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天地人が注目する今月の宇宙ニュース~ 衛星通信編〜Vol.20

天地人は、衛星データを使った土地評価コンサルを行っているJAXA認定ベンチャーです。
地球観測衛星の広域かつ高分解能なリモートセンシングデータ(気象情報・地形情報等)や農業分野の様々なデータを活用した、土地評価サービス「天地人コンパス」を提供しています。

Tenchijin Tech Blogでは、宇宙に関連するさまざまな最新情報を、天地人のエンジニア、研究者、ビジネスリーダーが一歩踏み込んで解説します。
天地人が注目した4つの海外ニュースを紹介します。

今回は、
AmazonのProject KuiperとNTT、スカパーJSATが提携、高度な衛星ブロードバンドを日本へ
NASAの大気波動実験、宇宙ステーションへの設置に成功
衛星インフラ構築時の通信パートナーの選び方
ファーウェイ、世界初の衛星接続搭載タブレットを発表
について取り上げます。

それぞれについて、天地人の専門家が、ニュースの注目ポイントや今後の動向を解説します。


1.天地人が注目したニュース4選!

ニュース1:AmazonのProject KuiperとNTT、スカパーJSATが提携、高度な衛星ブロードバンドを日本へ

NTT、NTTドコモ、NTTコミュニケーションズ、およびスカパーJSATは、AmazonのProject Kuiperとの戦略的な提携を本日発表しました。この協力により、日本において高信頼かつ広範な衛星ブロードバンドネットワークが展開され、通信の可用性とレジリエンスが向上します。NTTドコモはKuiperを活用し、山間部や離島などの難所にコアネットワークを拡充し、サービス提供エリアを拡大する計画です。企業や政府機関、自治体にとっては、Kuiperの導入により、これまでサービス提供が難しかった地域でのイノベーティブなソリューションやAWSクラウドサービスへのアクセスが可能となり、デジタル社会において競争力を一層高めることが期待されます。

出典:https://www.docomo.ne.jp/info/news_release/2023/11/28_01.html


ニュース2:NASAの大気波動実験、宇宙ステーションへの設置に成功

NASAの大気波動実験(AWE)が国際宇宙ステーション(ISS)へ設置され、11月20日に運用が開始された。このプロセスでは、ロボットアーム「Canadarm2」を使用して、ISSのEXPRESS Logistics Carrier 1にAWEを配置したものだ。AWEが収集したデータにより、大気重力波として知られる空気のうねりを追跡し、その物理学と特性、および衛星との通信に影響を与える可能性のある電離層に地球の天気がどのように影響するかを特定することがこのプロジェクトの目的である。

出典:https://scitechdaily.com/nasas-atmospheric-waves-experiment-successfully-installed-on-space-station/


ニュース3:衛星地上インフラ構築時の通信パートナーの選び方

衛星通信ソリューションの提供において数十年の経験を持つ南北アメリカのTelstraは、業界をリードする重要な役割を果たしてきた。そこで長年の経験を活かしTelstraは、衛星通信向け地上インフラの構築を支援する理想的なパートナーを選ぶ際の大事なヒントを述べた。そのヒントとはパートナーにおける、①経験と専門知識の評価、②地理的な理解と市場知識、③財務力とリソース、④協力的なアプローチ、⑤適切なネットワーク統合機能、⑥評判と信頼、⑦規制コンプライアンス、の7つであった。これらの要件に基づき、プロジェクトの要件と目的に合った通信パートナーを選ぶことで、効率的で信頼性の高い衛星地上インフラの強力な基盤を築くことに繋がっていくのである。

出典:https://www.satellitetoday.com/partner-content/2023/11/15/how-to-select-the-right-telecom-partner-when-building-satellite-ground-infrastructure/


