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再生可能エネルギーとリモートセンシングデータ〜リモートセンシングが切り開く再生可能エネルギーの可能性〜

天地人は、衛星データを使った土地評価コンサルを行っているJAXA認定ベンチャーです。地球観測衛星の広域かつ高分解能なリモートセンシングデータ(気象情報・地形情報等)や農業分野の様々なデータを活用した、土地評価サービス「天地人コンパス」を提供しています。

Tenchijin Tech Blogでは、宇宙に関連するさまざまな最新情報を、天地人のエンジニア、研究者、ビジネスリーダーが一歩踏み込んで解説します。

今回のテーマは再生可能エネルギーとリモートセンシングデータです。天地人は先日、経済産業省の令和4年度第二次補正予算のSBIRフェーズ3(Small Business Innovation Research)に採択されました。交付金上限は4.3億円となっています。このSBIRで天地人は「地表面温度上昇に伴う発電効率低下を考慮した土地評価選定」を世界初の取組みとして提案しました。(参考)

今回は天地人の取り組みを踏まえながら、再生可能エネルギーとリモートセンシングデータについて掘り下げていきます。


1. 再生可能エネルギーとは?色々な再生可能エネルギーの種類をご紹介

再生可能エネルギーとは、自然界に豊富に存在し、継続的に補充されるエネルギー源から得られるエネルギーのことです。再生可能エネルギーの市場は 2030 年までに 2 兆米ドルを超えると予想され、成長が著しい分野です。

このセクションでは主要な再生可能エネルギーの種類とその特徴、利点、課題をそれぞれ詳細にご紹介していきます。

太陽光エネルギー


太陽光エネルギーは、太陽の光を直接電気に変換する技術です。太陽光パネルは、光電効果を利用して電力を生成します。このエネルギー源の最大の利点は、太陽が提供する光エネルギーが無尽蔵であることと、運用時の環境への影響が非常に低いことです。

しかし、太陽光発電の効率は天候や地理的位置に依存するため、安定した電力供給には課題があります。

日本最大の太陽光発電所「パシフィコ・エナジー作東メガソーラー発電所」
東京ドーム87個分に相当する約410haの広さに相当。
合計で約75万枚の太陽光パネルが敷き詰められています。

出典:https://www.pacificoenergy.jp/business/solar/

風力エネルギー


風力エネルギーは、風車やタービンを使って風の動力を電力に変換します。風力発電は、特に風の強い地域や海上で効率的に行われます。持続可能でクリーンなエネルギー源である一方で、設置には大規模な土地が必要であり、風の不安定性も電力供給の安定性に影響を与えます。

出典:【イラスト解説】風力発電の仕組みとは? - WITH YOU

風力発電においてはデンマークが世界をリードする国の一つです。過去にはエネルギーの95%以上を輸入に頼っていましたが、1973年の第一次オイルショックをきっかけにエネルギー自給率を高める取り組みを開始しました。この結果、2019年には国内で使用される電力のうち47%以上が風力発電によって供給されるようになっています。

参考:デンマークの風力発電事情。現在を知り、これからを考える

水力エネルギー


水力エネルギーは、川の流れやダムを利用して発電します。水の位置エネルギーを利用することで、大量の電力を比較的安定して生成することができます。また、一旦建設されれば運用と維持のコストが比較的低く、長期的に安定した電力供給を提供することが可能です。

しかしながら、大規模なダムの建設には環境への影響が伴います。ダムによる河川の流れの変化は、周辺の生態系に大きな影響を与えます。魚類をはじめとする水生生物の生息地が失われることで、生物多様性が脅かされる恐れがあります。

これらの問題に対処するために、環境に配慮したダムの設計や運用が求められています。段階的な実施を目指し、魚類のための魚道の設置や、水生生物の生息地を保護するための環境対策などが進められています。

