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これからの宇宙開発は民間がアツい! という話

天地人は、2050年にも持続可能な地球環境を目指して活動するJAXA認定ベンチャーです。宇宙ビッグデータをWebGISサービス「天地人コンパス」で解析・可視化することで、まだ誰も気付いていない土地の価値や地球の資源を明らかにするサービスを提供しています。

天地人では、社員の学びを大切にしており、有志の勉強会が各チームで定期的に行われています。先日は、社内全体での学びの機会として、宇宙産業勉強会が開催されました。この記事においては、勉強会の様子や講演内容の一部を紹介していきたいと思います。


宇宙産業勉強会について

今回の勉強会は、天地人のオフィスにて対面で開催されました。その目的は、宇宙産業概況の学び直しにありました。天地人は衛星データを専門領域にしていますが、一括りに宇宙といっても、その領域は非常に幅広いものです。今後、宇宙業界を盛り上げていくプレイヤーとして、より積極的に宇宙について発信していけるよう、インプットの機会を設けました。当日は、外部からゲストをお招きして、1時間ほどご講演いただきました。宇宙産業のトレンド、宇宙ビジネスの注目領域や、地域での取り組み、宇宙とモノづくりとの関わりなど、内容は多岐に渡りました。後半には、社員とのディスカッション等も行われ、非常に有意義な時間となりました。

気になる初回ゲストは...?

今回ゲストとしてお招きしたのは、UchuBiz編集長の藤井涼さんです。藤井さんは、もともとCNET Japanの編集長として、長年テクノロジービジネスのトレンドを届けてきた方です。次のイノベーションとして宇宙に関心を抱いたことから、2023年度から、UchuBizの編集長として活躍されているようです。

講演中の藤井編集長

UchuBizは、朝日新聞子会社の「朝日インタラクティブ」が経営するメディアの一つです。日本企業の宇宙介入を後押しするメディアとして2021年12月に開設され、宇宙でいま何が起こってるのかを日々発信しています。JAXAや宇宙飛行士とのコラボ連載、オンラインイベントの開催、企業の新規事業メンバーへの講演等も行っているようです。

UchuBiz

宇宙ビジネスの今

ここからは、学生インターンの私が特に関心を抱いたパートである、宇宙ビジネスのトレンドについて紹介します。(以下の内容は全て講演内容に基づいたものであり、藤井さんから掲載許可を得ています。)

世界のトレンド

世界全体のトレンドとして、3つのキーワードが紹介されていました。一つ一つ解説していきます。

キーワード①: ITの巨人の台頭

出典:イーロンマスクとSpace X

一つ目が、IT業界の巨人が宇宙業界へ進出していることです。
PayPal創業者でありテスラCEOのイーロン・マスク、Amazon創業者のジェフ・ベゾスを筆頭に、IT分野で活躍してきた人たちが、次々と宇宙業界に参入しています。彼らが宇宙業界で存在感を放っている背景には、莫大な資金力を背景に、「再利用ロケットを発明したこと」があります。日本のH3ロケットも含め、ロケットは元々使い捨てが一般的で、スピード感が非常に遅くなったり、海に宇宙ゴミが落ちてしまったりと、コスト面や環境面で深刻な問題がありました。しかし、ブースターが戻ってくる「再利用ロケット」を彼らが発明したことで、地球にも宇宙にも優しい、高頻度な打ち上げが可能になりました。結果、IT業界の巨人たちの進出により、宇宙産業は活発化しています。

キーワード②:米中競争の過熱

出典:アルテミス計画のイメージ

二つ目が、米中競争の過熱です。2024年現在、ロケットの打ち上げや月探査は、アメリカと中国が先行しています。例えば、2023年の日本のロケット発射回数は2回ですが、米国の発射回数は約50倍の108回にのぼり、中国も68回発射しています。一昔前は、ロシア vs 米国の構図であった宇宙開発において、中国がここまで台頭してきたのは何故でしょうか?中国急成長の背景には、やはり米国とロシアの関係がありました。以下、簡潔に流れを説明します。
スペースシャトル「コロンビア号」の事故を大きなきっかけとして、米国ではスペースシャトルを最後に打ち上げた2011年以降、ロシアのソユーズロケットに宇宙飛行士の打ち上げを頼るようになります。しかし、NASAの宇宙開発が停滞している間に中国の宇宙開発が急成長し、月の裏側に史上初めて辿り着くレベルまで到達します。その状況に危機感を持ったトランプ政権は中国に対抗して再度宇宙開発に力を注ぎ、人類が約50年ぶりに月面着陸を目指す「アルテミス計画」も打ち出します。停滞していた米国で急ピッチで開発を進めていったのがイーロン・マスクで、2020年には、SpaceXの宇宙船「クルードラゴン」がISS到達に成功します。こうして、宇宙開発をロシアに依存していた状況を脱したわずか2年後に、ロシアがウクライナに侵攻します。結果的に、各国からの経済制裁等によってロシアの宇宙開発の勢いは落ちました。また、米国ではSpaceXに遅れながら、ボーイング社も宇宙船「スターライナー」のISSへの打ち上げに成功。ただし、ヘリウム漏れやスラスターの問題で帰還が大幅に遅れています。以上が、近年の宇宙動向の外観となります。大国同士の対立構図により、開発が進んでいくのは、今に始まったことではありません。ロケットや人工衛星の打ち上げ数も、この10年間で急激に増え、どんどん活発になってきています。