ニュース4:ファーウェイ、世界初の衛星接続搭載タブレットを発表

HUAWEIは、衛星通信をサポートする世界初のタブレットであるMatePad Pro 11インチ2024年モデルを正式に発表した。11月28日に発表されたこのデバイスでは、ネットワークがカバーされていない、かつ、アンテナを追加していなくても、最大36,000km離れた高軌道衛星と通信を行い、ユーザーはメッセージを送信したり、位置情報を共有したりすることができる。この卓越した業績は、中国の北斗衛星通信システムと接続するタブレットの機能によって可能になる。

出典:https://www.newsbytesapp.com/news/science/huawei-introduces-matepad-pro-2024-model-specifications-availability/story


2.天地人はこう読む

以下では、本記事で紹介した4つのニュースがなぜ注目されているか、どんなトレンドが今後起こりそうかなど、天地人の専門家の見解を記します。
ニュース1,3は「通信衛星向けAIプロダクトの開発マネージャーである木村
ニュース2は「通信衛星の通信技術に精通するエンジニアである稲岡
ニュース4は「PRの砂流とNew Age Bolgのメイン執筆者の寺田
の見解を記します。

ニュース1:AmazonのProject KuiperとNTT、スカパーJSATが提携、高度な衛星ブロードバンドを日本へ

低軌道を周回する通信衛星コンステレーションに関しては、これまでもTenchijin Tech Blogで何度も取り上げてきました。
衛星通信分野におけるAmazonのインド進出に関する解説、地上局ビジネスを展開するAmazonに関する解説、AmazonとStarlinkの覇権争いに関する解説等、様々な観点で掘り下げていますので、ぜひご覧ください。

この分野で中心となっているのは、Starlink、OneWeb、Amazon等の欧米のプレイヤーです。既に打ち上げられた通信衛星数からみると、AmazonはStalinkやOneWebから一歩遅れている状況ではありますが、2023年10月には2基の衛星の打ち上げに成功しています。11月には、衛星の運用・通信テストを行い無事成功しました。
通信テストの様子を見ると、Kuiperの衛星通信を用いて、Amazon Prime Videoのストリーミング、Amazon.comでのショッピング、Amazon Chimeによるビデオ通話を実施しており、Amazon製品群を総動員したプロモーションとなっています。
現時点では実証レベルですが、2024年以降には製品レベルの通信衛星を打ち上げ、2024年内にも衛星通信サービスを展開する予定です。

StalinkやOneWebと比較したときのAmazonの強みは、Amazon.comに代表されるようにBtoCの巨大な顧客基盤を有していることです。さらに、人工衛星向け地上局ビジネス、AWSを中心としたリモートセンシングデータの分析・蓄積基盤群を背景に、BtoBの顧客基盤も盤石となっています。Kuiperによる衛星通信サービスをBtoC、BtoB向けにどのように展開していくのかが注目されます。

今回のニュースでは、AmazonがNTT・スカパーJSATと、Kuiperプロジェクトで提携をしたことがメインテーマになっています。この動きは、KuiperのBtoB販売戦略の一環であると考えられます。
プレスリリースを読むと、Kuiperによる衛星通信とAWSのクラウドサービスをセットにして、企業・政府機関・自治体へ提供するとのことです。

日本企業とStarlink、OneWeb、Amazonの提携の状況を見ると、

  • Starlink:KDDI、ソフトバンク、スカパーJSATと提携

  • OneWeb:ソフトバンクと提携

  • Amazon:NTTグループ、スカパーJSATと提携

となっており、BtoBでの衛星通信の提供において、日本の通信会社が代理店となっている様子が見られます。
まだ一般的ではない衛星通信サービスが今後、日本にどのように普及していくのか注目していきたいです。

余談ではありますが、10月にAmazonが打ち上げた通信衛星には、衛星間で光通信が可能な通信ユニットが搭載されており、光通信のテストにも成功したとのニュースがありました。
今後Kuiper Projectで打ち上げる通信衛星全てに、光通信ユニットが搭載されれば、民間による初の光通信コンステレーションが実現すると予想されます。光通信により低遅延、高速・大容量の通信が可能となり、Starlink・OneWebとは別の技術的な強みを有することとなります。

(解説:プロダクトマネージャー 木村)


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