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2023ベストアルバム30【洋楽編】10位〜1位
遅ればせながらあけましておめでとうございます。2023年の年間ベストをうたっておきながら越年・・どころか一月もすでに半ば近くになってしまいましてまことにすみません。。元旦からの一連の災害や事故を見るにつけ、どうしても気持ちが沈んで続きを書き進める気持ちになりませんでした(岩手在住なので今回は被災しておりませんが)。北陸の皆様がどうか一日も早く日常を取り戻せることを祈っております。
そんな中ではありますが、年末に11位までアップ済でしたので、やはりなんとか仕上げることにしました。上位は思い入れが強く、色々あって超長くなりましたが、気になるアーティストだけでも読んでみていただけると幸いです!
※文中の"今年"は2023年を、"昨年"は2022年を指しています。
10位 Bewitched / Laufey
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アイスランド・レイキャビック出身で現在はLAを拠点に活動するシンガーソングライター/マルチ奏者 Laufey(レイヴェイ)の2ndアルバム。昨年の年間ベストでも13位に入れさせていただいた彼女の新作がまさかたった1年で出るとは・・。
しかも今年はアイスランド交響楽団と共演したライブを「A Night At The Symphony」としてリリースし、これがまた素晴らしい出来栄え。その上まさか新作まで聴けるとは思わなかったので、最後の最後にこれをみつけたおかげで全体の順位づけが大幅に狂いました。
Laufey & the Iceland Symphony Orchestra - Fragile (Live at The Symphony)
昨年のアルバムはApple Musicでは”オルタナティヴ”カテゴリでしたが今作は”Jazz”にカテゴライズされており、より落ち着いたトーンでなんかもう、スタンダード曲のような仕上がり。本当にこの人、23歳?・・人生何周目なんだ・・。あまりの完成度にため息しかでません(しかもかわいい)。
Laufey - Bewitched (Official Music Video)
9位 The Ballad of Darren / blur
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'90年代UKを代表する大物バンド・blur、8年ぶりとなる新作アルバム。2003年にギターのグレアム・コクソンが脱退、その後一時活動停止するも2009年にオリジナルメンバーで再始動。その後もロンドンオリンピックの記念コンサートでヘッドライナーを飾ったり(2012年)、ワールドツアーを敢行したり(2013-14年)、セッションから生まれた久々のアルバムをリリースし、またツアーを行ったり(2015年)と断続的に活動を行うも、近年はしばらくまた休止状態に。
そして昨年秋、翌2023年7月8日にロンドンのウェンブリースタジアムで再始動ライブを行うことを告知。もともとは新曲の制作等は予定されていなかったものの、今年の初頭から極秘裏にレコーディングを進めていたそうです。
「正式に悲しい55歳になってしまった。悲しいのはかまわない。55にもなって少 しも悲しみを感じないなんてほぼ不可能だ。55まで生きてきて、僕の経験から言 えるのはそこまでだけど、人生になんの悲しみもないのなら、恵まれた幸運な人生 を生きてきたってことだ」(デーモン・アルバーン)
えぇ・・ブラーだけじゃなくゴリラズでもあれだけの世界的な成功をおさめてもなおそんなに悲しいんか・・。そんなこと言われたらわたしのような路傍の石にへばりついてるゾウリムシはどうしたらええのや・・・(困惑)
Blur - The Narcissist (Official Visualiser)
ミッドライフ・クライシスおぢの悲哀はさておき、いざ聴いてみると確かにかつてのような突き抜けてポップな曲はなく、悲しくて寂しい、曇り空の下にぽつねんと突っ立ってるようなアルバム。・・なんだけど、不思議なことにどこを切ってもblurそのものなんですよね。
今作の収録曲は昨年の秋、デーモンがゴリラズのツアー中に書いたものを、'23年初めにスタジオ13(デーモンの所有するスタジオ)で他のメンバーが参加し、形にしていったとのこと。
フェスのキャンセルでたまたま開いてしまった5日間にレコーディングセッションして、一緒に録っておいた多数のマテリアルを1年以上たってから編集して曲にしていったという前作「The Magic Whip」とは成り立ちからしてやっぱりちょっと違うかな。わたしはどちらかというとこっちのほうが好きです。
数度の休止〜再始動を経てバンドの状態は今とてもいいようで、このあとまたblurの活動は休止するようですけど、そう遠くない将来、再び4人の新しい音が聴けるのではないかと楽しみにしています。次こそは来日公演に行きたい!(・・ほんとに行きたかったんですよ・・サマソニ・・)
Blur - Barbaric (Official Visualiser)
8位 Avenue Of Loveless Hearts / Bernhoft
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ノルウェー・オスロ近郊ニッテダル生まれのシンガーソングライター/マルチミュージシャン・Bernhoft(ベルンホフト・47さい)。今年も来ましたわたしの推し!