参考:ダムによる河川の分断の影響

地熱エネルギー

地熱エネルギーは、地球内部の熱を利用して発電します。この方法は、地熱が豊富な地域で特に有効です。一定の熱エネルギーが常に利用可能であるため、比較的安定したエネルギー源として注目されていますが、地熱発電所の設置には高い技術と初期投資が必要です。

八丁原発電所の様子

日本における地熱発電は、火山活動が活発な地域、特に東北地方と九州地方に多く存在します。これらの地熱発電所の合計発電設備容量は約54万kWに上り、年間発電量は約2,472GWh(2019年度のデータ)です。これにより、日本の全電力需要の約0.2%をカバーしています。

代表的な発電所には、大分県にある大規模な八丁原発電所や、50年以上の歴史を持つ岩手県の松川地熱発電所などがあります。

出典:https://geothermal.jogmec.go.jp/information/plant_japan/010.html
参考:https://geothermal.jogmec.go.jp/information/plant_japan/
https://www.nextmsc.com/report/renewable-energy-market

バイオマスエネルギー


バイオマスエネルギーは、有機物を燃料として使用します。燃やすという点では化石燃料と同じですが、バイオマスエネルギーのエネルギー源は再生可能であり、炭素中立であると考えられています。ただし、大量のバイオマス資源を確保するための土地利用や、生態系への影響は慎重に管理する必要があります。

近年では気候変動政策で重視されるバイオマスの「炭素中立性」について、EUを中心に定義を単純化しすぎているとの議論があります。科学的根拠に基づく定義の必要性が指摘されており、論争が起こっています。

このように各種再生可能エネルギーにはそれぞれ利点と課題が存在します。それぞれの特徴を活かし、エネルギー源を効果的に活用することで、今までにできなかった新しいエネルギー生産の形が生まれています。


2. なぜ再生可能エネルギーが注目されているのか?

続いて、「なぜ再生可能エネルギーが注目されているのか?」という点について、複数の視点から解説していきます。

地球温暖化や気候変動の対策として


まず再生可能エネルギーが注目されている理由として、化石燃料のように枯渇することがなく、環境への影響が少ないことから、地球温暖化や気候変動の対策としてこれらのエネルギー源の利用が世界中で推進されてきていることが挙げられます。

化石燃料の枯渇に関する現在の予測は、石油、石炭、天然ガスの各エネルギー源によって異なります。現時点での予測では、石油と天然ガスの可採年数は約50年、石炭は約132年と見積もられています​​。これらの数値は絶対的なものではなく、世界情勢、消費量の変化、採掘技術の進歩によって変わる可能性がありますが、今後100年ほどで枯渇する可能性が高いといえます。

一方で、国際エネルギー機関(IEA)の見通しによると、再生可能エネルギーの普及が進むことで、化石燃料の需要は2030年までにピークに達し、その後減少に転じると予測されています​​。2030年までに電気自動車の新車販売が現在の10倍に増え、化石燃料の一種であるガソリンの消費が減少し、太陽光発電や風力発電などがさらに普及することで、再生可能エネルギーがエネルギー総需要の半分近くを占めるようになるとされています​​。

さらに、温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」の目標を達成するには、温室効果ガスの排出量をさらに減らし、再生可能エネルギーを現在の3倍に増やす必要があるとされています​​。

出典:https://www.asahi.com/sdgs/article/14767158

このように、化石燃料の枯渇予測と再生可能エネルギーの普及予測を合わせると、再生可能エネルギーの重要性が一層明らかになります。化石燃料の枯渇のリスクと、それに対する温暖化対策や持続可能なエネルギー供給のために、再生可能エネルギーへの移行が急務であることがわかります。

これまで述べてきた世界的動向に加え、その他にも、複数の観点から再生可能エネルギーが注目されています。以下に具体例として2つに分けて説明します。

自国でのエネルギーの確保手法

再生可能エネルギーは自国におけるエネルギーの確保手段としても重要です。多くの国々は、エネルギー供給を輸入に依存しており、これが政治的なリスクや価格変動の原因となっています。風力エネルギーの説明の際にデンマークの例を挙げましたが、再生可能エネルギーは自国での供給が可能で、国内での自給自足を促進することができます。これにより、エネルギーの安定供給と価格の安定化に寄与することが期待されています。

