第63回『先輩のお墓参りで恩返ししようとしたら大騒動になった話』

うぃす! 大阪男塾の塾長です。

今回は、僕がホストになって、数年しか経っていなかった頃のお墓参りの話を書くっす。

ある年の夏、お世話になっている先輩から「たくま、お盆は実家帰るんか?」と聞かれました。

帰る予定はなかったんで「いえ、大阪にいます」と答えると、「ほんなら俺のお墓参り、一緒に来るか?」と誘われました。

一瞬「お墓参りって、大してゆかりのない人間が行ってええもんなんか?」と迷いましたが、その先輩にはかなりお世話になってたので「あざっす。行かせてもらいます!」と即答。

先輩は大阪の人だったので、当日指定された場所に出向いて合流する流れに。

その日は、確か8月15日だったと思います。

僕は「お世話になった人には、倍返しの恩返し」をモットーにしている人間す。このときも実は先輩を喜ばせようと、あるものをこっそりと鞄に忍ばせてたんですね。

当日、会うなり先輩は「たくま、今日はえらい荷物やな」と鞄を指さします。ここで荷物の中身を明かすと、ネタバレしてまうので「あとで筋トレしようと思って、鞄にしこたまダンベル詰めてきました」とボケると、先輩は「ハハハ」と笑ってました。

そういう先輩は、Tシャツに短パン、ビーチサンダルという夏らしい軽装だったっすね。僕はこの日の備えて、長袖長ズボンにスニーカーのフル装備。先輩は僕を見て「夏やのに暑そうな格好やな~」と言ってたんで「紫外線アレルギーなんすよ」と、適当にごまかしておきました。

お墓に到着したあと、バケツに水を汲んで墓石を磨いたり、墓の周辺に生えた雑草を抜いたり、僕はせっせと働きます。

先輩が「たくま、俺ちょっと一服してくるわ」と席を外したので、「チャンス到来!」と、僕は準備に取りかかりました。

鞄を開け、持参した大量の花火や爆竹を墓前に並べます。

先輩が帰ってきたので、僕はにやりと笑ってライターで花火に着火。

先輩の「お前、何しとんねん⁉」という、あっけにとられた顔が今でも忘れられないっすね。

すごい勢いで、爆竹や筒形の花火のパンパンという爆音が鳴り響きます。

爆竹の火が、先輩のビーチサンダルの素肌へ着地し「あっつぅ‼」と、飛び跳ねてたので、笑ってまいました。

唖然としていた先輩が、僕の頭をペチンと叩き「お前、墓前でこれ、どういうつもりや⁉」と怒鳴ります。

僕はてっきり喜んでもらえるもんやと思ってたので、「いや、いつもお世話になってるんで、今日は派手にやろうかと…」と本音を伝えました。

お墓の隣にお寺があったので、お寺が管理してたと思うんすけど、お寺のえらい人がすっ飛んできて「何を騒いどんねん」とえらい剣幕です。

僕らに声を掛けたのは、つるつる頭の住職でした。

花火の残骸を見て、住職は「もしかして君、長崎の人か?」と一言。

先輩は住職の言葉を聞いて「このハゲ、なんで、わかるねん。エスパーか?」とビックリ。。
前置きが長くなったっすけど、実は長崎では「お盆といえば爆竹」と言われるほど、お墓で爆竹はポピュラーな習慣なんすよ。

長崎出身じゃない人は、意味がわからないと思うので、くわしく説明します。

精霊流しといえば、麦やわらや板で作った精霊舟に、お供物や灯明、線香などを積み込んで、川や海に流して送るイメージがあるかもしれないっすね。

夜の川に流れる精霊船は、めっちゃ情緒的。

でも実は同じ長崎でも地域によって、結構やってることがバラバラで、僕の地域は完全にアッパー系のイベントって感じだったんすよね。

デコトラみたいな、どでかい精霊船が、繁華街を容赦なく練り歩いてました。「だんじり祭りみたい」って言うと大げさかもしれないっすけど、かなり激しい感じなんすよね。

精霊船を繁華街に入れ、みんなで押しながら「どーいどい、どーいどい」という掛け声とともに押し歩きます。大量の爆竹を鳴らしながら、どんどん進みます。

爆竹の量が半端なく多いんで、めっちゃうるさいんすよ。パンパン、パンパン鳴り響くので、耳栓は必須っすね。

僕は、そんな花火文化がある地域で育ちました。

ちょっと調べたら、中国の爆竹文化が17世紀くらいに日本に伝来して、長崎の一部で受け継がれていったみたいっす。

田舎者の僕は「全国どこでも、お盆には墓前で爆竹を鳴らす」とばかり思いこんでたんすね。

幸いなことに住職が理解を示してくれたことで、大騒ぎにはならなかったっすけど、気づけば周囲には「何が事件か?」と駆けつけた野次馬であふれ返ってました。

先輩に恩返しをするつもりが、恩を仇で返す感じになってもうたという思い出です。

いや~、無知って怖いっす。

若き日の僕は、こんな感じでひんしゅくを買ったり失敗を重ねながら「いかに自分が世間知らずか?」を思い知らされていくのでした。

最後まで読んでもらって、あざしたぁ!!

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