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令和版日本沈没に見る、リアルとリアリティってなんだろうね?
皆さんは「日本沈没2020」「日本沈没-希望のひと-」という作品をご存知でしょうか。
双方共に、小松左京氏の名作小説「日本沈没」を令和のこの世に相応しい形でリブートをした作品なわけですが、残念ながら評価はあまり芳しくありませんでした。(ちなみにこれで3作連続でコケてるんですがどういうことですか?)
ディザスターパニックものが好物な筆者も当然のことながら視聴し、喜怒怒怒怒怒哀楽したわけです。
ところで、日本沈没は昭和、平成、令和とそれぞれ制作され、当時の世情を表す作品として扱われてきました。これは2020や希望のひとも同様で、その時々のホットな話題が組み込まれています。
しかしながら、各レビューサイトの感想を見ると、リアリティがないや現実味がないなどの意見が散見されるわけです。というか筆者もそう思ってました。
その一方で、2020の監督である湯浅政明氏は、作品の内容についてリアルなものとして描いたと度々語っています。
この両者の意見、主張は一見すると食い違うものです。ですが、本当にそうなんでしょうか?今回のnoteはそこを掘り下げるものです。ちなみに以下ネタバレありです。
1.日本沈没2020について
公式自らがアニメ特有のファンタジー性を混ぜたと称する本作。実際に観ると、確かに現実的でない描写が散見されます。
例えば、2話にて主人公の父親が不発弾を掘り当て爆死するシーンですが、これは普通に生きていればまずお目にかかれない死因なわけです。つまり、リアリティはありません。
一方で、可能性がないかといえば、そうでもありません。現在でも度々不発弾は発見されており、撤去に自己負担がかかるため、放置される可能性もあるわけです。なので、これはリアルで起きかねない話です。
「日本沈没2020」ではこのように、リアリティはないがリアルで起きかねない話が連続します。また、2020でのリアルはかなりピーキーなものであり、先述のようにファンタジー性と混ぜられているものが大半を占めています。
例えば、4-6話に登場するコミュニティ「シャンシティ」ですが、これはファンタジー性が極めて強いものの、しかし「同じ境遇の者同士が集合体を形成する」というのはリアルでもある話です。
2.日本沈没-希望のひと-について
こちらは実写のドラマ作品であり、ファンタジー性はあまりありません。しかし、作中で登場する会議組織などは現実から大きくかけ離れているように見えます。
メインの組織となる「日本未来推進会議」は基本的に演技が仰々しいものとなっており、いささか現実味、つまりリアリティを欠いているように見えます。
一方、その会議内容については現実世界でも度々検討されているものが多く取り入れられており、リアルと言えます。
以上のように、2作品を見てきましたが、要するに個人的に言いたいのは、リアリティとリアルは似て非なるものということです。
世間一般的なリアリティとは、つまるところ「それっぽさ」や「可能性の高さ」にあります。現代日本を舞台にした作品なら、普通に生きてきて遭遇する出来事か否かというのが大きなポイントとなります。
これに対し、リアルとはそのままの意味で「現実でわずかでも起こるもの」です。可能性は低いながらも、現実世界で起きうるものはリアルなものと言えるでしょう。
このように両者は異なるものですが、実際には混同されることも多いのが現状と言えます。作品の感想を書く際には、このような点を押さえてみてはどうでしょうか。