「衛星データ×○○」の可能性を探る!毎月開催の天地人主催イベント紹介
天地人は、衛星データを使った土地評価コンサルを行っているJAXA認定ベンチャーです。地球観測衛星の広域かつ高分解能なリモートセンシングデータ(気象情報・地形情報等)や農業分野の様々なデータを活用した、土地評価サービス「天地人コンパス」を提供しています。
今回の記事では、天地人が無料で月1回開催してきたオンラインイベントについてお伝えします。
「衛星データや宇宙ビジネスに興味はあるけど、いきなりイベントに参加するのもハードル高いな」と参加をためらっている方や、「そもそもイベントの存在を今初めて知った!」という方も、この記事を読んでいただければ、きっと興味を持っていただけるはずです。
天地人主催イベントとは
天地人主催イベントは、宇宙ビッグデータの可能性や、天地人が持つ技術力を知っていただくため、2022年6月から毎月1回、オンラインで開催しているイベントです。
テーマは毎回異なるものを設定しています。ときには外部の方を招いて登壇していただき、天地人メンバーとディスカッションも行います。
過去8回のテーマと登壇者はこちらです。
社会インフラ、森林、保険・金融、教育、環境問題、食といった多岐にわ
たるテーマで、衛星データとのつながりについてお届けしてきました。
また、なかなか参加することが難しい海外の宇宙系企業の展示会の様子をお伝えするイベントも行いました。
本記事では、前半で先月行われた「衛星データを活用した持続的なお米づくりと、データがつなぐ食体験」のイベントレポートを、後半で過去2回のイベントの要点を、「衛星データ×他業界」に注目し、ご紹介していきます!
1. 1月イベント「衛星データを活用した持続的なお米づくりと、データがつなぐ食体験」レポート
イベント概要
ここからは、1月のイベントの様子をお届けしていきます。
今回のイベントのテーマは「衛星データ×お米」でした。
天地人は、「宇宙ビッグデータ米」というお米を、米卸の株式会社神明、農業ITベンチャー株式会社笑農和と協業して栽培し、販売しています。
宇宙ビッグデータ米は、お米の生産者の高齢化や減少に伴う今後の供給力への懸念や、気候変動などの影響による生産量減少の予測といった、「お米が足りなくなる」ことへの危機感から、将来的なお米の生産増につながる農業施策として誕生しました。
宇宙ビッグデータ米の栽培地は、天地人の土地評価エンジン『天地人コンパス』を活用し、地表面温度、降水量、日射量のデータから、神明の独自品種の栽培最適地を日本全国から探すことで決定されています。
今回はその宇宙ビッグデータ米つながりで、お米、農業、フードテックに関連したイベントテーマになっています。
私は天地人の学生インターンなのですが、大学では農業や情報科学とは全く異なる分野を勉強しています。そのため、「いったいお米と衛星データでどんな話が展開されるんだろう?」とあまり想像つかないまま、参加してみました。
登壇者紹介
天地人主催イベントの司会進行は、天地人の事業開発リーダー・上村 遥子さんです。
今回のイベントは、上村さんの「今日はお米の話ということで、夕食は生姜焼きにして、炊飯スタートのボタンを押してまいりました!」という明るい挨拶からスタートしました。
イベントでは、天地人含め3企業の方が登壇してパネルディスカッションが行われました。
まず一人目の登壇者は、象印マホービン株式会社の栗栖 美和さんです。
栗栖さんは、象印マホービンの新事業開発室サブマネージャーをされていて、ごはんソムリエの資格を取得されたほどの「ごはん好き」。
ちなみにごはんソムリエとは、「ご飯の主原料の米に関する様々な知識、炊飯の科学や技術、ご飯の栄養、衛生管理に関する知識を持ち、美味しいご飯を評価する為の正しい官能検査の方法を修得していることを認定する資格」だそうです。
ごはんの美味しさをジャッジする資格なんてものがあるんですね。
栗栖さんは、イベント前半で「“おいしいごはんを未来にのこす”ために象印が取り組むごはんイノベーション」というタイトルで、象印マホービンの取り組みについてお話ししてくださいました。
