見出し画像

宇宙産業がアフリカ大陸の経済発展を牽引~アフリカの宇宙関連スタートアップ企業の最新情報~

天地人は、衛星データを使った土地評価コンサルを行っているJAXA認定ベンチャーです。地球観測衛星の広域かつ高分解能なリモートセン(シングデータ(気象情報・地形情報等)や農業分野の様々なデータを活用した、土地評価サービス「天地人コンパス」を提供しています。

Tenchijin Tech Blogでは、宇宙に関連するさまざまな最新情報を、天地人のエンジニア、研究者、ビジネスリーダーが一歩踏み込んで解説します。

天地人noteでは、過去5回に渡り、アメリカ欧州日本カナダインド中国宇宙関連スタートアップを特集してきました。
今回はシリーズ第7回、アフリカ編です。近年宇宙産業における研究開発や衛星ビジネスが本格的に発展してきたアフリカ大陸の宇宙市場と注目の企業について紹介していきます。


アフリカの宇宙市場

世界全体の宇宙産業予算に占めるアフリカ大陸の割合は全体の1%未満と、1950年代から宇宙開発を進めていた欧米諸国や、ここ20年で急成長を遂げた中国・インドと比べて、まだまだ発展途上の産業と言えるでしょう。

(出典:Space in Africa

しかしながら、Space in Africaによるレポート「The 2022 edition of the African space industry annual report」によると、現在のアフリカ大陸の宇宙産業評価額は2.5兆円(※)で日本の宇宙産業の市場規模のおおよそ2倍程度です。さらに2026年には、アフリカの宇宙産業評価額は16%増の2.9兆円(※)にも及ぶと予測されており、近年凄まじい勢いで成長を遂げています。
(※Space in Africaのレポートより1ドル130円として算出)

アフリカでの宇宙市場が急速に発展する背景には、アフリカ諸国の政府による市場促進と海外からのアプローチによるものが大きいとされています。

アフリカの科学技術開発は、多くの国々がヨーロッパ諸国の支配から独立した1960年前後に大きく動き出しました。冷戦期に独立した国々は、東西両陣営からの支援をもとに、科学技術の開発に注力していったという背景があります。

しかし、宇宙産業としての実績が表面化したのは1990年代のことです。アフリカ大陸初の人工衛星保有国になったのはエジプトでした。1998年、エジプトはフランスのマトラ・マルコニ社製のナイルサット101をフランス領ギアナのクールから打ち上げました。これによって北アフリカのテレビやラジオの電波やデータ通信環境がカバーされました。

その翌年、南アフリカは自国製の人工衛星サンサットの打ち上げに成功します。その後は15か国で53基の人工衛星が打ち上げられています。(2017年時点の情報)


(出典:SPACEHUBS AFRICA


そして2023年1月、アフリカ大陸の宇宙開発機関としてAfrican Space Agency (AfSA)が発足しました。その本部が置かれるエジプトは、2023年の2月と3月に中国との協力の元でエジプトの通信衛星を中国の酒泉宇宙センターから打ち上げました。このように近年のアフリカの宇宙開発には他国からの支援が大きく影響しています。

アフリカ大陸が宇宙産業で魅力的な市場とされているのには下記の理由があります。

人口が爆発的に増えている
土地が広大であるため未電化地域が多い
地方はまだ高速インターネットが普及していない

このような理由からアフリカは宇宙産業、特に通信産業の市場になっていると考えられます。

IAF(国際宇宙航行連盟)の会長はアフリカ地域の宇宙開発について以下のようにコメントを残しています。

“ アフリカではエキサイティングな宇宙時代が幕を開けようとしている。宇宙技術がもたらす恩恵を国民に享受させる用意があるアフリカの国が増えつつあることをうれしく思う。”

かつてのアフリカではインフラストラクチャーが充足していないために経済の成長と発展が妨げられていましたが、現在はインターネットやデバイスの普及により、逆に改善余地のある環境によってイノベーションのアイディアとビジネスチャンスが生み出される可能性があります。それと同時に、貧困や衛生問題を解決する手段としても宇宙開発は期待されています。

