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ひび、しあわせについて

わたしの大切な友達が、彼女の好きな人とホテルに行った。わたしは4月から、その友達の相談に乗り続けて、何時間の電話も付き合って、応援し続けていた。彼女のピュアな恋愛話は、生々しい猥談に変わって、かなしい気持ちになった。

人間について、感情について、恋愛について、丁寧に丁寧に2人の考えを共有し、学び合ってきた。彼女の好きな人への気持ちを、最初から最新まで、見てきた。どういうふうに幸せになるか、2人で考えた。彼女はとても賢く、まっすぐ努力できる子だった。中学1年生のころから、地道に勉強をし続けて、現役で東大に合格した。その姿を、わたしは割と近くから見てきた。仕事が大好きでアルバイトを何個も掛け持ちし、友達を大切にする、生命力溢れる、わたしとは正反対の、きらきらとした子。

彼女が、そんな馬鹿なことをするとは、思っていなかった。夜の感想をLINEで嬉しそうに綴ってきた彼女を、素直に軽蔑した。彼女がピュアに追い求めてきた幸せな恋愛が、こんな形で終わるとは、思ってなかった。びっくりした。大学生らしすぎて、吐き気がした。あーあ、みんなそうなんだね、みんなそうやって、大人ぶって、大人になっていくんだね。そうやって、欲に流されて今まで自分が大切に構築してきた感情を、思い出を、壊していくんだね。

彼女の好きにすればいいと思う。そもそも、わたしが彼女の恋に対して、というか、彼女自身に対して、とやかく言う立場にはない。さらに片想いを募らせたとしても、セフレになったとしても、恋人になったとしても、結局は彼女が幸せならいい。いつか彼女の輝きが、消えなければいい。


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わたしの大好きなYouTuber、しがない数学徒が、5月から消息不明になっている。彼は度々姿を消しては、戻ってくるので、またふと動画をあげるんじゃないかと期待してしまう。


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わたしの恋人が、学校の帰り道、偶然会った女友達と、偶然やっていたらしい夏祭りに行った。LINEで、楽しそうな写真と可愛い女友達が写ってる動画を送られてきた。彼としては、全くやましいこともないから隠さなかった、単純に友達と遊んで楽しかったから共有したかった、らしい。わたしたちは、異性の友達がお互い少ないので、1年付き合っているけど、こんなことになるのはこれが初めてだった。擦り合わせの電話をした。わたしは、怒らなかったし、自分の感情を、なるべく淡々と話した。彼は、わたしの話を聞いて、泣いていた。好きな人を悲しくさせて、悲しい、申し訳ない、会いたい、寂しい、と静かに呟く彼が、かわいそうだった。わたしたちが一緒に夏祭りに行けなかったのは、わたしが遠く離れたアメリカで夏を過ごしていたから。こんなに2人が寂しくなるのは、もう4ヶ月、会っていないから。きっと。

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こちらに来てから、日本の良さを噛み締めている。わたしがいま住んでいるカリフォルニア州は、ありえないほどの車社会で、バスは1時間に1本、遅延は当たり前、駅も街に一つだけ、こちらも1時間に1本くらい。あまりにも土地が広すぎて、どこに行くにも時間がかかる。ちなみに、わたしはバス通学で、乗り換えもあるので、毎朝5時半に起きて、6時15分に家を出る。6時半の始発バスに乗って、8時前に学校に着く。9時からの授業だが、こうでもしないと遅刻する。それに比べて、日本はすごい。狭いからか、街がぎゅっとしていて、基本どこに行ってもある程度の文明がある。駅がたくさんあるし、新幹線と電車を使えばどこへだって行ける。いたるところに自動販売機、コンビニ、公衆トイレがあり、絶望することが少ない。携帯の充電が切れそうでも、コンビニに行くとチャージスポットがあるのが、一番すごい。

日本にいると、海外はすごい、日本は遅れている、と、不安になる。確かに、日本は政治、経済、テクノロジー、教育、マクロな視点で見ると、ほぼ終わっている。けど、人々の日常生活を見ると、割と物質的には満足しているし、便利な暮らしをしている人が多いと思う。

日本って便利でいいな、と思う反面、便利な暮らしに慣れてしまって、思考停止している人も、その分多い気がする。漠然とした不安を抱えているけれど、何もできない人、何もする気が起きない人、何かを、誰かを消費して、心を満たそうとしている人、そんな人が多い気がする。それがどうというわけではないけれど、ぼんやり悲しくなる人が、増えなければいいなと思う。し、そんな人こそ、違う世界を見てみてもいいんじゃないかと思う。

上に書いた「人」には、わたしも含まれている。けれど、こちらに来てから、留学生という立場のわたしは、物質的に満足できなすぎて、日本で便利な生活を享受できることが、いかに幸せか、再確認した。海外行ったら価値観変わるよ!とよく耳にするけど、その通り、生活が違いすぎて、幸せそのものが違いすぎて、価値観を変えざるを得ないなーと、思った。こちらには、便利さの代わりに、ゆっくり流れる時間がある。ひとりの時間の代わりに、知らない人とも笑顔で挨拶を交わす温かみがある。それが、ある人にとっては幸せであり、ある人にとっては不幸である。幸せってなんだろう、と、思考できるようになったことは、留学してよかったことのひとつだ。

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最近は、かなしいこと、つらいことが多い日々でした。その分、考えて、祈ることが多い日々でした。

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