第82回『100万円の高級ボトルを一気飲みするのが日常だったあの頃』

うぃす! 大阪男塾の塾長です。

ホストクラブは、とにかく非日常だらけ。シャンパンタワーやシャンパンコール、煌びやかなシャンデリアなど、とにかくど派手なものが多いっすね。

僕がホストとしてバリバリ稼ぎ出してから、高いお酒に関するエピソードが増えていきました。

今回書くのは、高級ボトルの話っす。

ホストクラブには、世間の人が驚くような価格のお酒がずらりと並んでいます。

当時、イケイケだった僕は、お客さんから「このボトル一気飲みできるんやったら、あんたのためにおろすよ」と言われたら「あざっす!」って感じで、グイグイ飲んでたんすよ。

何度か、カミュジュビリーを一気飲みしたこともあったっすね。カミュジュビリーは、今はもう生産されなくなった高級コニャック。


当時お店で100万円する高級品す。締め日やバースデーイベントなどでおろされることが多い、特別なボトルだったんすね。

僕は一気飲みが得意でした。

でもカミュジュビリーは、アルコールの度数40度なんで、普通に飲んだらきついんすよ。

ノドも普通に焼けるっす。

裏話ですけど、一気飲みにはコツがあります。

酔いが回るよりも先に体内へ流し込んで、そのあとすぐ水をがばがば飲んで全て吐き切る。これができれば、ノーダメージなんすね。

この技を身につけていた僕は、当時、何度も高級ボトルの一気をやってお店やお客さんを盛り上げてました。

当時、幸太郎はヘルプで入ることが多かったんですが、ある日お客さんが「私、幸ちゃんにあのボトル一気させたいねん」と言ってきたんです。お客さんが指さす先にあるのは、ドルフィンでした。

ドルフィンとは、飾りボトルの一種。イルカが泳いでいる様子を再現した優雅なデザインのボトルです。

飾りボトルはその名のとおり、実用性よりも見た目に重きが置かれてます。もちろん、ちゃんと中にブランデーが入ってるんで飲めるんすけど、「映え」を意識して置かれていることの方が多いっすね。

すぐに、その日がやってきました。12月の年内最終営業日。

ヘルプについた幸太郎に、僕はお客さんの要望を伝えます。幸太郎は「わかりました。飲みます」と侍のように答え、ドルフィンのボトルの蓋を開けて、ガブガブ飲み始めました。

ドルフィンの度数は40度。

幸太郎は僕の「一気飲み一気吐き」を何度も近くで見てました。なので「スピード勝負」というのを心得ています。一気に飲んで、あとですぐに吐きにいく算段でした。

しかし「人間コンピューター」と称された敏腕経理の幸太郎に想定外の事態が!

なんとドルフィンボトルの注ぎ口がなだらかで、中身が少しずつしか出ません。

幸太郎大ピンチ!!

焦った幸太郎は「はよ、一気飲みせんと!」となんとかドルフィンを傾けますが、トプットプッ……という感じで雀の涙ほどしか出てこないんすよ。

結局、幸太郎は全部飲み干せず「なんやねん、幸太郎」って感じで、その場はかなりしらけました。

いつもは冷静沈着な幸太郎ですが、なにせ度数40度のお酒っす。フラフラに酔っぱらってしまいそのまま1日中潰れることに。

最終営業日で、今年最後の戸締りをしないといけないのに彼は一向に起きません。

社長に「ちゃんと戸締りしろよ」と言われてたので、とりあえず幸太郎を店の外に出さないと。けど、あかん。全然起きひん。

タクシー乗せようと思って抱える「離せ! 触るな」と暴れる始末。

みんなで話し合った結果、「とりあえず店の外に出すだけ出そう」ということに。

でも12月下旬の寒さを舐めてかかってはいけまへん。万が一、凍死したらえらいことっす。

「暖かい格好をさせないと!」

最終営業でベロベロだった僕らが苦肉の策でやったのが、近くにあったドン・キホーテで志村けんさんの「変なおじさん」のピンクのパジャマを買い、それを酔いつぶれた幸太郎に無理やり着せて、ダンボールです巻きにして帰るということでした。

翌日、ホストクラブの忘年会だったんすけど「さすがに幸太郎は、二日酔いで来られへんやろ」と思ってたんすよ。

そしたら待ち合わせ場所へ、少し遅れて幸太郎がのっそり現れました。

なんと変なおじさんのパジャマを着たまんま。

僕らは爆笑しながら「なんでお前、その格好やねん!?」って聞いたら「起きたら遅刻ぎりぎりやったんで、慌てて店から走ってきました」って言うんです。

こういうところは、妙に律儀なんすよね。

なんとか間に合い忘年会に参加した幸太郎でしたが、明らかに様子がおかしかったんです。

ずっと青ざめてるし、冬のチワワみたいに僕の隣でプルプル震えてます。

極めつけは鍋を食べようとしたときに、隣の幸太郎の鼻水がつぅ~て垂れてきて、あやうく鍋に着水しそうやったんです。さすがに僕もブチ切れて「汚いねん。もうお前、今日は帰れ!」と命じました。

こうして幸太郎は、忘年会から退場。鼻水をすすりながら、ビンゴカード片手に自宅へ帰って行きました。変なおじさんの格好でね。

以上が幸太郎の「イルカに呑まれた青年」というエピソードっす。

みなさんがもし、度数の高いお酒を一気飲みすることになったら「素早く飲み干して、素早く吐き切る」を実践してくださいね。

まあ、そんな機会はあんまないとは思いますが、何事も速度と下調べが大事ってことっす。

最後まで読んでもらって、あざしたぁ!!


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