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冬の怪

皆様こんにちは!有限会社美礼です。
いつもありがとうございます。

年の瀬になりましたが、どうにも寒くなりきらないですね。限度を超えては困りますが、やはり夏は暑く、冬は寒くあって欲しいものです。

そこで突然ですが、私が小学生だった頃の体験談をお聞きください。

小学校中学年の冬のこと。
私は母と弟と一緒に、K市のとあるお寺で催されていた骨董市兼フリーマーケットへ遊びにきていました。
何か面白いものはないかと、お小遣い片手にお店を見て回っていた時のことです。とあるお店のぬいぐるみが目に留まりました。

それは黒猫のぬいぐるみでした。

少し前、私たち家族は大好きな家猫を亡くしたばかりでした。
ジジという名の黒猫でした。譲渡会で譲り受けた、納豆が好きな賢い猫です。

黒猫のぬいぐるみには、車の窓ガラスの内側にくっつけられるように吸盤がついていました。そして、今思うとなかなか異様なのですが、黒猫は白い三角巾を頭につけているのです。給食当番がかぶるあれではありません、亡くなった人がつける…あの三角巾です。

更に、車の外から見た時にメッセージが見えるようプレートを持っているのですが、そこにはこう書かれているのです。

『ペットの霊が乗っています』 と…


ジジ?

なかなか縁起の悪い、一種のジョーク商品でしょう。
しかしそれを見た私は、もう大興奮。

ジジだ!と思ったのです。
ジジの霊を連れて帰れる!と…すぐにお会計を済ませると、喜び勇んで母にそれを見せに戻りました。

母は見るなり怪訝そうな顔をしましたが…ジジを亡くして落ち込み気味だった私を気遣ってか、母はそれ以上何も言いませんでした。

その後も境内を一通り見て回り、出店の食べ物でお腹も膨れた頃。明日は学校だし、そろそろ帰ろうかということになりました。

私は早くぬいぐるみを車の窓にくっつけたくて、駐車場へ小走りで向かいました。が、途中で母の気配がないことに気づいて振り返りました。

母は立ち止まって、カバンに手を突っ込んで何かを探しているようでした。
しばらくしてガサゴソと探って、首を捻り、またガサゴソ…しばらくそうやった後、まさかの一言を呟いたのです。

『車の鍵がない』

そこからはもう大変です。
集合場所を決め、3人別行動をとって方々を探し回りました。
車へ行ってもない。這うように地べたを見て回り、お店の人たちに声を掛けて、事務局にも問い合わせました。それでも一向に鍵は見つかりません。

1時間半ほど探し回ったでしょうか。再び集合場所へ集まった私たちは、もう疲労困憊。弟はグズリだし、私もヒステリー気味になり、もう爆発寸前…しかし先に爆発したのは、母の方でした。

「それを返してきなさい!」

鬼の形相の母は、私が抱えていたぬいぐるみを指してこう言い放ちました。
私は一瞬躊躇ったのですが…母のあまりの形相に、大人しくそれを売っていた場所へ返しに行きました。

戻ってきた私の手からぬいぐるみが消えたのを見て、母の顔はようやく元通りに。そうしている内、辺りはすっかり薄暗くなりました。気を取り直して、早く鍵を探さなければ…一息吐くのに、ふと足元に目をやった、その時です。

あったのです、車の鍵が。私たちの足元、何度も何度も見た地べたに。
ついさっきだって、視界に入っていた場所に。

かくして私たちは、無事に帰路に着くことができたのです。


あのぬいぐるみは、一体何だったのでしょう。鍵とぬいぐるみは何の関係もなかったかもしれません。でも…ジジだと思った黒猫のぬいぐるみ。
ジジなんかではなく、何かよくないものが宿っていたのではと、今でもたまに考えます。そしてそれが車に乗らないように、また別の何かが守ってくれたのかもしれません。お寺の仏様だったのか…もしかしたら、それこそジジだったのかも。

それよりも気になるのは、もしあのぬいぐるみが、車に乗ってしまっていたら?
私たち家族は無事に家へ帰れていたのでしょうか。


いかがでしたでしょうか。
寒くなるほどではありませんが、私が実際に体験したちょっと怖いお話でした。皆様も、お買い物の際にはどうぞ気をつけて。


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