ライブでは主にひとりでループペダル(足元に置き、その場で演奏や歌を多重録音し、ループ再生できる機材)を自由自在に活用し、非常にユニークで創造的なステージを繰り広げます。アルバムでのアレンジも非常に多彩で聴きごたえがあり、いつも何度も聴きながら「これ、何がどーしてどーなってんだ??」と微に入り細に入り分析するのが楽しい、いわば典型的なミュージシャンズミュージシャン。私のお気に入りのライブを一曲あげときますね(てゆうかもう13年前なのか・・)。
Bernhoft - Choices[Live]
これ、ベースとギターを同時に弾くために、エレアコギターを改造して5・6弦に無理矢理ベース弦張ってるんですよ笑 すごすぎていつ見ても笑ってしまいます。
Bernhoft - No Place Like Home [Audio Only]
ところが本作はちょっと様子が違う。うまくいえないけれど、彼の場合、頭で聴く(アレンジ、展開、アイディア)>身体で聴く(グルーヴ、音色)>ハートで聴く(意味・気持ち)という感じだったものが、今回は全てが高い次元で達成されていて、なぜか過去一ストレートに胸に響く感じがします。
Bernhoft - Carry You[Audio Only]
ただ残念なことに歌詞がわからないのがあれなんだけど。国内盤出ないんだよな・・てゆうかそもそもCD自体もう出ないかな・・。うーん英語でいいから歌詞全文ほしいですね(できればデータで)。それとぜひ・・来日公演を・・!!
7位 THE VIVIAN LINE / Ron Sexsmith
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カナダ・オンタリオ州セント・キャサリンズ出身のシンガーソングライター、ロン・セクスミス(59)。えっ?もう59歳??・・1月8日がお誕生日なので、もうじき60歳になるんですね・・(とか書いてるうちにすぎちゃった)。
Ron Sexsmith - What I Had In Mind (Animation Video Series - Part One of Four)
'90年代からずーっと好きで聴き続けてますが、本当に本当に曲も声もいいのに、いかんせん地味なのでなかなかヒットせず・・。ご本人は気にしてないかと思いきやインタビューとか読むとやっぱり売れたいっておっしゃってますけども(そりゃそうだ)。今から急に大ブレイク、とかもうないと思うし、それは仕方ないけれど、創作を不自由なく続けられる環境を維持できるくらいにはちゃんと評価されて欲しいものです。
Ron Sexsmith - Diamond Wave (Animation Video Series - Part Two of Four)
もっとも、わたしとしては正直なところ、もう充分素晴らしい曲をたくさん受けとっていて、この方が元気で生きていて、たまに新曲が聴けたらそれだけで充分満たされるんですよ。でも律儀に毎回毎回本当に素晴らしい曲を届けてくれる・・今年も最高の一枚と巡り会えて本当に幸せです。
Ron Sexsmith - When Our Love Was New (Animation Video Series - Part Three of Four)
今作からはカートゥーンアニメ調のMVを4作つくっていて、これがまたとってもいいのでぜひ観てほしいのですが、観終わったあとに寂しいけれどなんともいえず暖かい気持ちになります。この路線、すごく合うから、また次のアルバムでも創ってほしいな。長くなるけど連作なので、あえて全部張っておきますね。
Ron Sexsmith - One Bird Calling (Animation Video Series - Part Four of Four)
6位 What Matters Most / Ben Folds
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米ノースカロライナ州ウィンストン・セーラム出身のシンガーソングライター、ベン・フォールズ(57)。言わずと知れた'90年代最高のピアノロックトリオ・Ben Folds Five(以下BF5)のVo/Pfですね。・・うそだろ、ベンさんもアラカンなのかよ・・。まったく時の流れってやつは・・・って書いてて思ったけどBF5と言われても若いひとは知らないかも・・?