宇宙が豊かな国だけでなく発展途上の国々にとっても開かれた産業になっていくことが期待されます。

アフリカの宇宙スタートアップ

Space in Africaによると、現在アフリカ大陸の31カ国で272の新興の宇宙テック企業が存在すると報告されています。こういった宇宙テック企業は、製造や医療、物流などの分野において最先端の技術やソリューションを開発するために宇宙技術や衛星データの活用を試みています。

特に衛星通信市場は2021年のアフリカの宇宙・衛星産業評価額の主要シェアを占めています。固定衛星サービス(FSS)、移動衛星サービス(MSS)、衛星テレビサービスがこの市場には含まれます。

また、アフリカの宇宙産業では、地上セグメント市場の盛り上がりが期待されます。地上セグメント市場とは、衛星地上局や天文機器など、地上に設置された宇宙関連の施設を指します。多くのアフリカの国々が、将来的に衛星を開発し打ち上げを目指しているので、打ち上げ後の運用に必要な地上システムも必要となります。また、衛星通信を利用するためには通信をダウンリンクするための地上局が必要となります。そのため、地上セグメント市場はアフリカの宇宙産業の成長を後押しする役割が期待されています。

もう一つのトレンドは小型衛星です。大きな衛星の製造や開発には高いコストと時間がかかるためCubeSatを始めとする小型衛星が注目されています。小型衛星から得られる情報を活用し、アフリカの社会や経済、環境の発展に直結するアプリケーションが考案されています。例えば、モノのインターネット(IoT)や天気予報、早期警報システム、農業での作物や家畜のモニタリングなど、革新的な小型衛星の活用が検討されています。

アフリカの注目宇宙関連スタートアップ


1. Galaxy Aerospace Ghana

はじめに紹介するのはガーナの「Galaxy Aerospace Ghana」です。

ガーナは2017年初の人工衛星の打ち上げに成功しました。この衛星は同国のAll Nation大学の学生によって開発されたものでした。

これを受け2020年、ガーナ初の民間宇宙機関としてGalaxy Aerospace Ghanaは設立され、宇宙科学、宇宙探査、天文学、技術の分野で活動しています。彼らの目標は、宇宙に関する知識を普及させ、宇宙研究や宇宙産業の発展を促進することです。Galaxy Aerospace Ghanaは、宇宙科学の教育や学習、民間宇宙飛行の商業化を通じてガーナの宇宙分野を育成し、宇宙探査や技術の卓越性を示す場となることを目指しています。

同機関は宇宙機関として下記のような事業に取り組む予定です。

  • 宇宙ラボでの実験の機会を提供し、宇宙科学、宇宙探査、天文学といった宇宙科学技術の発展を推進する。

  • 衛星・ロケットプログラムを実施し、衛星やロケットの利用を促進する。

  • 宇宙ステーションから月や深宇宙への探査を行い、将来的には火星への着陸を目指す。

  • 国際宇宙センターと連携し、2030年までに月へのロボットによる着陸を実現するための準備を進める。

Galaxy Aerospace Ghanaは、これらの展望に向けて積極的な取り組みを行い、宇宙科学技術の発展とガーナの宇宙産業の成長に貢献していくことを目指しています。彼らの活動は、宇宙への探求心と技術の進歩を結びつけ、新たな知識やビジネスの機会を創造することに焦点を当てています。将来的には、ガーナがアフリカや世界の宇宙産業の中心となり、持続可能な宇宙科学技術の開発と利用を実現させることを目標としています。


次に紹介する企業から、技術的な視点を交えた解説を記載していきます。

以降の内容は有料となります。
(この記事のみ購入する場合は、200円です。月に3~4記事が月額500円になるサブスクリプションプランもご用意しております。)
等ございましたら、info@tenchijin.co.jp までお気軽にお問い合わせください。

天地人へのご質問・記事に関するご感想・記事の内容のリクエスト

ここから先は

6,693字 / 7画像

¥ 200