主要国の一次エネルギー自給率
出典:https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/energy2020/001/


経済的なポテンシャル


再生可能エネルギーは経済的な観点からも大きな可能性を秘めています。太陽光発電や風力発電などの技術は、コストが低下しており、化石燃料よりも安価なエネルギー源となりつつあります。また、再生可能エネルギー産業は、新しい雇用機会を創出し、技術革新を促進する可能性を持っています。

その他にも、カーボンクレジットの取引による経済活性化が挙げられます。カーボンクレジットは、温室効果ガスの排出削減または炭素吸収によって得られる、一定量の排出権を示す単位です。企業や国が環境保全活動を通じて排出削減を行い、その成果をクレジットとして認定し、市場で売買することができます。国際的な取引には、国連気候変動枠組条約の下で運営されるメカニズム、例えばCDM(クリーン開発メカニズム)があり、国家間で温室効果ガスの削減目標達成を目指しています。また、多くの国々では、国内での排出権取引制度が設けられており、国内市場での排出権売買が行われています。

カーボンクレジットについてはこちらの記事でより詳しく解説していますので、興味のある方はこちらをぜひお読みください。
https://note.com/tenchijincompass/n/n76aa241ccfbd

これらの要因が複合的に作用し、再生可能エネルギーは現代社会において不可欠なエネルギー源となっています。これからのエネルギー政策や産業の発展において、再生可能エネルギーの役割はますます重要になるでしょう。

エネルギーをめぐる国内外の状況や、これを踏まえた日本の取り組み、今後の方針については、経済産業省が毎年「エネルギー白書」と呼ばれる報告書を出しています。エネルギーについてより詳しく知りたい方はぜひ目を通してみてください。
激動するエネルギーの「今」を知る!「これから」を考える!「エネルギー白書2023」

参考:
https://forbesjapan.com/articles/detail/66963
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/being_sustainable/attach/pdf/benkyo_kai-14.pdf
https://www.kurashitoecoto.jp/social/energy/depletion-of-fossilfuels/

3. 天地人の再生可能エネルギー分野における取組

天地人は、経済産業省の令和4年度第二次補正予算SBIR(Small Business Innovation Research フェーズ3)プログラムに採択されました。このプロジェクトでは、「複数の人工衛星・センサー種別のビッグデータ解析による高度な情報プロダクト群の作成」と「再生可能エネルギー事業分野における適地評価システムの社会実装」を目指しています。まさに今回のテーマである再生可能エネルギーとリモートセンシングデータに関わるところです。

天地人は再生可能エネルギー分野において、衛星画像データを活用した画期的なプロジェクトを推進しています。具体的には、天地人はAIを用いた衛星データの分析技術と優れたUI/UXを活用して、低コストかつ高精度な再生可能エネルギー事業者向けの土地評価選定システムを開発しています。

具体例を挙げると、従来では太陽光パネルを設置するためには事前に入念なリサーチと人手が必要でした。天地人のソリューションでは、衛星画像から土地の選定を行うことで、簡単に、最適な場所を選ぶことができます。再生可能エネルギーの導入を簡単にしながら、より効率的にエネルギーを生産する仕組みになるということです。

実際の操作画面 
マッピングを行い、発電量の条件等を入れるとすぐに発電量の目安がわかります。

また、SAR衛星や光学衛星なども活用して、森林・生態系のアセスメントや地滑り・盛土による災害リスクの評価を行い、日射量や風速・風向などの発電に関連する情報も含めた独自のデータセットを開発しています。

発電条件、制約条件、環境条件など、様々な情報を収集し、非効率かつ高コストな従来の方法に代わるソリューションになっています。これにより、ユーザーは適地評価の工数とコストを大幅に削減でき、持続可能性を考慮した適地を選定できるようになります。

以降の内容は有料となります。
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