むかしむかし、1990年代にね、Ben Folds Fiveというそれはそれはかっこいいピアノトリオ(Vo+Pf/Bass/Drs。3人なのにファイヴとはこれいかに)がいましてね。本国よりもむしろここ日本で売れていたんですよ(1stと2ndは両方30万枚越え)。
2000年のBF5解散後、すぐにソロに転向したベンさんは「Rockin' The Suburbs(1人でほぼ全ての楽器を演奏した超名盤!!)」を皮切りに5枚のアルバムを発表しており(間に再結成BF5でこれまた名盤を1枚)、今作が6枚目になるんですが、正直認知度低い気がするんだよな・・。どれもこれもくッそ名盤なのに・・。
Ben Folds - "What Matters Most" [Official Audio]
ともあれ2015年の前作「So There」から8年もの長いブランクも冒頭からあっさり吹き飛び、軽快なピアノロックあり、お得意の流麗な三連バラードあり、ビーチボーイズばりの美しい多重コーラスありと本作も相変わらずの充実ぶり。
何年かかってもいいからどうかまた素敵な新作を聴かせてくださいね。ベンさん。
Ben Folds - "Kristine From The 7th Grade" [Official Audio]
5位 -(Subtract) / Ed Sheelan
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今やイギリスを、そして時代を代表するソングライターとなったエド・シーラン(32)。本作は2021年以来となる2年ぶり・6枚目(※)のオリジナルフルアルバム。
そして、2011年のデビュー作「+(プラス)」以来、2014年の「X(マルティプライ)」、2017年の「÷(ディバイド)」、2021年「=(イコールズ)」、そして本作「-(サブトラクト)」と、実に5作/12年に渡って続いてきた「マスマティックス・プロジェクト」という数学的タイトルを冠にしたアルバム・シリーズのラスト・アルバムでもあります(※2019年に本シリーズに含まれないコラボ曲をまとめたアルバム・"No.6 コラボレーションズ・プロジェクト"をリリースしてるので6枚目)。
Ed Sheeran - Eyes Closed [Official Video]
エドは以前から「ファンが求めているものにはならないかもしれないけど、シリーズの最後は原点に戻ってアコースティックなものにしたい」と語っていて、実際どこか1stの「+」を思わせる雰囲気もある今作ですが、訴訟や妻の病気、親友の死といった困難に直面した時期に書かれた本作は、本人曰く「悲しみや憂鬱などについてのアルバム」とのこと。
Ed Sheeran - Boat [Official Video]
「『Boat(※本作のオープニング)』のテーマは立ち直る力。“決して大丈夫になることはないだろうけれど、どんな波が来ても僕は浮かび続ける”ということ。人生を悲しみに合わせていくことは可能だ。何も乗り越える必要なんてない。ジャマル(・エドワーズ/SB.TVの創始者でシーランの親友)が31歳で亡くなったことを、僕は絶対に、絶対に乗り越えられないだろう。乗り越えたくないし、乗り越える必要も感じていない。もし泣きたかったら、泣けばいいと思っている」
どの曲も喪失と痛みの影が色濃く漂っており、ながら聴き/ながし聴きできるような軽さはあまりなく(かといって重すぎもしないのはさすが)、きちんと向き合う必要があるアルバムですが、とにかく良い曲が次から次へと洪水のように・・。傑作揃いのエドのアルバムの中でも、もっとも染みる一枚となりました。
Ed Sheeran - Life Goes On [Official Video]
ちなみに楽曲単位ではわたしの2023年ベストソングはこちら。そう、どんなに大切なものを失ってしまっても、傷が癒えても癒えなくても、人生は続いていくんですよね。
4位 Now And Then / The Beatles
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The Beatles、解散から実に53年ぶり(!!)、そして1996年発売の未発表曲「Real Love」から数えても27年ぶり、まさかの新作です。バンドの来歴その他についてはさすがに解説はいらないかと思います、世界一有名なバンドですからね。
