寒気、筋肉痛、関節痛の中等度以上の反応割合
非劣性マージン10%での評価を行った(=同時接種群の反応が時差接種群より強くないことを確認)
副次評価項目:
接種後7日間の反応性イベントおよび副反応の割合
EQ-5D-5LインデックスによるHRQOL評価
121日間の重篤な副反応(SAE)および特記すべき有害事象(AESI)※
※特記すべき有害事象:COVID-19、自己炎症性症候群、ギラン・バレー症候群、アレルギー型反応(アナフィラキシー、じんましん、および/またはワクチン接種後7日以内に発生した顔面および四肢の腫脹)、心筋炎および/または心膜炎
結果
患者の特徴は表を参照

主評価項目(発熱、寒気、筋肉痛、関節痛の中等度以上の反応)
同時接種群(25.6%)と時差接種群(31.3%)の間に有意差なし(非劣性を確認)(差-5.6%, 95%CI-15.2~4.0%)
局所および全身反応:
局所反応(接種部位の痛み、腫れ)と全身反応(発熱、筋肉痛)は主に軽度〜中等度で短期間
同時接種群の反応期間は平均2.4日
副反応
7日間の副反応発生率:同時接種群12.4%、時差接種群9.6%(差2.8%; 95% CI, −3.9 to 9.5%)で有意差なし
121日間の重篤な副反応(SAE):両群1件ずつ(0.6% vs 0.6%;差-0.01%, 95%CI -1.66~1.64%)(いずれも接種との関連なし、有意差なし)
121日間の特記すべき有害事象(AESI):**同時接種群11.2%、時差接種群5.4%(差5.8%, 95%CI, -0.1~11.7%)で有意差なし。**主に軽度〜中等度のCOVID-19症状
健康関連の生活の質(HRQOL)
EQ-5D-5Lスコアは接種後2日目に一時的に低下するものの、3〜4日で回復
考察
同時接種と時差接種の間で、反応原性、安全性、HRQOLに顕著な差は認められなかった
同時接種は、ワクチン接種率向上のための有効な選択肢となる可能性がある
限界と今後の課題
計画したサンプルサイズに達しておらず、稀少な有害事象の評価には限界がある
妊婦や65歳以上の高齢者の参加が限定的であり、これらの集団への一般化にはさらなる研究が必要
主にbivalent BNT162b2(コミナティ)を使用しており、他のCOVID-19ワクチンへの適用には慎重な検討が必要
結論
同時接種は時差接種と同等の反応原性と安全性を示した。インフルエンザおよびCOVID-19の流行期における効果的な接種戦略となり得る
読後感想
看護師や患者さんで「コロナとインフル、一緒に接種すると副作用がしんどいから別々に打つわ」という人が結構多い。本当か?と思いながら、その場しのぎで「副作用がかぶるとしんどいかもしれませんから、一緒に打たない人もいますよ」と説明していたので、渡りに船の論文だった。
本文中のQOLの推移のグラフでは、QOLの低下に関与していたのは「副作用を起こしたかどうか」であり、同時接種か時差接種かは関係なかった
著作権に引っかかるかもしれないので、気になる人は論文中の(図3)を参照してほしい。https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2825813
では副作用の差がどうかだが、時差接種・同時接種間に差はなかった(一般的な副作用の発生率は25% vs 31%、重篤な副作用は1%以下)
「注射を1日に2回も打つのが心理的にイヤ」「看護師の管理上、別々にしたほうが医療安全上のリスクを減らせる」という条件がないかぎり、コロナとインフルいっぺんに打っても良さそう。強制はしないが。