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【特集】2045年に向けて急発進 ー 韓国の宇宙関連スタートアップの最新情報 ー

天地人は、衛星データを使った土地評価コンサルを行っているJAXA認定ベンチャーです。地球観測衛星の広域かつ高分解能なリモートセンシングデータ(気象情報・地形情報等)や農業分野の様々なデータを活用した、土地評価サービス「天地人コンパス」を提供しています。
Tenchijin Tech Blogでは、宇宙に関連するさまざまな最新情報を、天地人のエンジニア、研究者、ビジネスリーダーが一歩踏み込んで解説します。
天地人noteでは、過去9回に渡り、アメリカ欧州日本カナダインド中国アフリカ中南米オセアニア宇宙関連スタートアップを特集してきました。
今回はシリーズ第10回、韓国編です。


韓国の宇宙産業市場

韓国は2023年の国家予算で、国内宇宙産業の拡大、次世代ロケットの開発、宇宙防衛能力の強化のため、宇宙開発に8742億ウォン(約966億円)を投じる予定です。これは前年比19.5%増であり、韓国が宇宙開発に投じた予算としては過去最高額です。

ユン・ソクヨル大統領は2022年11月28日の演説で、今後5年間で政府の宇宙予算を倍増させ、2045年までに少なくとも100兆ウォン(約11兆円)を宇宙分野に投入すると発表しました。
加えて、2032年までに月に、2045年までに火星に宇宙船を着陸させるという目標を含む「宇宙経済ロードマップ」を宣言しました。
ユン大統領は、国家宇宙機関の設立を選挙公約に掲げており、2023年末に韓国航空宇宙局(KASA)を設立する予定です。さらに月探査用の国産ロケットを製造し、2032年までに月資源の採掘を開始する戦略を掲げています。

ユン大統領の「2045年宇宙経済ロードマップ」

  1. 月と火星の探査

  2. 宇宙技術大国としての飛躍

  3. 宇宙産業の育成

  4. 宇宙人材の育成

  5. 宇宙安全保障の実現

  6. 国際協力をリードする

実際に、2023年5月には初めて国産ロケット「ヌリ号」で実用衛星の打ち上げを成功させ、宇宙産業内での勢いをつけ始めました。

韓国製ロケット「ヌリ号」(KSLC-Ⅱ)予定通り発射 (出典:Yonhapnews)


韓国のSpace Tech市場

宇宙関連スタートアップの数は2021年時点世界で10,000社以上あるとされており、そのうち韓国の企業は61社です。ちなみに世界で一番多いのがアメリカの5,582社、日本は184社です。

しかし、ロケットの再利用によるコスト革新とGPS、通信などの分野で韓国での宇宙市場需要が高まっています。宇宙産業が次世代の成長動力として注目され、関連分野に参入するスタートアップが急速に増加しています。


出典:SpaceTech Analytics「SpaceTech Industry Landscape Overview 2021 Q3」

10年ほど前から宇宙企業に対する民間投資は増加の傾向にありましたが、規模や技術レベルは発展途上であり、2016年の韓国の投資額は4.19億ドルと、国別投資比率は0.2%に過ぎませんでした。今も少数の大企業とスタートアップを中心に宇宙産業を未来の先行投資として捉え、事業拡大を拡大しています。


スペーステックへの民間投資の国別割合(出典:韓国貿易協会国際貿易通商研究院、Trade Focus 2021年29号、「宇宙産業バリューチェーンの変化に伴う主要トレンドと示唆点」)

そこで2023年3月、韓国政府は民間宇宙新興企業を支援する基金設立を発表。韓国科学情報通信省によると、政府は2027年までに民間宇宙分野に投資するための500億ウォン(約55億円)の基金を設立すると明かしました。初期投資として50億ウォンを投じ、2023年中に100億ウォンのファンドを設立する見込みです。

韓国のSpace Tech注目企業

ここで、韓国で注目を集める宇宙関連スタートアップ4社を紹介します。
紹介するスタートアップはこちらです。

  1. INNOSPACE:2023年3月、ブラジルからサブオービタル・ロケットの打ち上げに成功

  2. UNA STELLA:StartUs社が発表した「世界の注目のスペーステックスタートアップ10選」

  3. KAIROSPACE:2023年5月、韓国で初めて打ち上げ成功した国産ロケット「ヌリ3号」で衛星を打ち上げ、衛星との通信に成功

  4. Lumir Inc.:KAIROSPACE同様、初の国産ロケット「ヌリ3号」で衛星を打ち上げ・通信に成功

INNOSPACE

http://www.innospc.com/main

INNOSPACEは、ロケット推進システムの専門家であるキム・スジョン博士(CEO)によって2017年9月に設立されました。航空宇宙および防衛の製造・エンジニアリング会社で、ハイブリッドロケットを開発し、スモールサット事業者に低コストで低遅延の信頼性の高い打ち上げサービスを提供しています。韓国ソウル近郊の世宗市に本社を置き、宇宙産業に最先端のイノベーションを提供しています。

INNOSPACEは、2023年3月にブラジルからのサブオービタル・ロケットの打ち上げに成功しました。この打ち上げでは、小型軌道ロケットの拡大を計画しているハイブリッド・モーターのデモンストレーションを行いました。

INNOSPACEの特徴は下記の通りです。

技術の高さと実行力: 
INNOSPACEの「HANBIT-TLVサブオービタルロケット」は、自社開発のハイブリッド・ロケットエンジンを使用しています。これにより、液体酸素とパラフィン系推進剤を利用して推進力15トンを実現しました。さらに、この成功を受けて小型軌道ロケット「Hanbit-Nano」の商業デビューを2024年に目指しています。


INNOSPACEが開発するエンジン(出典:INNOSPACE)

ブラジルやノルウェーとの協力・提携:
 INNOSPACEは、ブラジルの航空宇宙科学技術省(DCTA)と協力し、慣性航法システムを搭載したロケットを開発しました。また、韓国航空宇宙研究院や関連企業とも協力して、技術開発に取り組んでいます。さらに、ブラジルのアルカンタラ宇宙センターを5年間使用する契約を結びました。ノルウェーのアンドヤ宇宙港との交渉も進行中で、地域に合わせた打ち上げ場所を探しています。

INNOSPACEは、高い技術力と大胆な計画、国際的な協力と提携など、魅力的な要素を持つスタートアップ企業です。その取り組みは、宇宙産業における韓国の存在感を高めています。

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