天地人が注目する今月の宇宙ニュース~リモートセンシング編~ Vol.11
天地人は、衛星データを使った土地評価コンサルを行っているJAXA認定ベンチャーです。地球観測衛星の広域かつ高分解能なリモートセンシングデータ(気象情報・地形情報等)や農業分野の様々なデータを活用した、土地評価サービス「天地人コンパス」を提供しています。
天地人が注目した4つの海外ニュースを紹介します。
今回は、
地震の災害状況を夜間光のリモートセンシングで分析
リモートセンシングを使ったリチウムペグマタイトの検知
水星探査でのリモートセンシングに向けた惑星類似体の解析
南アフリカ、独自の衛星レーダーを3年以内に打ち上げ
を取り上げました。
それぞれについて、天地人の専門家が、ニュースの注目ポイントや今後の動向を解説します。
天地人が注目したニュース4選!
ニュース1:中国武漢大学、トルコ地震の災害状況を夜間光のリモートセンシングで分析
国際衛星センター(UNOSAT)はトルコ地震の救護活動を支援するため、被災地域の緊急マッピングサービスを開始した。中国の武漢大学はリモートセンシングデータを活用して被災地域の夜間光マッピングを行いUNOSATにデータを提供した。マッピングは照明の減少率から被災地のインフラ損失の程度を示す目的がある。当初は震源に近い地域ほど被害が大きいと予想されたが地域によって耐災害能力が異なることが明らかになった。
出典:”Chinese scientists generate Turkish earthquake relief analysis for UN”, CGTN, 15 Feb 2023
https://news.cgtn.com/news/2023-02-15/Chinese-scientists-generate-Turkish-earthquake-relief-analysis-for-UN-1hrbM96zAnS/index.html
ニュース2:Gama社、リモートセンシングを使って新たに30以上のリチウムペグマタイトを検知
ペグマタイトとは、花崗岩が出来る過程で成長した大きな結晶の鉱石のことである。中でもリチウムペグマタイトには通常の鉱石からは採掘することが困難なリチウムが凝集している。衛星画像によって、最も長いもので600mにも及ぶリチウムペグマタイト岩脈が観測された。今年の夏には衛星画像で得られた情報を元にフィールドスタディが行われる。衛星画像(SPOT6)は1ピクセルが1.5mとかなり正確である。観測には可視光領域外の波長も利用されている。
出典:”Gama Identifies Over 30 New Potential Lithium Pegmatites on Muskox Lithium Project Using Remote Sensing Data”, ACCESSWIRE, February 13, 2023
https://www.accesswire.com/739061/Gama-Identifies-Over-30-New-Potential-Lithium-Pegmatites-on-Muskox-Lithium-Project-Using-Remote-Sensing-Data
ニュース3:水星探査機によるリモートセンシングに向けた惑星アナログの解析
国際水星探査計画「ESA/JAXA BepiColombo計画」にMERTIS (赤外線分光撮像器) が搭載される。水星での探査に向けて、水星の表面や堆積物、マントルの組成を元にして合成したアナログ物質の中赤外波長領域の分光スペクトルのデータベースを作成している。水星だけでなく、月、金星、火星のアナログ物質のデータベースの作成も進んでいる。光学顕微鏡法、ラマン分光法、および EMPA 、中赤外域、 FTIR 分析によって特徴を調査している。
出典:Keith Cowing, ”Mid-infrared Spectroscopy Of Planetary Analogs: A Database For Planetary Remote Sensing”, ASTROBIOLOGY, February 20, 2023
https://astrobiology.com/2023/02/mid-infrared-spectroscopy-of-planetary-analogs-a-database-for-planetary-remote-sensing.html
ニュース4:南アフリカ、SARを搭載した独自の地球観測衛星を3年以内に打ち上げ
南アフリカ科学産業研究評議会 (CSIR) は、インフラや作物のモニタリング、災害管理などに役立つリモートセンシング技術を搭載したSAR衛星を2025年を目途に打ち上げる予定と発表した。SARの開発を管理している CSIRと、南アフリカの民間企業であるDragonfly Aerospace と SCS Spaceがこのプロジェクトに加わる。Dragonfly Aerospaceは衛星バスの開発を、SCS Spaceは衛星開発のコンサルティングを行う。
出典:Jonathan Katzenellenbogen, “Launch of SA’s own radar satellites could take place in three years”, defence Web/ Mar 6, 2023
https://www.defenceweb.co.za/aerospace/aerospace-aerospace/launch-of-sas-own-radar-satellites-could-take-place-in-three-years/
天地人はこう読む
以下では、本記事で紹介した4つのニュースがなぜ注目されているか、どんなトレンドが今後起こりそうかなど、天地人の専門家の見解を記します。
ニュース1:中国武漢大学、トルコ地震の災害状況を夜間光のリモートセンシングで分析
ニュース1の解説では、「エンジニアと事業開発の両部門で活躍する宮崎」の見解を記します。
2023年2月6日(UTC)、トルコ南部において、マグニチュード7.8と7.5の地震が発生しました1)。
都市が大規模な地震に見舞われた場合、発電所設備の故障や家屋の倒壊等により、広域的な停電が発生し、被災前に比べ夜間の光の強度が減少することがあります。人工衛星はこうした夜間の都市の光を俯瞰的にとらえることができるため、光の強度が減少した「被災地域の可能性の高いエリア」を迅速に特定し、支援活動に役立てることができます。
本解説では、ニュース1で取り上げられた中国の人工衛星「SDGSAT-1」について紹介します。
SDGSAT-1:SDGSAT-1は2021年11月5日に中国が打ち上げた科学衛星で、観測幅は約300 km、回帰日数は約11日です。この人工衛星は、マルチスペクトルセンサ(Multispectral Imager)、熱赤外分光放射計(Thermal Infrared Spectrometer)、超高感度カメラ(Glimmer Imager)の三つを搭載しています。
このうち、超高感度カメラからは夜間の光の強度に関する情報を、10 mの空間分解能で取得することができます2)。一般に広く利用される夜間光画像(空間分解能 数百m~数km程度)と比較すると、SDGSAT-1のセンサが非常に高い分解能を有していることがわかります。
人工衛星から観測した「夜間光」は、地域の社会経済活動を示すデータの一つです。画像の高分解能化が進み、被災状況の把握だけではなく、その復旧・復興過程も詳細に可視化することが可能です。今後も衛星観測データを利用した各種プロダクトの防災・減災活動への活用が期待されます。
参考文献
1) USGS web site, https://www.usgs.gov/news/feured-story/m78-and-m75-kahramanmaras-earthquake-sequence-near-nurdagi-turkey-turkiye (Accessed: March 15, 2023)
2) CBAS web site, http://www.sdgsat.ac.cn/ (Accessed: March 15, 2023)
以降の内容は有料となります。
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この後もニュース2,3,4それぞれに対し天地人の専門家の解説を記します。
ニュース2とニュース4は、「天地人において通信衛星向けAIプロダクトの開発マネージャーを務める以前は、自動車分野でのコンサルティング経験のある木村」の見解、ニュース3は「天地人エンジニア兼元JAXA 宇宙ロボット開発・運用エンジニアである上田」の見解をそれぞれ記しています。
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