まずは音源のみで(↓)。
The Beatles - Now And Then (Official Audio)
新作といってもメンバー4人中2人が既に故人(ジョン・レノンは1980年に暗殺、ジョージ・ハリスンは2001年に病死)であるビートルズ。ではどうやって新曲を発表したのか? というと、メインソングライターであるジョンが生前残したデモテープ(ビートルズ時代のものではなく、解散後の70年代後半に録った自宅録音のもの)をオノ・ヨーコからポールが譲り受け、ピアノの弾き語りだったカセットテープからAI技術によりジョンのボーカルだけを分離・抽出し(デミックス)、そこに残りのメンバーが演奏やコーラスを重ねて創ったものです。
・・でもそれだとジョージもとっくに死んじゃってるから参加できないじゃん、て話なんですが、実は本曲「Now And Then」は'90年代の「ザ・ビートルズ・アンソロジー」プロジェクト三部作にて目玉として追加された他の未発表曲2曲(Vol.1収録の「Free As A Bird」とVol.2の「Real Love」)とともに一度3人で取り組んだものの、諸々の理由で頓挫しお蔵入りになっていたとのこと。つまり、その時のセッション音源からジョージのギターパートを一部使用しているわけですね。
ただし、'90年代のこの曲に関するセッションは短期間(2日間とも言われる)で打ち切られたため、素材が充分揃っていたとは言い難く、間奏のいかにもジョージ風のスライドギターはポールが弾いてるし、バッキングボーカルは他のビートルズ曲何曲かからサンプリングしてハメこんでいたりします。
ニュースなどで「ビートルズ、AI技術で最後の新曲を作成・発表!!」とかいう見出しをみて、昨今流行りの生成AIによってジョン・レノン風のメロディを新たに生成したとか、ボカロみたいにジョン風のAIに歌わせたとか誤解している方もいらっしゃいますが、AI技術を用いたのはあくまでも「デモテープに録音されていたピアノのバッキングやバックの雑音からジョンのボーカルのみを綺麗に分離・抽出した」点であって、何か新しい素材をそれっぽくでっちあげたわけではない、というところが非常に重要なので誤解なきよう。
ともかく本作のリリースは今年の音楽界において一番の衝撃でした。おっかなびっくり聴いてみたらちゃんとビートルズで、本当にいい曲だったのがまたびっくり。個人的には「Free As A Bird」とか「Real Love」よりずっとこっちのほうがいいと思っています。
もともとはこのほかにCメロとも言えるパートがあったのですが、歌詞が確定していなかったのか、歌もやや不明瞭だったこともあり、ばっさりカットして構成も変えています。このあたりが人によっては問題になるところですが、「この曲にはこのパートが不要/必要」という判断を、他でもないビートルズにおけるソングライティングパートナーであったポールが行なっているわけですから、考えようによってはそれこそが"ビートルズの楽曲"である所以とも言えるかもしれません(流出した元のデモで聴くCパートはすごくいいのですが、あのまま仕上げると個人的にはそれこそジョン・レノンのソロ曲という雰囲気になる気がします。)
ジョンのボーカルは、デモテイクであるにも関わらず、まるでこの完成系を見越して歌っているかのごとく、しっかりと伝わってきて、歌い出しの瞬間から本当に心が震えました。私は'96年に発表された真心ブラザーズの「拝啓、ジョン・レノン」という曲が昔から大・大・大好きなのですが、その一節にあるように、まるですぐ目の前のスピーカーのなかに居るような、優しい、とても優しい声でした。
オノ・ヨーコから提供されたカセットの収録曲のうち、「Now And Then」は特に録音状態が悪かったとか、ジョージが曲を気に入らなかったとか、色々理由は囁かれていますが、こうしてデミックスによって分離されたクリアなジョンのボーカルを聴くと、2023年までかかってむしろ良かった、としみじみ思います。AIによる音声分離技術はここ数年で一気に進みましたからね。
Love Me Do (2023 Mix)
そして、B面(2曲目)が同じくAIを活用した音声分離技術「デミックス」によって各パートを一旦分離した上で再ミックスされたビートルズのデビューシングル「Love Me Do」ってのがまた・・カーッ!! 粋だねぇ!!