栗栖さん:「象印マホービンは調理家電の製造・販売を主な事業としていて、なかでも炊飯ジャーの売り上げが大きな割合を占めています。ですが、現在の日本では、お米農家が減少し、お米の消費量自体も減少してしまっています。もはや『主食=ごはん』が当たり前ではなくなっていて、ごはんを中心とした食文化消失の危機に陥っているんです」
確かに、私は朝はパン派で昼はパスタ、お米を食べるのは夜だけ、みたいな日がよくあります。思ったよりお米を食べていないかも、と気づかされました。
栗栖さん:「私もそうですが、象印には『ごはんが好きだから』という理由で入社した人がとても多いんです。象印社員の使命として、ごはん食文化を守りたい!そんな思いから、おいしい炊飯ジャーの開発だけでなく、おいしいごはんを気軽に食べられる飲食店の出店や、試食で食べきれなかったごはん再活用の取り組み、スマート農業を取材した動画の配信など、多角的な取り組みを通して、ごはん好きを増やすことを目指しています」
続いて、株式会社神明の古満 考雄さんです。
古満さんがいなければ、宇宙ビッグデータ米は生まれなかった、大事なキーパーソンです。
株式会社神明は、生産者の方々からお米を購入して精米し、消費者の食卓に届ける、国内大手の米卸企業です。
その中で古満さんは、生産地の多様な課題に対して新しいサービスを提供する、農産開発室のマネージャーをされています。
最後に、天地人CEOの櫻庭 康人さんです。
櫻庭さんは、年末に美味しいものが食べたくなり、宇宙ビッグデータ米を象印さんのイチオシ炊飯ジャー「炎舞炊き」で炊いて、すき焼きと一緒に食べることで、幸せを噛み締めていたそう。
また、櫻庭さんはイベント前半で宇宙ビッグデータ米の取り組みについてお話しされました。
ここからは、お米との関わり方がそれぞれ異なる3名の登壇者の方々と、司会の上村さんによる、熱いパネルディスカッションの様子をお伝えします。
パネルディスカッション
テーマ1:お米の力とは?
上村さん:「お米の消費が減少している現状で、日本や世界で注目されているお米のチカラとは?」
古満さん:「お米は他の穀類の主食の中でも、たんぱく質、ビタミンが豊富で最高の食品といわれています。また、2013年に和食が無形文化遺産に登録されましたが、和食は健康的で栄養バランスが良いイメージがありますよね。それを支えているのは、いろんな食材に合わせて食べられるごはんだと思います」
栗栖さん:「お米は味が濃い料理でなくても合います。脂肪分が少ない食材も合うので、健康的な食事になりやすいです。また、食物繊維が多いので、主食の中では比較的ゆっくり身体に吸収されることも魅力です」
櫻庭さん:「宇宙ビッグデータ米に携わらせていただいて、お米の種類や炊き方によって全然味が違うことを知りました。神明さんのおにぎり屋さんで食べたおにぎりが衝撃的に美味すぎて、これはちょっとお米をテキトーに炊いたり、お米を選んでいることは人生でめちゃくちゃ損していることなんだなと」
上村さん:「櫻庭さんのような、いち消費者の視点があるからこそ、お米の生産量や消費量が減っているのは勿体無いなと感じますよね。天地人は普段、食卓に身近な事業をやっているわけではないですが、だからこそ宇宙目線でもう一回スポットライトを当てて、皆さんが大事に思う食材を持続可能なものにする方法を考えていきたいです」
お米のプロたちが語るお米の良いところを聞いていたら、無性にご飯が食べたくなりました。
やはり日本人にとってお米が足りなくなることは、重大な問題ですね、、、
テーマ2:今後の持続的なお米づくりと、データがつなぐ食体験について
上村さん:「気候変動や温暖化が美味しいお米を作るハードルを上げてきている現状で、今後の持続的なお米づくりと、データがつなぐ食体験について、これからどうなっていくと思われますか?期待も含めて皆さんの意見を聞かせてください」
このテーマ2では、短時間でたくさんの意見が飛び交い、皆さんのお米への愛が感じられました。
