やり直し

「そういう事ね。」
私の中からは逃げ出せない私に気がついた。

不登校が始まったのは小学校高学年。
きっかけはなんでもよかった。
歩かない理由なんて山ほど作れる。

生理が始まった頃、本当に体調が悪くて休んでみた。
親はすんなり許してくれた。
だあれもいない家の中、いつもと違って見えた。
妙にドキドキしたのを覚えてる。
子犬のマリコも初めての散歩の時はこうだったのかな。
その時を境に学校を休みがちになった。

欠席理由?もちろん体調不良だよ。
初めは心配してくれた親も、だんだん諦めてきた。
シーンと静まった自分しかいない家の中が妙に嬉しかった。

今はさ、「無理に学校行かなくていい」って言われてるからラッキー!
えー?理由?
だから、何でもありなんだよ。
「友達ができない」とか「教室がうるさい」とか、ほんといくらでもつくれる。「誰も私のことをわかってくれない」って究極のこじつけだよね。
周りは「しばらく様子見ましょう」ってさ、わかってないね。

そんな感じで小学校、中学校ときたのね。
正直言って、こんなのがどこまでも続くなんて思ってないよ。
でもさ、こういう習慣って急には変えられないんだよね。
それに、私が今はクラスの底辺なんて耐えられない。
私、わりと勉強できたんだよね。

中学は義務教育っていうので、今までの感じを使えたんだけど、中3になって「高校どうする?」て学校呼ばれて流石にヤバイって思った。
親と担任に「どうしたい」とか聞かれて「どーでもいいでーす」なんて言えないし、そもそも様子見て何もしなかったのはそっちじゃない。
あんたたちはどうしたいのさ。高校って今から頑張ればいけるの?
初めて現実と向き合ってイライラした。
なんか凄く気持ち悪い。

高校は通信制にした。
もうこれしか選択肢ないんだなんて知らなかった。
ひよっとして私って追い込まれていたのかな。
それからは、高校から手にしたスマホで知らない人と繋がっていった。
会ったことなかったけど、どこか同じ悩みを持っていてみんな優しかった。分かってくれる人がいると思うと嬉しかった。
反対に現実の人たちは息苦しく冷たく思えた。

通信制は自由度が高い。
髪の色や服で人を決めつけない。
なのになのに、こんなに自由なのに、何でこんなに寂しいんだろ。
好きな時間に勉強して、好きな事をしているのに心の中は空っぽな感じがする。
「私は何がしたいんだっけ」

高校卒業の資格をとって、私は社会人になった。
バイト感覚だったと思う。
時間に来て、時間に帰る。言われた事をこなす。
学校みたいと思った。違うのは、普通を教えてくれないだけ。
自分感覚で生きてきた私は、社会の普通がわからない。
いいと思ったことで怒られた。理由があるんだろうけど、私にはわからない。だから繰り返す。
「もう嫌だ、誰かどうすればいいか教えてよ」
「私、困った顔してるよね?気がついてよ。人の気持ちになってよ」
ひとりでに涙が溢れてきた・・・私は仕事にも行かなくなっていった。

親?もう何も言わない。
もともと共働きだったし、何とか高校に行ってくれてホッとしたみたい。
基本、部屋から出ないしお互い距離感掴めていないみたいな感じ。

ネットの友達の方が近くにいる感覚がする。
友達がいないと不安になる。誰かと繋がっていたい。
みんな一緒だと安心する。
寝る所がなくても、お金がなくても。
誰かが考えた生き延び方で、今日一日の事を考える。
若いってだけでお金をくれる人もいる。
親みたいにうるさくない。
だから明日も明後日もここにいる。

だってもう帰れない…

気がついたらここにいた。
風が冷たい。綺麗なイルミネーション。
下にはアリみたいな人がいっぱいいる。
昨日までの私みたい。
ふと周りを見るとたくさん人がいた。
気が付かなかった。こんなにいたっけ? 何でみんな裸足?
1人が飛び降りたのを合図に次々と飛び降りていく。
下をのぞいても誰もいない。
どうゆうことなんだろう?
いきなり誰かに肩をつかまれた。
こんな人知らない。でも体が動かない。
「一緒に行こう。」少し微笑んでその人が言った。
え?何考えているの。1人で行けばいいじゃん。
「もう寂しくないよ。もう何も考えなくていいんだよ。楽にしてあげる」
そんな風に見えるの?
私はあなたと違う。みんなが悪いだけで、みんなが教えてくれないだけで、私のせいじゃないの。私は悪くなくて、周りが分かってくれないだけで。それなのに何も教えてもくれないんだよ。

私の体はゆっくり宙を舞って、夜の闇の中に溶け込んでいった。

「私死ぬの?いやだ!」「死にたくない!」
「いやだ!死にたくない、死にたくない」
「私、悪くないもん」
「こんなはずじゃなかったのに」
「いやだ、やり直したい。どこで間違えた?」


こんなはずじゃなかったのに。いくらでもやり直せたはずなのに。
ねえ、誰か何とかしてよ。
こんなのって、私何にも悪くないのに。
みんなよくやる事じゃん。
「いやだ、いやだよ」「だれか…何で私ばっかり」
涙が溢れて見えない。

そうか、、、私は私の中から出られないんだ。
やり直したい、、、やり直したい。




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