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天地人が注目する今月の宇宙ニュース~衛星通信編~Vol.4

天地人は、衛星データを使った土地評価コンサルを行っているJAXA認定ベンチャーです。
地球観測衛星の広域かつ高分解能なリモートセンシングデータ(気象情報・地形情報等)や農業分野の様々なデータを活用した、土地評価サービス「天地人コンパス」を提供しています。

天地人が注目した4つの海外ニュースを紹介します。
今回は、 Amazonの衛星通信事業のインド進出、衛星通信事業者2社のMOU締結、光通信技術の基礎となる次世代LEDの研究、成層圏通信プラットフォームの構築など。

それぞれについて、天地人の専門家が、ニュースの注目ポイントや今後の動向を解説します。

天地人が注目したニュース4選! 

ニュース1:Amazonが衛星インターネット事業のインド進出を検討

Amazonの高速で手頃な価格の、衛星によるインターネットサービス「Project Kuiper」は、インド進出を検討している。インドは人口の大きさとインターネット普及率から、SpaceX社(米国のロケットサービス・衛星通信事業者)やOneWeb(英国の衛星通信事業者)など長年多くのハイテク企業がインターネットサービス展開開始を試みてきた国である。

出典:Amazon eyes bringing satellite internet business Project Kuiper to India, TechCrunch
https://techcrunch.com/2022/07/21/amazon-project-kuiper-satellite-broadband-india-launch/ 

ニュース2:OneWebとEutelsatがMOU締結

OneWebとEutelsat(フランスの衛星通信事業者)はMOU(基本合意)を締結した。Eutelsatの静止軌道衛星36基とOneWebの低軌道衛星648基を組み合わせることで、一貫した信頼性の高い接続を実現し、幅広い用途で顧客のニーズに応えるソリューションを提供することが可能になる。

出典:Bharti-backed OneWeb, French Co Eutelsat ink key pact to boost connectivity, The TIMES OF INDIA, https://timesofindia.indiatimes.com/business/india-business/bharti-backed-oneweb-french-co-eutelsat-ink-key-pact-to-boost-connectivity/articleshow/93132872.cms 

ニュース3:次世代の光通信・高効率ディスプレイの可能性を切り開くLED研究


中国の研究者らが、LEDのホール層間に依存する界面エネルギーに関する研究結果を発表した。この研究は、正孔層間に依存するデバイスの周波数に対する応答の違いを明らかにし、次世代の高効率ディスプレイや光通信による高速データ伝送に転用可能な、LEDの界面物理に新たな知見を提供する。

出典:Unlocking Next-Generation High-Efficiency Display and Optical Data Communication, AZo Optics,
 https://www.azooptics.com/News.aspx?newsID=27698 

ニュース4:Avealto社が成層圏通信プラットフォームの初期研究を完了

Avealto(英国の成層圏通信プラットフォーム構築会社)は、成層圏通信プラットフォーム(*1)の初期研究開発を完了し、4つの特許を申請した。現在、組み立てとテストを行うための土地を探しており、実現すれば、衛星通信よりも低コストかつ高品質で通信を提供できるようになることが期待される。

*1 気象が比較的安定している高度20km程度の成層圏に情報通信機材等を搭載した無人の飛行船を滞空させ、飛行船のカバー範囲内で超高速インターネットやマルチメディア移動通信を利用可能とするもの。引用:平成15年度情報通信白書

出典:Avealto Completes Initial Wireless Infrastructure Platform R&D, Files 4 Patents, FinancialContent
https://markets.financialcontent.com/stocks/article/marketersmedia-2022-7-26-avealto-completes-initial-wireless-infrastructure-platform-r-and-d-files-4-patents 

天地人はこう読む

以下では、本記事で紹介した4つのニュースがなぜ注目されているか、どんなトレンドが今後起こりそうかなど、天地人の専門家の見解を記します。

・ニュース1は、「国際開発コンサルタントの職務経験を持ち天地人で事業開発を担当している淺羽」の見解
・ニュース2は、「パリに拠点を置き、天地人事業開発マネージャーである浦部」の見解
・ニュース3は、「天地人において通信衛星向けAIプロダクトの開発マネージャーである木村」の見解
・ニュース4は、「JAXAと天地人を兼業する通信衛星開発・運用エンジニアである稲岡」の見解
を記します。

