天地人が注目する今月の宇宙ニュース ~リモートセンシング編~Vol.5
天地人は、衛星データを使った土地評価コンサルを行っているJAXA認定ベンチャーです。地球観測衛星の広域かつ高分解能なリモートセンシングデータ(気象情報・地形情報等)や農業分野の様々なデータを活用した、土地評価サービス「天地人コンパス」を提供しています。
天地人が注目した5つの海外ニュースを紹介します。
今回は、海洋汚染、森林火災、水源探索のリモートセンシングや、アフリカのリモートセンシング市場、保険会社によるリモートセンシングを取り上げました。
それぞれについて、天地人の専門家が、ニュースの注目ポイントや今後の動向を解説します。
天地人が注目したニュース5選!
ニュース1:海洋保護用のAI衛星リモートセンシングプラットフォーム発表
ジーリーホールディングスグループ(中国の大手自動車グループ)は、海洋保護用のAI向け衛星データプラットフォームを立ち上げた。プラスチックや油の流出、生態系のバランスの崩れなど、さまざまな海洋廃棄物を衛星で発見・特定することができる。収集されたデータは学術機関、科学研究機関、環境部門などの専門部門に開放される予定。
出典:Geely, ZEEKR, CEPF launch Blue Guardian AI satellite data platform for marine protection, Automotive News, https://autonews.gasgoo.com/china_news/70021120.html
ニュース2:衛星で金融機関の融資リスク評価をサポート
中国平安保険グループ(中国の大手保険会社)は、地球観測光学リモートセンシング衛星の打ち上げに成功した。リモートセンシングにより、サプライチェーンの上流から下流までの実際のオペレーションデータを把握することができる。零細・中小企業への融資業務の安全性向上において重要な役割を果たすことが期待される。
出典:Successful launch of PingAn-3 satellite empowers inclusive finance, © 2022 Benzinga.com, https://www.benzinga.com/pressreleases/22/08/n28579546/successful-launch-of-pingan-3-satellite-empowers-inclusive-finance
ニュース3:アフリカの衛星・宇宙産業の評価額は約2.8兆円
Space in Africa(アフリカに焦点を当てた宇宙分野の分析・コンサルティング会社)が実施した調査によると、アフリカの衛星・宇宙市場を約200億ドル、2.8兆円と評価し、2026年にはさらに16%成長すると予測した。小型衛星を中心に民間企業の参入が進み、政府も財政投資を増加させている。
出典:The African space + satellite industry is now valued @ Billion$$, StanNews, https://news.satnews.com/2022/08/16/the-african-space-satellite-industry-is-now-valued-billion/
ニュース4:衛星データが森林火災の範囲を特定
DLR(ドイツ航空センター)が森林火災監視システムのオンライン提供を開始した。火災の発生した場所だけでなく植生への影響も特定可能で、被害を特別な指標で分析するできる。DLRは2016年以降のすべてのヨーロッパの火災を分析している。
出典:Fire monitoring from space: satellite data shows the extent of the forest fires, California18, https://california18.com/fire-monitoring-from-space-satellite-data-shows-the-extent-of-the-forest-fires/6362852022/
ニュース5:水資源管理の大学と政府の共同研究
オーストラリアで水の新たな知見を引き出すために、大学と政府が密接に連携した研究が実施された。水資源監視ネットワークの改善に注目した世界をリードする研究が行われ、NASAの衛星を利用して水が地形を通過する仕組みを明らかにするものも含まれる。
出典:Research unlocks power of data in water management, The National tribune, https://www.nationaltribune.com.au/research-unlocks-power-of-data-in-water-management/
天地人はこう読む
以下では、本記事で紹介した4つのニュースがなぜ注目されているか、どんなトレンドが今後起こりそうかなど、天地人の専門家の見解を記します。
・ニュース1は、「海洋汚染のリモートセンシング分野で研究を行った経験を持つエンジニアの佐々木」の見解
・ニュース2は、「事業開発を担当し、さまざまな業界の企業に対し宇宙ビジネスコンサルの経験を持つ上村」の見解
・ニュース3は、「途上国開発の職務経験を持ち、事業開発を担当している鳥海」の見解
・ニュース4は、「環境分野での職務経験を持ち、事業開発を担当している立石」の見解
・ニュース5は、「水分野で研究を行い現在JAXA研究員でもある小川」の見解
を記します。
ニュース1:海洋保護用のAI衛星リモートセンシングプラットフォーム発表
記事で明かされた内容から、ほかの海洋汚染対策と比較した技術的優位を見つけることは難しく、今回の発表は、これから海洋汚染専用のデータプラットフォームを立ち上げるという発表で「社会喚起」を意図した発表だという印象を受けました。
現状の技術では海洋汚染といっても赤潮、油流出などの局地的な汚染でないと検出は難しいです。一般的な汚染レベルの海洋ゴミの検出は研究段階にあります。特に汚染地域としては中国から流出するゴミが東アジア域では支配的なため、学術機関への研究サポートや技術開発推進を目的としたプラットフォームである可能性が高いと考えます。
記事には、収集されたデータは学術機関、科学研究機関、環境部門などの専門部門に開放される予定とありました。環境保護団体と連携しているようなので、環境保護団体からローカル(海上で取得した汚染実態)のデータを取得できるのではないかと考えられます。
今後の期待される活用として、海上で取得した汚染実態のデータとリモセンデータを組み合わせてプラットフォーム上で可視化するようなシナリオを想定していると思われます。特に、海洋汚染のデータはローカル(海上で取得した汚染実態)のデータ取得が難しいため、それらの双方のデータが一つのプラットフォーム上で利用できるのは大きな強みかと思います。
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