キーワード③: ポストISS

出典:国際宇宙ステーション(ISS)

三つ目が、ポストISS(国際宇宙ステーション)です。国際宇宙ステーションは、2030年には退役すると言われており、地球低軌道の開発は民間企業に譲っていく方針が明らかにされています。これによって、今までは政府や限られた企業だけに閉じていた宇宙が、民間に解放され、宇宙が本格的にビジネスフィールドとなる流れが起きます。世界の市場規模は、2040年には現在の2.5倍に近い1兆ドル(150兆円)くらいになると言われています。

日本のトレンド

日本の宇宙ビジネスは、今年になって本格的に研究からビジネスにシフトしており、今がアツいとのことです! 現状、宇宙ビジネスの観点では、日本は世界から遅れをとっています。世界でビジネスが急成長する中で、米中ほどの予算規模は日本の宇宙開発にはなく、研究開発のみを続けてきたためです。今後、オールジャパンで宇宙分野を成長させていくためには、民間企業を育てて、官民連携、国産化を進めていくことが必要となります。さて、日本のトレンドとしても、3つのキーワードが紹介されていました。

キーワード①: 宇宙開発で快挙

出典:小型月着陸実証機「SLIM」

一つ目が、開発の現場において快挙と言える成功事例が立て続けに起きていることです。去年までは失敗続きであった日本の宇宙ビジネスですが、今年は逆にずっと成功が続いています。月探査機「SLIM」が日本初の月面着陸を果たしたり、次世代基幹ロケット「H3」の打ち上げに成功したりと、最近は明るいニュースが増えてきています。

キーワード②: 政府が民間投資に本腰

二つ目が、民間投資の拡大です。「ビジネスシフト」の側面で、政府が民間投資に本腰を入れ始めています。JAXA基金とも言われている、10年間で1兆円を企業に投資するような宇宙戦略基金も、今年から開始されました。また去年から、SBIR(中小企業技術革新制度)という、ロケットや人工衛星など巨額の開発資金が必要なものを、政府が前払いしてくれるような制度も始まっています。
政府がこのように宇宙開発に力を注いでいる背景には、国際情勢の変化があります。ロシアのウクライナ侵攻の際に、衛星データが活用されたことが大きな契機となり、2023年に、「宇宙基本計画」のキーワードに安全保障や自立性などが追加されました。以前は外注に頼るオプションもあったようですが、インフラを外国に握られる恐ろしさを実感し、ロケットや衛星の国産化を急ぐために計画を進めている状況です。
世界の宇宙産業を見ると、官需・軍需・民需からバランスよくお金が入っているのですが、日本は今まで官需が9割と、歪な構造になっていました。今後、健全な状態に直していくためには、民間企業の参加や成長がやはり不可欠になってきています。現在、日本の宇宙産業は4兆円と言われているのですが、政府としては10年で8兆円まで伸ばしたいと考えているようです。

キーワード③: 日本ベンチャーの活躍

三つ目が、ベンチャー企業の活躍です。昨年から次々と上場しており、株価も上昇しています。アジアにおける宇宙ベンチャー数は日本が一番多く、事業領域も多岐に渡るため、今後の伸びに期待が高まっています。

まとめ

今回の記事は、宇宙産業勉強会の振り返り、一部内容の共有を行いました。当日は、様々な視点から宇宙産業の概況についてお話しいただき、大変勉強になりました。宇宙に関わる一人として、宇宙の今を発信できるように、社員一同、これからも学びを深めていきたいと思います。

UchuBizさんの詳細:​​https://uchubiz.com/

当日の様子

天地人では、衛星や地上の様々なデータとAIを活用して、課題解決に向けて情報分析、ソリューション提供を行っています。ご質問等ございましたら、info@tenchijin.co.jp までお気軽にお問い合わせください。

(記事作成:PRインターン 田嶋悠楽々)