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ジオサイト巡り:大根島

先日、島根県と鳥取県に囲まれた中海に浮かぶ大根島へ行ってきました。
島根半島・宍道湖中海ジオパークに含まれるこの島には昔の火山島ゆえの独特な風景が広がっています。

大根島とは

大根島は約25~20万年前に活動した火山です。わかりやすく言うとホモ・サピエンスが出現し始めた時期くらいです。活動していた当時は海面が低かったため火山”島”ではありませんでした。
玄武岩質の溶岩を主に噴出し、島全体的に起伏がゆるやかな印象を受けます。

おそらく大根島と聞いて一番に思い浮かぶのは牡丹で有名な日本庭園「由志園」だと思うのですがこの牡丹栽培にも火山特有の地質が活かされてるんです。
ちなみに大根島へのアクセスは公共交通機関だと松江駅からバスが出ています。島内はレンタサイクルすると便利だと思います。

溶岩トンネル

そもそも溶岩トンネルとはなんぞや、と言うお話から始めます。前述した通り、大根島では粘り気が弱い玄武岩質の溶岩を噴出しました。イメージとしてはハワイの溶岩流を思い浮かべていただけると良いです。
溶岩流は空気に触れた表面から冷えて硬くなっていきますが、内部はまだ温度が高く、溶岩が流動性を保つためトンネルのような構造を形成します。噴火が終わり溶岩が抜けると空洞が完成します。

そんなこんなで大根島には二つの溶岩トンネルが形成されました。一つは諸事情から見学不可なのですが、もう一つ「竜渓洞」と呼ばれる方はツアーに申し込めば中に入ることができます。

大根島第二溶岩隧道「竜渓洞」入口

この中では独自の生態系が築かれており、運が良ければ洞窟性の目が退化したメクラチビゴミムシやメクラヨコエビを見ることができます。
今回は見ることができなかったのですが洞窟性の虫が他に見られたのでうれしかったです。

溶岩トンネル自体は地下なので温度がほぼ一定(15°C程度)を保っており夏は涼しく冬は暖かいのが特徴、のはずでした。なんと今夏の猛暑によってトンネル内の温度も上昇し、一時期は20度を超えてしまったそうです。
もしこれが毎年のようになるのであれば生態系に影響が出る可能性は高いですね…。

トンネル内火口

中でもすごいのが火口が残っている点。写真のランタンを中心として同心円上に溶岩の跡が残されています。活火山なら危険で火口にはなかなか近づけませんし死火山だと植生に包まれておそらく観察は難しいと思います。
こんなに綺麗な火口が観察できるのも大根島の溶岩トンネルの特徴です。何回来てもドキドキします。

弁天島(波入港親水公園)

弁天島

ここは公園となっており、遊具があったりするのですが水辺に玄武岩の柱状節理があり間近で観察することができます。

玄武岩

黒色、火山ガスが抜け出た穴が多数見られ玄武岩の観察にとても適しています。南側に行くと大山も見れて大変お得な気分になります。

さらにすぐ近くには淡水レンズという特殊な地形で見られる淡水池があります。

詳細は後述しますがここも面白いところです!

波入の湧水

汽水湖に浮かぶ島。川もないこの島の生活水はどこからきているのか。
その秘密を解き明かすのが波入の湧水です。

島内に湧く淡水

雨や雪が降ると多孔質な玄武岩に淡水が蓄えられていきます。そのため、大根島の地下ではレンズ状に淡水が溜まっているのです。

地上から染み込むのであれば海からも染み込むのでは?と思ったあなた!!
大正解です。海水も染み込みます。
しかし塩分濃度の違いで混ざらないため淡水層が形成されているのです。これも火山ならではの地質現象ですよね。


この特殊な地質は特産の牡丹栽培や雲州人参栽培にも利用されています。まさにジオから生活や文化が成り立っているという…。
大山が見えるカフェや由志園など景色も最高にいい場所で楽しいのでぜひ行ってみてください!