室井光広日録(26)

2006.1月29日(日)晴。戊午 旧暦元日。
モノガタリ性の夢。のほほんとして、マツリを挙行。50男のヨミカエリ。
眼精ひろうによる頭痛。
座業による畑作。芭蕉ー柳田的な<座>の文芸のうけ取り直しを、座って書く孤絶の作業によって。

四月からの講座「外国文学の探究」でゲーテ『ファウスト』を、「詩論と詩」でボードレール『悪の華』を、翻訳で(!)精読(の予定とする)。我田引水ならぬ我畑放火。カノをおこす。けっきょく、じぶんのやりたいことした考えてないんじゃないの、という声。
ベンヤミンがあれほど入れあげたゲーテ、ボードレールを今こそ、受けとり直そう。(これまでは読んでいないにひとしい…という例の思い。)

[前略]こうしたコヨミ(カヨミ)を陰陽師は重視する。
壬の時代がやってきた。
海と山のあいだで日々(日をヨミながら)御願(うがん)立てと御願解き(願ほどき)を実践できる。しびれるような幸福感が戌の年には味わえるに違いない。

本日は戊午の日。<火生土>の気。カノ的。山の神のことを考える日。戊が壬に出遭う(ヤマがウミに…)十年が来た。海・山のうれいよ、わが身に宿れ。わがうれいを抱き摂って下さい。交換=交歓。本日、旧暦元日…中国ではドラゴン・パレード。

つい最近までやっていた(と母がいっていた)初午講。どんなアツマリなのか。要かくにん。ハナシが不正確なうえに、聴取者の耳がいいかげんなので…いたしかたのないなりゆき。それでも、ねばり強く、反復聴取せよ。ねうちのない土民のハナシ。ねうちを付加せずに。聴きとれ、聴きとれ。何かを安らわせよ。

五十すぎて、ボードレールのモドキ。陰陽師は、彼から「苦悩の錬金術」(『悪の華』)をマネブ。
その実験室を、大磯にしつらえる予定。

寺子屋実習を機に、『悪の華』の仏語、『ファウスト』の独語を、ノリトとしてあげつづけよう。21世紀のワイ小錬金術師として。

母のこしらえた綿入れハンテン(絹製、他)が幾枚も出てきた。多くの人に贈ることができた。記憶しているだけでも辻原登氏、山城むつみ氏、田中和生氏、多和田葉子氏、佐藤亨氏、長内芳子氏、Yの姉たち…。他にも。
まだこんなに多く、残っていたとは。柳田・折口から学んだ<著物>=キモノの恩恵。母を祭る!「めでたくおわしませ」という。イハウ。タテマツル。

<日本>をめぐる説。左右のイデオロギー色に拠るいろいろなイワレがあるようだが、宮本常一の説が一番良い。この列島は、どこも、山だらけ。ヤマのト(処)。だからヤマト。それでよいではないか。
<日本人>の起源――その神話が数々ある中で、八重山のものが一番よい。
人間の先祖は、ヤドカリ。巻貝の殻を移り住むように、洞窟(クラ)で穴居生活を営み、洞窟を移り住んでいたわれらの祖先。しょうもないイデオロギー色を洗いながす…オクライリ人!

クラ――カラ(殻)。

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「31」と番号が振られた日録は、ここまででお仕舞にする。(2024.3.13)


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