ニュース1:Amazonが衛星インターネット事業のインド進出を検討

Amazonのインド進出に際して、Amazonの持つ優位性、衛星事業を展開する理由と今後の展開の予測を解説します。

インドでは、デジタル・ディバイド(インターネットやコンピューターを使える人と使えない人との間に生じる情報格差)が問題となっています。

インドのインターネット普及率は、2022年06月の時点で約45%で、スマートフォンを所有しているのは、42%のみ(日本は2020年時点でインターネット普及率・スマートフォンの保有率ともに80%以上)です。男女間には、モバイル・インターネットの使用において50%の格差があると推定され、インドの都市部でさえ、インターネットを使用したことがあると報告した女性は2022年06月の時点で57%にすぎなかったのに対し、男性は74%でした。

インド政府は、2015年に国民がインド政府のサービスを電子的に利用することを目的とするキャンペーン(Digital India)を立ち上げましたが、デジタル・ディバイドの深刻さは、新型コロナウイルス感染症によって再認識される結果となりました。

新規感染者数がピークを達した時、同国の新型コロナワクチン管理プラットフォームCoWINのアプリを介して、オンラインで登録したのは全人口の40%のみでした。また、教育においても格差が認識されました。学校の臨時休業によって学習効果が急落したとき、高所得世帯のみが学習のギャップを埋めるためにEdTechやその他のオンライン教育プラットフォームを購入することができました。

そんな最中の2020年、Amazon創業者兼取締役執行会長ジェフ・ベゾス氏はインドを訪問し、2020年から2025年の間にインドへ10億米ドルを投資すると発表しました。投資の対象は、中小零細企業1,000万社のデジタル化、200億米ドル相当Eコマース輸出の促進と、インドで100万人雇用の創出です。

最近の報告によると、Amazonは中小零細企業400万社をデジタル化し、116万件の直接的・間接的雇用を創出し、50億米ドル相当のEコマース輸出を促進しています。これらの他にも、インドの環境・社会・経済へ著しく貢献しています(気候変動への誓約、イノベーション、金融包摂、持続可能性という追加フォーカスエリア等)。

これらの貢献により、現在、Amazonはインドで、数多くの賞と表彰を取得し、インドの顧客・従業員から最も慕われている会社の一つとなりました。

これが、インドでAmazonの進出が歓迎される理由です。

今回紹介するニュースでは、上記のAmazonのインドへの投資計画に加え、同社が衛星通信事業をインドへ展開する予定があることを紹介しています。
先にも述べたとおり、インドにおけるデジタル・ディバイドの問題は深刻で、Amazonの衛星通信事業は、その課題解決の一助となることが考えられます。
同社がインドやその他世界で、展開を検討しているProject Kuiperは、世界中のサービスが行き届いていない地域や十分にサービスを受けていない地域に手頃な価格のブロードバンドを提供することを目的とするサービスです。
農村部では光ファイバーやモバイル・コミュニケーションのインフラストラクチャーが整備されておらず、衛星インターネットビジネスが効率的に展開できます。

一方で、衛星通信事業を開発する競合他社には、Nelco社(インドの衛星通信サービスプロバイダー)、Reliance Jio社(インドの大手携帯通信事業者)、Oneweb社等がいます。これらの競合他社と比較したときに、Amazonの優位性はどこにあるのでしょうか。

Amazonは既存の事業と衛星通信事業を組み合わせながら、トータルでインド進出を目指していると推測できます。
前述したように2020~2025年にかけて、インドへ10億米ドルを投資する計画を発表しています。この投資計画では、Amazonの衛星通信事業以外の事業(例:Eコマース、アマゾン・ペイ、デリバリー&ロジスティックス、アマゾン・ウェブ・サービス事業等)を活用することが想定されています。
Amazonとしては自社の複数事業をかけ合わせることで、戦略的に衛星インターネット・サービスを展開するつもりなのではないかと考えられます。

<参考文献>
https://en.wikipedia.org/wiki/Digital_India 
https://development.asia/insight/casting-digital-net-wide-india
https://www.aboutamazon.in/impact 
https://www.aboutamazon.in/about-us/awards-recognition 
https://www.aboutamazon.in/what-we-do
https://www.jio.com/ https://telecom.economictimes.indiatimes.com/news/india-bets-on-satellite-broadband-to-bridge-rural-digital-divide/90530312 
https://techcrunch.com/2022/07/21/amazon-project-kuiper-satellite-broadband-india-launch/  

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