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NFTと地方創生

少子高齢化・過疎化に苦しむ地方

令和3年版国土交通白書によると、2015年から2050年にかけて全市町村の約3割の人口は半数未満になる見通しだ。
かつては伝統的な産業・文化で支えられた土地も、気づけば限界集落と呼ばれるリスクをはらんでいる。

地方が抱えている課題といえば、言わずもがな少子高齢化・過疎化である。
進行すれば、医療・福祉・買い物・教育等の生活サービスや公共交通は維持できなくなる。
同時に、人口不足で税収も減少し、更に高齢者の医療費が地方の財政を圧迫していく。行政サービスの水準を下げざるを得なくなるのも必然の流れだ。
街や村が消える、そんな悲観シナリオを打破するために、各地では若者の移住・定住促進や観光対策の必要性に迫られている。そこに重なったのが新型コロナで、まさに交通・観光業が大打撃を受けている。

「何とかして人を呼び込めないか」、そんな願いに力を与えるのがNFTの役割の一つであると私は考えている。

参考)国土交通白書 - 国土交通省 (mlit.go.jp)

NFT×ふるさと納税

ゴールデンウィークも終わろうとする5月7日、
北海道余市町はふるさと納税に対する返礼品としてNFTの提供を開始した。
特産品であるワインをモチーフにしたアート作品をPolygon上で提供するというものだ。

NFTを活用した地方創生事例は国内でもまだ少ない中、ふるさと納税の仕組みを活用して、NFTに対する消費者の経済面・心理面でのハードルを下げたことは興味深い。事実、事前予約開始後数分で54種類あったNFTの予約は半数が埋まり、人気のあるNFTにはすぐさまキャンセル待ちの列ができていった。

特産品であるワインのブランドイメージ、親しみやすいイラスト、ふるさと納税の範疇で手が届く価格設定も奏功した形だろう。
NFT×ふるさと納税の組み合わせは今後も積極的に試行されていくに違いない。

参考)北海道余市町とあるやうむ(北海道札幌市)およびトラストバンク、NFTアートのふるさと納税の返礼品を「ふるさとチョイス」にて5月7日に提供開始|株式会社あるやうむのプレスリリース (prtimes.jp)

NFT×コミュニティ(DAO)

もちろんNFTの役割はコンテンツの希少性担保だけではない。
Nounsなどに代表されるコミュニティ型のDAOでは、ユーザーはNFTを購入することでコミュニティの一員になり、そこでの会議に意見を反映させることができる。コミュニティ側も、NFT販売で得た資金/二次流通時のロイヤリティを元手にコミュニティ活性化施策を展開していくことが可能だ。

地方創生の文脈においてNFTは、
1)コミュニティの参加権としても機能し、
2)新たな収入源の確保に貢献できる
この2点においてこそ真価を発揮する余地がある。

国内においても、NFTを軸に据えたコミュニティ機能活用はすでに取り組まれている。新潟県長岡市の山古志地域におけるNishikigoiNFTはその好例だろう。特筆すべきはデジタルの世界だけでなく、実在の地域コミュニティの活性化に貢献している点だ。

「錦鯉」発祥の地である山古志地域は中越大震災の影響で人口が2,200人から800人へと減少し、高齢化率は55%を超えたという。
そんな中で彼らが目を付けたのは人口増加そのものではなく、デジタル関係人口の増加だ。
世界に通用する錦鯉をモチーフにしたデジタルアート型のNFTを販売することで、1万人のデジタル住民を獲得し、それを皮切りに国内外の人材交流の起点にする。
2021年から始まったこのプロジェクトではNFT購入者も順調に増え、コミュニケーションツールであるDiscord上では山古志活性化施策の進捗報告・提案が飛び交っており、今もなお賑わっている。

参考)Nishikigoi NFT (fleek.co)

総括

ハイプサイクル上は過度な期待・幻滅期に入ったとされるNFTであるが、
今後は投機対象から社会インフラとしてのNFTへと進化していく。
今回はNFTが支えるふるさと納税やデジタル住民コミュニティの例を挙げたが、Web3.0全体やメタバースに視野を広げると更に打ち手の選択肢も増えてくる。
地方が有する経済・文化的資源を将来に継承していくためにも、今後の動向には注視していきたい。

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