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天地人コンパスで見る地球温暖化 -10年間における地表面温度の変化-

天地人は、2050年にも持続可能な地球環境を目指して活動するJAXA認定ベンチャーです。宇宙ビッグデータをWebGISサービス「天地人コンパス」で解析・可視化することで、まだ誰も気付いていない土地の価値や地球の資源を明らかにするサービスを提供しています。

『今日から使える宇宙豆知識 by JAXAベンチャー天地人』では、宇宙に関連するさまざまな最新情報を、天地人のエンジニア、研究者、ビジネスリーダーが一歩踏み込んで解説します。

今回のテーマは「天地人コンパスで見る地球温暖化」です。
天地人コンパスには複数のレイヤーがあり、それを地図上に重ね合わせることで、土地の評価や選定を行うことができます。今回の記事では、まず地球温暖化の影響について説明し、その後、2012年と2022年の地表面温度のレイヤーを用いて、10年間で地球温暖化は進んでいるのかを明らかにします。最後に、日本とフランスにおいて地球温暖化の影響が特に顕著な地域を挙げていきます。

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天地人コンパスの使い方はこちらのnote記事をご覧ください。


地球温暖化の影響

「地球温暖化」という言葉自体は皆さんも馴染みがあると思いますが、いったい私たちの生活にどのような影響を及ぼすのでしょうか。IPCCの第5次評価報告書では、気温上昇にまつわるリスクとして、以下の8つのリスクが挙げられています。

1.高潮や沿岸部の洪水、海面上昇による健康障害や生計崩壊のリスク
2.大都市部への内水氾濫による人々の健康障害や生計崩壊のリスク
3.極端な気象現象によるインフラ機能停止
4.熱波による死亡や疾病
5.気温上昇や干ばつによる食料不足や食料安全保障の問題
6.水資源不足と農業生産減少
7.陸域や淡水の生態系、生物多様性がもたらす、さまざまなサービス損失
8.同じく海域の生態系、生物多様性への影響

出典:https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/1028.html


この記事では、上記のリスクについて詳しく見ていきたいと思います。
なお、地球温暖化が起こる原因についてはこちらのnote記事をご覧ください。

①天候・気候への影響

上記で述べた8つのリスクのすべてに関係しています。温暖化が進むことで、台風、ハリケーン、豪雨などの極端な気象現象が増加することが予想されます。

環境省の「勢力を増す台風」では、過去に起こった2つの台風(令和元年東日本台風、平成30年台風第21号)を例に挙げ、将来、世界平均気温が2度または4度上がった際の、台風の影響をシミュレーションしています。その結果、台風の中心気圧の低下、降水量の増加、風の威力の増加、河川の最大流量の増加、高潮リスクの高まりが指摘されており、これにより土砂災害や河川氾濫、建物への被害、農作物への影響、ライフラインの停止など、様々な被害が考えられます。

また今年の夏は、突然の大雨や雷に驚かれた方もいるかもしれません。実際の気象データを見ると、1時間に80mm以上といった強度の強い雨が、1980年ごろと比較して約2倍程度の頻度で発生していることが示されています。


出典:気象庁

https://www.env.go.jp/content/000147982.pdf
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/extreme/extreme_p.html

②水資源への影響

上記で述べた8つのリスクのうち、特に6がこちらに当てはまります。
海面上昇による沿岸部の浸水、また干ばつなどによる水不足が農業生産に悪影響を与えています。

例えば、南太平洋に位置する島国「ツバル」はサンゴ礁と環礁で形成されており、島の最高地点でも海抜5メートルほどと、海抜が非常に低い国です。温暖化による極地の氷の融解と海水の膨張により海面が上昇することで、「地球温暖化によって一番最初に沈む国」とされています。

また干ばつによる農業への影響はアメリカ南部、カナダ、南米、アフリカなど様々な国で見られ、食料問題や経済的な損失が予想されています。

https://www.foejapan.org/climate/justice/voice_tv.html
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1807B0Y1A810C2000000/

③健康への影響

上記で述べた8つのリスクのうち、特に1、2、4がこちらに当てはまります。
大雨による河川の氾濫や土砂災害は、川沿いや山沿いに住む住民に大きな影響を与えます。例えば、平成24年7月に起きた九州北部豪雨では、熊本県、大分県、福岡県で死者30名、行方不明者2名となったほか、1万棟を超える住家の損壊・浸水等が発生しました。

