「アファーマティヴ・アクション」がなぜ必要か
2023年6月29日、米国連邦裁判所は、
「ハーヴァード大学が、”アファーマティヴ・アクション”制度を採用することは、憲法修正第14条の「法の下の平等」に違反する」
と判断した。
1978年以降、多様性を高める措置として維持されてきた、「アファーマティヴ・アクション:積極的差別是正措置」が覆された。
今回の判決に対し、バイデン大統領は、
「アメリカには今もまだ差別が存在します!」
と述べ、強く反対する意思を表明した。
そして保守派6人、リベラル派3人という、連邦最高裁の判事の構成に疑問を投じた。
リベラル派で、黒人女性初の連邦最高裁判事になった、ケタンジ・ブラウン・ジャクソンは、「真の悲劇」だと述べた。
これに対し、ドナルド・トランプは「素晴らしい日だ」と喜びの言葉を述べた。
アジア人の主張
今回の訴訟は、アジア系アメリカ人の学生団体「公平な入学者選抜を求める学生たち」によるものだ。
団体は「アジア系が差別され、合格者が抑えられている」として、ハーヴァード大学と、ノースキャロライナ大学を訴えた。
彼らの主張はこうだ。
大学側の不当な「人種バランス調整」により、黒人やヒスパニック系の合格率が高まる分、アジア系の合格率が低くなっている。
これは、アジア系への差別だ!
人種を考慮する入学選考は、人種、スキンカラー、国籍による差別を禁じた公民権法(1964年制定)に違反する!
要するに、アファーマティヴ・アクションは、白人や平均的に学力の高いアジア系に対して不利に働いているということだ。
アジア人に対する差別?
あるだろう。
アジア人、アジア人のミックスの子供は、学校で虐められるなど、なんらかの差別を受けている。
けれども、米国における人種格差、人種差別について、黒人と黒人以外の人種を比較することはできない。
アジア人が、アジア人に対する差別を訴える権利はもちろんある。
けれども、アジア人が黒人に対する優遇措置を訴える?
アジア人も大変な努力をして、今のポジションを得たと思う。
けれども、黒人が同じポジションを得るためには、その何倍もの努力が必要だ。
黒人差別は、アジア人が米国に移民する以前からあり、400年以上続く人種差別の結果が、現代の人種格差だ。
そしてその格差は、アジア人のそれとは比較にならない。
町を歩けば、企業内の人種構成を見れば、一目瞭然だ。
黒人より先に、アジア人は白人社会に受け入れられた。
それは実力と努力だけではなく、私たちが黒人じゃなかったからだ。
保守派、白人の主張
「ブラックアメリカ、ホワイトアメリカではなく、我々は個人として話し合わなければならない。融合だ!」
黒人に対する賠償や、差別是正の取り組みに対して、保守派の白人が必ず言うことだ。
「なんで私が過去の過ちに対して賠償し、君たち黒人が、すべての利益を獲得できるんだ!?」
「1978年にプログラムがスタートして、2003年にアップデートされた。
今は2023年だぞ!
俺たちはいつまで補償し続けなければならないんだ!」
答えは簡単だ。
これは個人ではなく、人種の問題だ。
いつまで続く?
賠償プログラムが実際に機能し、アメリカの組織的人種差別が改善され、人種格差が是正されるまでだ。
組織的人種差別は、あらゆる場面で存在する。
調査によると、連邦政府の公金5.6兆ドルのうち、黒人のために費やされたのは、その中の1.67%だ。
ブラックシティとして知られているアトランタ市に対し、ジョージア州が与えた予算は、全体の0.0012%だ。
この比率を変えた黒人のジャクソン市長は、2期で退任させられた。
この国の99%のプライヴェート・エクイティ(未公開株)を支配しているのは白人男性だ。
白人には、両親から譲り受ける資産や不動産がある。
一方、奴隷時代はもちろん、その後も続く人種差別は、黒人が資産を築くことを妨害した。
レッドライニング(黒人居住地域を融資リスクが高いとして赤線で囲み、融資対象から除外する)、略奪的融資(低所得層に対し、返済限度を無視した過大な融資を行い、所得や住居を奪う行為)がそのひとつだ。
白人オーナーの家の価値は高く、黒人の場合は低く設定されることが報告されたのは2022年だ。
銀行からローンが下りない、もしくは、高額な利息を要求される黒人が、不動産を所有したり、資産を増やすためにビジネスを始めることは、簡単なことではない。
黒人の不動産所有率は、未だ50%を超えたことがない。
彼ら白人が受け継ぐのは資産だけではない。
黒人がより良い仕事を得るためには、その職に関する能力、知識、大学卒業資格が要求される。
これに対し、経験、知識、学歴がなくても、白人の子供たちは親の力で仕事を得ることが可能だ。
白人ニュースキャスターは、スポーツの経験、知識がなくとも、スポーツニュースのキャスターのポジションを得る。
白人エージェントの力だ。
ハーヴァード大学が、人種を選考要素に加えているのは、多様性を実現する教育的使命の一環だ。
保守派の白人や、アジア人は、彼らにとってネガティヴな要素にフォーカスしているけれど、白人生徒の43%は、入学時に親のレガシー(寄付、もしくは両親や祖父母が卒業生)からポイントを獲得していることを忘れてはならない。
これらレガシーがなければ、彼らの75%は入学していない計算だ。
ハーヴァード、イエール、テキサス大学、アメリカの多くの大学が、これらレガシーをポイントに加算している。
同様のポイントを得られる黒人が、どれほどいるだろう?
過去に、どれだけの黒人が、これらの大学へ行く経済的余裕があっただろう?
現代の白人は、ジム・クロウ時代から続くレガシーを、今も受け続けている。
もしもルールが明確で、それが公開され、これら不平等が是正されれば、スポーツ、音楽、ジャーナリズム、あらゆる分野で黒人が勝利するだろうと言われている。
黒人に対する賠償や、差別是正への取り組みについて白人が語るとき、彼らのレガシーについて、決して触れない理由だ。
アファーマティヴ・アクションがなぜ必要か
白人はレガシーにより、大学へ行き、仕事のポジションを得る。
多くの場合、同じポジションの黒人以上の給与を受け取っている。
白人所有の不動産、ビジネスのヴァリューは高く、黒人のそれらは低く設定される。
白人が資産を増やす一方で、黒人が資産を築き、維持することは、とても難しいことなのだ。
高校中退の白人家庭は、大学卒業の黒人家庭の3倍の資産を保有する。
この格差は、組織的人種差別の結果だ。
バイデン大統領が言ったように、アメリカの人種差別は今も続いている。
人種格差は明らかであるにも関わらず、ブラックアメリカ、ホワイトアメリカではなく、個人として話し合う?
ホワイトアメリカを継続したい人がいるこの国で、どのように、過去の過ちを是正する?
「アファーマティヴ・アクション(差別是正措置)」が必要な理由だ。
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