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「今年はおいしいものを食べに行こう」

突然、夫がいいこと思いついた風の明るい顔をして、そんなことを言い出した。いやいや、数日前の正月三が日からみんなでカニやらすき焼きやらおいしいものをいっぱい食べたやん。なんなら、普段の私のご飯もおいしいやん。(ね?)

「ちゃうねん、二人でおいしいもの食べに行くの」


そういえば、昨年は夫の仕事が忙しかったせいか、恒例の結婚記念日の食事会をしていなかった。結婚して20年も過ぎれば恒例行事もなくなるのかと思っていたが、この人はこう見えて(どう見える?)ロマンチストだった。

私たちは結婚してから毎年、結婚記念日のある月に二人でちょっとだけいいものを食べに行くことにしていた。なんとなくそれだけは毎年必ずやろうと決めていたので、息子が生まれた年でも仲の良い親戚に乳飲み子を預かってもらって続けていた。
コロナのせいで一年ほど飛んでしまっていたが、それでも毎年「今年はどこ行こうか?」と二人でレストランを検索して出かけた。どこに行くのかあれこれ考える時間も楽しかった。


妙に明るい顔で食事に誘われて、これまでのことを思い出した。ロマンチストの夫だけでなく、私もとても大切にしていた時間だったのだ。子育てや介護に追われて、なんだかついついなおざりにしてしまっていたが、二人でいられる時間があとどのくらいかわからないから、毎年の恒例行事を大切にしていこうと新年の抱負としてそんなことを強く思った。
そんなことを考えていると、しみじみ結婚してよかったなぁと思う。新婚の頃のラブラブした感じではないが、お互いに好き勝手なことをダラダラ話し続けて、外では話せないような際どい話をして、思いっきり笑って、時に個々の時間を楽しんで、また一緒に過ごして、そんななんとも言えないふんわりした空気が漂っている。なるほど、これをしあわせというのか。


さてさて、今年の記念日はどこへでかけよう?
ずいぶん前に行ったあの公園の中にたたずむ素敵なレストランへ行こうか?


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