つまり、この2曲でビートルズの終わりと始まりを繋げる60年間の円環の物語が紡がれているわけですね。 いい仕事しますよほんとジャイルズ・マーティン(ビートルズのプロデューサー・故ジョージ・マーティンの息子)さんは。
なお、本ランキングでは"たった2曲でも壮大なストーリーを感じるから"、という理由でこの位置であり、"さりとてたった2曲(しかも新曲は1曲)だから"、という理由でベスト3には入れなかった、ということですね。まあどうせ選考のレギュレーションから外れるなら大幅に曲を追加し新Mixで生まれ変わった赤盤・青盤を入れるという手もあるんですけど、やっぱりあれはあくまでベスト盤ですからね・・。
MVは前年公開されたドキュメンタリー「The Beatles: Get Back」を手がけたピーター・ジャクソン監督 。本業のMV監督じゃないし、プレッシャーが凄すぎて本当はやりたくなかったそうです。そりゃそうだよね笑
しかし結果はビートルズへの愛が詰まった素晴らしいものに仕上がっています。・・個人的には前半〜中盤の昔の映像と今作のレコーディング風景を合成したおふざけテイストはあんまり好きじゃないけど、考えてみれば昔のビートルズの映像作品てこんなイメージだし、ここがあるからこそ最後の最後のシリアスなパートがものすごく感動するというのもあるかと思います。
The Beatles - Now And Then (Official Music Video)
バンドとしてのビートルズはこれで本当に終わったんだな・・と思うと寂しい気持ちもありますが、生まれる前から伝説だったバンドの本当の終焉にこうして立ち会えたのは一音楽ファンとして幸せなことだったなとつくづく思います。世界中の音楽ファンの思い思いのリアクションをリアルタイムでツイッター(あ、えっくすか)で眺める幸せ・・自分が高校生の頃には考えもしなかった至高の音楽体験でした。
とはいえこの直後に前述のデミックスを活用した新ミックスによる「赤盤・青盤」が発売され大いに盛り上がりましたし、そこで示された特に初期曲の新ミックス化の素晴らしさは、この先何年にもわたってリミックスシリーズが楽しめることを約束しているわけですから、ビートルズはまだまだ終わらない、とも言えますね。
・・っていかん、ここだけ単独記事になってしまった笑
3位 Fictional Illustrations / Fly By Midnight
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LAを拠点に活動するシンガーソングライター Justin Bryteとプロデューサー/シンガーソングライターのSlavoからなるインディーポップ・デュオ、Fly By Midnight。色々調べてみても日本語の情報が少なくて、詳しい活動歴がよくわからないんだけど、Apple Musicでは2018年から本作を入れて5枚のアルバムが上がっています。YouTubeチャンネルのデータみたら登録が2010年になってる・・てことは結構活動長いんですね。本国でもまだそこまで売れてるわけではなさそう。
In The Night - Fly By Midnight (Official Lyric Video)
とにもかくにも曲がべらぼうにいい。ちょっと最近のThe 1975っぽいかな(この曲はサビがモロにBackstreet Boysっぽいけど)。まあ冷静に考えれば流石にビートルズより上ってこともないんですけど、なにせこちらはフルアルバムですからね。リリースされてからずっと聴きまくってて、本当に好きなのであえてこの位置にもってきました。
Different Lives - Fly By Midnight (Official Lyric Video)
すごくいいアルバムだと思うんだけど、年間ベストとかには全然上がってないんだよなぁ。もっと売れてぜひ日本に来てほしいです。(・・と思って念のためググったら2024年の年明け早々にくるじゃないですか。行きたかった・・)
Sometimes - Fly By Midnight (Official Video)
ライブ映えしそうな曲もたくさんあるので、今後に期待しています!!
