第50回『カジュアルダウンってそういうことなん⁉ と価値観をひっくり返されたホストの話』

うぃす!

大阪男塾の塾長です。

僕はホストを引退後、お店のオーナーとしてホストの育成に励んでるんすけど、言葉をどう伝えるかって難しいっすね。

相手によっては「えっ、そんな捉え方するん!?」っていうことがあるんすよ。

今回、お伝えするのもそんな話です。

登場するのは前に、一回noteで書いた力っていうホスト。

力は赤西仁くんそっくりでイケメンで、ほとんど怒らない温厚なヤツなんすよ。

こいつは売上も高くてホストとして、なかなか優秀なヤツでした。

僕が勤めていたホストクラブは、ナンバー入りしてある程度の結果を出すと、好きな格好ができるなどお店への貢献度によってどんどん自由度が高まるシステムだったんすね。

ホストのファッションは時代によって変わるんすけど、その頃からホストもカジュアルめの服装がだんだんと許される時代になりつつありました。

力は、カチっとしたフォーマルな格好があんまり好きじゃなかったんすよ。

力は新店のホストクラブを仕切る店長の立場を任されてたんで、ある程度、自己裁量でなんでもできる立場だったんすね。

嬉しそうな顔で僕に「そろそろカジュアルダウンしますわ」って、ドヤ顔で言うてきたんを今でも覚えてます。

それから数日後、力はいつもと違う格好で勤務にのぞみました。

タンクトップにジャケットをはおり、ディーゼルのGパンにサンダル。

思わず僕は「お前、その格好で仕事する気なん⁉」と尋ねました。

でも力は「えっ、なんか変すか?」くらいの感じで、ほんまになんとも思ってないんすよ。

僕は「こいつダサーーっ‼️何が変かもわからんの⁉」と、内心びっくりしてました。

どうやら力の中では、カジュアルダウンて「タンクトップでサンダル履き」ってことだったんすよ。

彼がその格好で勤務してることが、当然、すぐに問題視されるようになりました。

僕らがそのとき働いていた紫苑グループは「ホストクラブは高級なところ。服装もホストとして品格のある服装を」という暗黙の了解があったんすね。

それって長く続いてきた伝統みたいなもんで、勤務しているうちに、なんとなくみんなわかっていくんすよ。

しかも、僕らが勤務していたLEIZEは当時流行っていたシャンパンコールもなしの紫苑よりも高級店。

でも残念ながら力には、それが全く伝わんないんす。

たまりかねた社長から「ちょっと話あるから来い」と呼び出しをくらった力は、タンクトップにサンダル履きの格好でのこのこ出向きました。

ちなみに当時社長は酔っ払うと熱湯を従業員にかけたり、金庫を投げる強者。
人の不幸が大好きな僕は内心、『これは大目玉やな』と力が思いっきりつめられるのを期待したんですが、

「おい力。お前LEIZEのトップやろ。タンクトップにサンダルてなんやねん。うちは高級ホストクラブや。なんぼカジュアルダウンやいうてもそのサンダルはあかんやろ。ちゃんとせぇ」と社長はかわいがってる力に対して、優しく注意したんす。

社長の力に対しての愛情が垣間見えました。

『なんや何も無いんかい!』と思ったのもつかの間、次の日に事件が起きました。

力がまたサンダルで出勤してきたんです。

『こいつどういう神経してんねん⁉️』
『社長に喧嘩売ってんのか?』
『こいつこんな尖ったやつやったんか?』

全員が戦々恐々とするなか、社長が出勤してきました。

『おう、力!お前なんでサンダル履いてんねん?』
昨日とは違い鋭い目をした社長の指摘。

すると力は満面の笑顔でこう言いました。「いやぁ社長、見てくださいよ。昨日社長に注意されたんですぐ買いに行ったんすよ。」

社長「は? 買いに行ったってお前サンダル履いとるやないか。」

力「いやいや、これドルガバのサンダルっすよ。社長が高級感出せって言ったから昨日、速攻ドルガバでサンダル買ってきたんですよ。いいっしょ? コレ」

一瞬、理解が追いつかなかったのか、少しの間があったものの、

社長「お前ナメてんのか⁉️ 俺が言ったんはサンダルがアカンってことやろ!」

力「いやいや7万円もしたんすよ」

社長「値段の問題ちゃうねん!このサンダルがあかんねん!なんで分からへんねん!」

ブチ切れた社長は力のサンダルをガンガン踏みながら、鬼のような説教。

あまりの踏まれ具合に、僕はスラムダンクの桜木花道がはじめてバッシュを買った時に流川楓を除く部員全員からバッシュを踏まれまくったのを思い出しました。

それでも力は「いや、ドルガバっすよドルガバ。なんでダメなんすか?」

と食い下がらず、結局これをきっかけに普段の緩さも指摘され店長から降格。ヒラのポジションにズドーンと落とされてましたね。

しゃあないっすね。厳しいかもしれないっすが、当然の処置だと思います。

ほんで、その流れがあったので力に代わって僕が新店を仕切るようになったんすね。

社長には、楯突いてきたのは百歩譲って許すとしても「カジュアルダウンの意味をはき違える非常識な人間に、店長は任せられへん」という思いがあったかもしれないっすね。

この日のことを僕らは【ドルガバ事件】と呼んで今でも語り継がれています。

そういえば5年くらい前に、瑛人の『香水』って曲がバカ売れしたんすけど、その歌詞でドルガバが出てきますよね?

僕はあの曲を聴くと、すぐに力がちらつくんすよ。「7万したんすよ!」ってドヤってたドルガバのサンダルを思い出すんすね。なので『香水』って僕の中では瑛人やなくて、もはや力の歌になってもうてますね。

言葉をどう捉えるかって、ほんま難しいっす。

「伝え方と捉え方には十分、注意せなあかん」と気づかされたエピソードでした。

最後まで読んでもらって、あざしたぁ!!

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