また温暖化による気温上昇で、熱中症リスクの増加が指摘されています。環境省のデータによれば、平成6年から令和3年にかけて、熱中症による死亡者の数(5年移動平均)は277人から1134人と大幅に増加しています。今後さらに気温が上昇することで、熱中症による健康被害が深刻になることが予想されます。


出典:環境省

https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/ame_chuui/ame_chuui_p4.html
https://www.env.go.jp/council/content/05hoken01/000092591.pdf

④生態系への影響

上記で述べた8つのリスクのうち、7、8がこちらに当てはまります。
多くの絶滅危惧種が地球温暖化によって引き起こされる気候変動の影響を受けると考えられており、その数は年々増加しています。

具体的には、2000年時点では10種程度であった絶滅危惧種が、2015年には約1,500種、現在(2024年7月)では7,040種となっています。生息する野生動物や植物の変化は、温暖化による影響をそれほど受けていなかった動植物にまで影響を与え、結果として生態系全体に悪影響を及ぼす可能性があります。

気候変動による影響を受けている動物として、よく例に上げられるホッキョクグマ以外にはジャイアントパンダ、スマトラオラウータン、アフリカゾウなどが挙げられます。


出典:WWF

https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/286.html

⑤社会・経済への影響

上記で述べた8つのリスクのうち、特に3、5、6がこちらに当てはまります。
1998年~2017年において、台風・干ばつなどの自然災害による経済損失額は世界全体で2兆9080億ドル(約330兆円)に上り、日本は世界で3番目に大きな被害を受けています。また国土交通省によると、令和元年度の日本の水害被害額は約2兆1800億円と、統計開始以来最大の被害額でした。

さらに、自然災害や生態系の変化による間接的な影響も指摘されています。例えば、干ばつによる農作物の生育不良や水害による物流輸送の停止は、原材料流通量の低下や商品価格の高騰といった経済面での影響を引き起こします。

https://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo03_hh_001056.html

天地人コンパスで見る地球温暖化

上記で述べたように、地球温暖化は私たちの生活に様々な側面で影響を及ぼします。

ここからは、実際に地球温暖化が起きているのかを衛星データを用いて見ていきたいと思います。地球温暖化の影響は地域によって異なりますが、今回は天地人コンパスに搭載されたレイヤーを用いて、2012年と2022年の日本とフランスの地表面温度に着目します。

なお気温と地表面温度の違いですが、気温が地上1.25~2.0mの大気の温度であるのに対し、地表面温度は地面や水面など地球の表面で直接測定される温度のことを指します。人工衛星では、物体が発する「赤外線」の量を測定することで、地表面温度の測定が可能です。

人工衛星による地表面温度の測定については、こちらの記事で詳しく解説しています。またこちらの記事では、2024年7月の日本の地表面温度をランキングにしています。今年の夏、どの地域で地表面温度が高かったのかについては、こちらのnote記事をご覧ください。

2012年6月下旬の日本の地表面温度は以下の通りです。
※これ以降の画像では、赤色であるほど地表面温度が高いことを表しています。


2012年6月下旬の日本の地表面温度 出典:天地人コンパス

東京、大阪、名古屋の地表面温度の高さが目立ちますが、ほかの地域は比較的過ごしやすい天気であったことが伺えます。

10年後の、2022年6月下旬の日本の地表面温度は以下の通りです。


2022年6月下旬の日本の地表面温度 出典:天地人コンパス

2012年の画像と比較して、首都圏の赤色が濃くなっています。また西日本と東北地方の南部では、オレンジ色の範囲が広がっていることが読み取れます。

続いて、2012年6月下旬のフランスの地表面温度は以下の通りです。


2012年6月下旬のフランスの地表面温度 出典:天地人コンパス

フランス南部で赤色が目立ちますが、全体的には黄色の範囲が多くを占めています。

10年後の、2022年6月下旬のフランスの地表面温度は以下の通りです。


2022年6月下旬のフランスの地表面温度 出典:天地人コンパス

2012年の画像と比較して、南部の赤色の範囲が広がっているとともに、北部も黄色からオレンジ色へと変化しています。

上記の画像比較からもわかるように、日本とフランスどちらにおいても、2012年より2022年の地表面温度の方が高いことがわかります。すなわち、10年間という短い期間で、日本とフランスの温暖化が進んでいるように見えます。

以降の内容は有料となります。
日本とフランスの中で、特に地球温暖化による影響を強く受けている地域はどこなのでしょうか!

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