2022年11月 三菱一号館美術館『ヴァロットン―黒と白 - 丸の内』
「19世紀末のパリで活躍したナビ派の画家フェリックス・ヴァロットン(1865-1925)は、黒一色の革新的な木版画で名声を得ました。独特の視点と多様な表現、そして卓越したデザインセンスをもつヴァロットン作品は、まるで解けない謎のように今でも私たちを魅了してやみません。中でも真骨頂ともいえるのが、木版画です。
三菱一号館美術館は、世界有数のヴァロットン版画コレクションを誇ります。希少性の高い連作〈アンティミテ〉〈楽器〉〈万国博覧会〉〈これが戦争だ!〉の揃いのほか、約180点のコレクションを一挙初公開します。黒と白のみで作り出された世界に焦点をあて、未だ捉えきることができないヴァロットンの魅力に迫ります。また、当館と2009年より姉妹館提携を行うトゥールーズ=ロートレック美術館開館100周年を記念した、ロートレックとの特別関連展示も併せてお楽しみください。」(三菱一号館美術館HPより転載)
上記のホームページを眺めていて、なんとなく作品が気になったので訪れました。
ヴァロットンの名前自体そもそも知らなかったのですが、作品は見たことがあるものがいくつかあったので、あまり意識してみていなかったのだと思います。
展覧会の構成は、ほとんどが版画の作品で、時代もかなり限定的なようなきがしました(もちろんそれ以外も多少あります)。それだけに「黒と白」というタイトルどおり、版画を見たい方は、十分に楽しむことができる構成なのではないかと思います。
訪れる前から特に気になっていた「Le Bain」(お風呂、浴槽というような意味)という作品があったのですが、全体をみても一番気に入った作品でした。
顔の表情が描かれていなかったりや湯舟の輪郭などもすべてを描いている訳ではなく、情報が省略されていることが多く、デザイン性が高いように思えました。
その他の版画も、人物と家具などの構図が特徴的であったり、タイルなどの背景に模様を描いてあったり、画面全体に対して黒の比率がうまく配分されているものがあったり、シンプルだけど、とても練られているようなものが多く、見ていて欲しくなりました。
版画のテーマには、事故など不穏なものや、群衆を皮肉に描いたものも多かったのですが、グロテスクさなどは感じず、どこかコミカルに感じることが多かったです。