2位 Council Skies / Noel Gallagher's High Flying Birds
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blurとともに'90年代UKを代表するバンド、Oasis・・の、中心人物ギャラガー兄弟のまゆげの濃いほう(どっちも濃い)こと、ノエル兄さんのソロプロジェクト、Noel Gallagher's High Flying Birds、約5年半振りの4th Album。
オープニングは意外に静かな始まりながら、冒頭数曲で充分心を掴まれる良曲揃い・・と思っていたら、中盤(個人的にはM6の"Easy Now"あたりから)さらにぐぐっと曲のレベルがあがり、Oasis時代でもなかなかないくらい充実した楽曲が続く(※個人の感想です)。
Noel Gallagher's High Flying Birds - Easy Now (Official Video)
かといって典型的なノエル節だけではなく、タイトル曲"Council Skies"などちょっと意外なテイストながら名曲、という曲もあり、かつ、伸びのあるボーカルがすごくいい・・。
Noel Gallagher's High Flying Birds - Council Skies (Official Video)
昨年ソロでネブワースでの大規模ライブを成功させ絶好調な弟リアムに続いてノエルまでこんな充実作を出したとなると、Oasisの再結成はますます遠のくのでは・・といらん心配もしたくなるところですが、ま、そのほうがいいのかな。二人ともジリ貧で「しゃあねぇ、Oasisやっていっちょ稼ぐか」ってなるよりはねぇ・・・。
Noel Gallagher's High Flying Birds - Think Of A Number (Official Visualiser)
個人的にはこのちょっとU2(のNew Year's Day)っぽい導入分〜想像のつかない中間部の曲展開に一番ゾクゾクした"Think of A Number"がフェイバリットかな。あ、でも"We're Gonna Get There In The End"も捨てがたいな・・もちろん"Easy Now""Council Skies"も・・あといいのは・・うーんうーん・・全部!!
Noel Gallagher's High Flying Birds - We're Gonna Get There In The End (Official Video)
でもまぁやっぱり一番はこれか・・。このひとにはとことん大会場/シンガロングが似合うよね。控えめにいって最高・・と思ったらこれ、ボーナストラックなの!? 嘘だろ!? いやまあOasis時代からめちゃくちゃいい曲がなぜかシングルB面のみとかよくあったけど・・ええ・・(困惑)。なんでこれが本編に入らないん? 意味がわからないよ・・(とゆうかアフターコロナにこの多幸感と祝祭感にあふれるライブ映像はずるい笑)
1位 Autumn Variations/ Ed Sheelan
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今やイギリスを代表するソングライターとなったエド・シーラン・・ってついさっきも書きましたね。そう、本作は5位で紹介した「-」に続き、9月に発売されたエドの今年2枚目の完全新作アルバム(!!)です。
一応、このランキングをつくるにあたって自分の中での取り決め(レギュレーション)があって、その中に「同年に複数のアルバムをリリースしている場合は、一番気に入った1枚を入れて、文中で他のものを紹介する」というのがあるんですが、これだけ明確に別のアルバムとしてリリースされて、それがどっちも甲乙つけがたい、となるとまあ、入れざるをえないかな、と。こっちが上なのは単純にまあ、好みですね。1位と5位というほどの大きな差は正直ないです。間の諸作もベスト5に入れたかった、というだけで。実際、日によっては順位逆にしようかと思うほど。
Ed Sheeran - That's On Me (Fan Created Music Video) [Brazil]
前述の「マスマティックス・プロジェクト(数学的タイトルによる連作)」の終了以降初のアルバムとはいえ、これまでと大きくサウンドやアレンジのスタイルがかわっているというわけではありません(むしろ前作「-」がエドの作品の中ではやや異質なので本作とはだいぶ雰囲気が異なる)。本作は"秋"をテーマとし、彼と彼の友人たちの身に起こった出来事にインスパイアされて書かれたアルバムとのこと。
Ed Sheeran - Magical (Fan Created Music Video) [Ireland]
今作もまた、『-(サブトラクト)』をプロデュースしたアーロン・デスナーと協力し、ノンストップで作曲とレコーディングを進めることができたとのこと。それにしたって・・前作も今作も14曲入りですよ?しかも各々にボーナストラックもあって、それもまた名曲揃い・・そういえばエドと仲が良いテイラー・スイフトも2020年に傑作を2枚連続して出しましたけど、このひとたちの頭の中はいったいどうなってんの??
