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天地人が注目する今月の宇宙ニュース~リモートセンシング編~Vol.7

天地人は、衛星データを使った土地評価コンサルを行っているJAXA認定ベンチャーです。地球観測衛星の広域かつ高分解能なリモートセンシングデータ(気象情報・地形情報等)や農業分野の様々なデータを活用した、土地評価サービス「天地人コンパス」を提供しています。

天地人が注目した4つの海外ニュースを紹介します。
今回は、

・山火事リスク低減のための森林マッピング技術
・米国国防省による地球規模の気象データ取得
・リモートセンシングによる移住者のためのGISデータ向上
・極域全体の地形図の提供

について取り上げます。

それぞれについて、天地人の専門家が、ニュースの注目ポイントや今後の動向を解説します。

1.天地人が注目したニュース4選!

ニュース1:山火事リスク低減のための森林マッピング技術

ネバダ大学リノ校の研究チームは、カリフォルニア州森林保護防火局(CAL FIRE)およびカリフォルニア大気資源局との共同研究により、山火事になりやすいカリフォルニア州の広大な森林植生のモデリングとマッピングを行っている。リモートセンシング技術を用いて広大な土地で植生と燃料がどのように変化しているかを理解し、火災リスクの低減や炭素貯留、水質改善を目的とした燃料管理の最適化を目指している。

出典:Big data modeling, forest fuels mapping aids in mitigating catastrophic wildfire risk, NEVADA Today,
 https://www.unr.edu/nevada-today/news/2022/forest-fuel-mapping


ニュース2:米国国防省、地球規模の気象データ取得を目指す

米国国防省イノベーションユニット(DIU)は、民間のデータプラットフォームから高解像度の地球規模の気象データを取得することを検討しており、プロトタイプを開発する企業5社を選定した。試験運用で収集された選定企業らのデータは、米国政府が運営する観測システム・シミュレーション実験に利用される予定であるほか、米空軍が作戦を実行する際の運用モデル群の改善に使用される可能性がある。

出典:U.S. DIU selects five prototypes to improve global weather sensing, Electronics Weekly.com,
https://www.electronicsweekly.com/news/u-s-diu-selected-five-prototypes-for-improved-global-weather-sensing-2022-10/


ニュース3:リモートセンシングで全世界の移住者のためのGISデータ向上を目指す

国際移住機関(IOM)は、GISデータによる情報提供を行い、避難民の追跡や、避難所のリスク分析などを行っている。課題である信頼性が低い地域のGISデータ収集や、リアルタイムでの高解像度の画像の収集が課題であるが、リモートセンシング技術を用いた解決が目指されている。

出典:GIS Data is Indispensable for UN Migration Agency, GIM INTERNATIONAL, 
https://www.gim-international.com/content/article/gis-data-is-indispensable-for-un-migration-agency


ニュース4:極域全体の地形図が気候変動の研究に繋がる

ミネソタ大学の研究者らは、8年前の極域の高解像度画像データに、新たに4年間分の解像度50cmの衛星画像を追加公開した。画像をもとにデジタル標高モデルを作成し、南極全体を完全にカバーする詳細な地形図を提供した。今年の冬には北極バージョンもリリース予定であり、長期にわたる気候変動の影響について新たな知見の獲得が期待される。

出典:High-Res Maps Of Entire Polar Regions Provide Clues For Climate Researchers, Clean Technica, 
https://cleantechnica.com/2022/10/30/high-res-maps-of-entire-polar-regions-provide-clues-for-climate-researchers/


2.天地人はこう読む

以下では、本記事で紹介した4つのニュースがなぜ注目されているか、どんなトレンドが今後起こりそうかなど、天地人の専門家の見解を記します。

ニュース1:山火事リスク低減のための森林マッピング技術

ニュース1の解説では、「環境分野での職務経験を持ち天地人でビジネス開発を担当している立石」が、山火事の発生メカニズム、および森林火災にリモートセンシング技術を利用することのメリットについて、見解を記します。

山火事の発生メカニズム
今年も世界各地で多発している山火事ですが、そのメカニズムは自然発火によるものと、人為的なものの2種類があります。

自然発火する要因としては、高い気温、乾燥、落雷が挙げられており、乾燥状態の落ち葉が高温な状態では、落ち葉同士の摩擦により火が起きることがあります。
また、人為的な原因では、主に焚火、農作業における火入れ、放火が多くを占めています。

このように様々な原因で発生する森林火災ですが、実は全ての火災がニュースで見るような大規模な災害に発展するとは限りません。

大規模な森林火災は、火災の発生場所周辺における樹木の種類・高さ・密度・地形などが最悪の条件で適合した結果、木から木へと連鎖的かつ急速に燃え広がることで発生してしまうのです。

森林火災にリモートセンシング技術を利用することのメリット
今回のネバダ大学の研究では、このような大規模な森林火災における潜在的リスクを様々な観点から解析しつつ、森林が燃焼するポテンシャルの把握と対策を行い、森林管理の最適化に大きく貢献できるものだと考えます。

ただし、このような解析を行うとなると、長期的な時間軸で多種多様なデータを広範囲で取得することが必要となり、人力では困難な上、膨大なコストを要してしまいます。

そこでこれらの問題を解決するためには、衛星データの活用は不可欠であると思います。

衛星データでは、森林火災のポテンシャルを把握するための樹種・樹高・密度の情報を算出することができるだけでなく、過去のアーカイブデータからこれまで発生した森林火災のデータ検証もできるという大きなメリットがあります。

その上、コストが削減できる点や、昨今注目されているカーボンニュートラルの点でも、観測における炭素排出量を従来の手法と比較して数十分の一に抑えることができます。これらのメリットが、衛星活用の大きなインセンティブです。

これまで、森林火災における衛星活用では、森林のモニタリングや火災発生後の被害状況把握のための活用が多く見られました。しかし今後は、衛星データを用いて気候変動影響を加味した森林の最適化に注目が集まりそうです。

ここでいう「森林の最適化」とは、気候変動などによる変化(気温上昇、大雨などによる森林火災や土砂災害)に対する適応策と、カーボンネガティブや生物多様性保全などの緩和策の両面における森林管理の適正化を意味しています。

例えば、杉のみの人工林が多く分布している日本の森林は、炭素吸収の観点では非常に優秀なのですが、生物多様性がないことや、土砂災害が多く起きてしまうことなどの問題があります。

今後は衛星データを活用し、このような状況を理解して起こりうる環境変化を踏まえた上で、植林や伐採などにより最適な森林を作っていくことが重要になると思われます。


以降の内容は有料となります
(この記事のみ購入する場合は、200円です。月に3~4記事が月額500円になるサブスクリプションプランもご用意しております。)

この後もニュース2,3,4それぞれに対し天地人の専門家の解説を記します。
・ニュース2は、5つの企業の注目ポイントや新規性、米国軍の動きが国際情勢へ与える影響に関する見解を
・ニュース3は、リモートセンシング導入の目的と国際機関が利用する利点を
・ニュース4は、極域の研究と気候変動の研究の関係性や、今回追加されたデータの新規性、および画像から地形図を作る難しさを
それぞれ記しています。

天地人へのご質問・記事に関するご感想・記事の内容のリクエスト等ございましたら、info@tenchijin.co.jp までお気軽にお問い合わせください。

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