ちなみにこの"Magical"や最初の"That's On Me"も含め、本作では全14曲分のMVをファン(のクリエイター/パフォーマー、たぶんみんなプロ)が制作するプロジェクトが現在進行中です。前作ではエドの傷ついた内心を現すかのような共通の世界観の美しい連作MVを多数発表してましたが、色々な国の人が楽曲から自分の感じたものを自由に表現していくこういった試みもまたいいですね。
Ed Sheeran - Blue (Fan Created Music Video) [Netherlands]
MVとしてはこれが一番好きかな。繊細な手書きのアニメーションが楽曲にマッチしていてとにかく美しい。
Ed Sheeran - Autumn Variations Fan Living Room Sessions (Trailer)
それと、本作のプロモーションの一環として、世界中のファンの自宅にサプライズ訪問(あらかじめスタッフがアポとってインタビューしに行って、撮影しているところにエドが尋ねてきてその家のリビングで一曲歌ってく)ドッキリみたいなのをやってて、ほっこりします。
Ed Sheeran - Plastic Bag (Live From Alex's Living Room)
このひとのこうゆうところ、本当に好感が持てますね。世界的な大スターになっても何か大切なものを忘れてない気がして。またこのアルバムのオープンなところがこの企画によくあっていると思います。
とにかく本作も「-(サブトラクト)」も甲乙つけがたい素晴らしい作品で、こんなに素晴らしいアルバムを一年に2枚も受け取れるなんて、長年のファンにとっては思ってもみない贅沢な贈り物でした。
Ed Sheeran - Amazing (Fan Created Music Video) [Australia]
私ごとですが、2023年のわたしのプライベートは介護に押しつぶされて例年にもましてかなり暗かったので、エドの内面の吐露、傷の昇華に重きを置いた「-」よりも、もう少しひらけた、明るいものが聴きたかった、という点でこちらが上にきたのかもしれません。いずれにしろ、聴き手自身の気持ちを重ねていく"余白"が多いように感じ、こちらを最終的に本年の一位とさせていただきました。
【総評】
2023ベストアルバム30【洋楽編】30位〜1位まで、いかがだったでしょうか。私は現在48歳なんですけど、この歳にもなるとやっぱりどうしても思い入れの強いアーティスト、出せばもう、出来に関わらずそれこそ30位以内くらいには入れずにはいられないアーティストってのは年々増えてくわけですよ。特に今年はそういったアーティストの当たり年で、結果として中堅〜ベテランが多いランキングだったので、読んで下さった方にとってもあまり新鮮味はないかもしれません。
ですが、たとえば私が本稿を執筆しながらスマパンの新作に気がついたように、「昔好きで聴いてたけど、今年新作出してたとは知らなかったな〜」とか、なにかひとつでもそういった出会い、再会のきっかけになれば嬉しいな、と思います。
もちろん、流行り物も一通り聴くので、良いと思ったら全然上位に入れるんですけどね。自分は全然好きじゃないけどこれ入れてないと古いとかわかってないって言われそうだから・・みたいなのはつまんないな、と思う次第です。はいー。
エドのアルバムを悩んだ挙句両方トップ10に入れたり、2曲入りシングルかつ1曲は既発(リミックス)の「Now And Then」を入れたりと、これでいいのか??と何かと悩んだ今年の年間ベストでしたが、終わってみれば自分的にはとても納得感のあるランキングになりました(ただ、ストーンズの順位だけはもっと上でもよかった)。
前年の反省からあっさりした文章を心がけていたにも関わらず、上位になればなるほど思い入れが炸裂して結局超長文になってしまいましたが、最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!
2024年は年間ベスト以外にも色々書いていけたらと考えておりますので、気に入った方はぜひぜひスキ&フォローしていただけると幸いです。皆様もわたしもまた一年、素敵な音楽とたくさん出会えますように!