栗栖さん:「現状では、お米にかかわる各企業が狭い範囲の事業しか行っておらず、分業になっています。だからこそ、天地人さん、神明さん、笑農和さんの取り組みは、すごく意義のあることだと思います。また、実際に農家さんに取材に行くと、『食べてもらって美味しいって言ってもらうだけですごく嬉しいんだよ』とか、『お客さんがどんな炊き方してるかわからなくて飲食店に聞きに行ったりしてるんだよ』とお伺いします。象印としては、消費者の声を生産者の方に伝えるミッションがあるのかなと想像しているところです。古満さんはどうですか?」
古満さん:「生産者の方とお話ししていてよく思うのは、最近生産者の方から直接ネットでお米を購入する消費者の方がすごく増えていることですね。今までお米はスーパーで買っていたものが、今ではネットでいろいろな種類を選んで買うことができる。お米の選択肢が増えたので、お米の購入動機は細かくパーソナライズされてきているのではと思います。しかし、実際にその情報を農家の方が取得できる環境は整っていません。そこをうまく繋ぎ合わせて、お米の消費量を増やすことや、栽培方法に付加価値を加えることに繋げられると良いですよね」
上村さん:「確かに、例えばシニアが増えている地域周辺で食べやすいお米の需要が高まっている場合があったら、その情報を生産者側に伝えて、生産者側も栽培方法を少しずつ変えていけたら良いですよね。ただ、人の手だけで行うのはかなり大変だと思いますので、そこで衛生データやIoTの力を使えば、生産量や作り方を次の世代の在り方に変えていけると思います」
栗栖さん:「先日農家さんから伺ったところによると、精米の仕方が変わり、お米の水分量が昔よりも減ってきていて、新米だからお水を少なくして炊くという今までの常識が、もうそうとは限らないこともあるみたいです。農家さんおすすめの炊き方なども、提供していけたら面白いかなと思っています」
上村さん:「あと、データは地産地消にも使える気がします。例えば秋田や新潟で、地元ではなくて南の方の県でとれたお米を食べている場合もあるかもしれません。今後のお米の持続可能性を考えると、もっといろいろアイデアは出てきそうですね」
栗栖さん:「あと1時間くらいお話ししたいですね」
テーマ3:気になるフードテクノロジー
上村さん:「お米に限らず、食糧の未来が不安視されています。フードテック、フードイノベーションという言葉をよく聞くように、いろいろな技術が出てきていると思います。そこで皆さんが、この技術はこれから結構面白くなりそうだぞ、と気になる技術はありますか?」
古満さん:「最近、食と健康について興味を持っています。病気にならない体づくりを考えたときに、運動だけではなくて食事も大事な要素の一つであると思います。そこで、1週間などの単位で自分の健康状態が把握できて、健康状態に合った献立を提供できるサービスがあったら、社会的に意義のあるものになるんじゃないかなと思っています」
上村さん:「ヘルスケアと食は、間違いなく繋がってくるところだと思います。最近は冷凍の技術や、フードロスなども含めて、健康と絡めたプロダクトやサービスもありますよね」
栗栖さん:「私は大学で気候変動を少し勉強していたことがありまして、気候変動と食でいうと、代替タンパクの進化がどんどん進んでいるなと思います。ここ数年はスーパーなどでもたくさん売られていますが、それに対して、調理のサイエンスがどのように入っていくのか気になります」
上村さん:「代替タンパクって、、、コオロギとかですよね?」
栗栖さん:「コオロギもありますね。コオロギをすごく美味しく調理する家電やレシピも、あと10年くらいしたら普通に出てきそうですよね」
櫻庭さん:「私が興味があるのは、やはり衛星データなんですよね。神明さんと取り組ませていただいている宇宙ビッグデータ米が良い形になってきて、お米だけじゃなくていろんな作物でもできると思ってますし、まだまだお米の可能性もたくさんあると思っています。その辺の妄想しているのが1番楽しいかもしれないです」
上村さん:「そうですよね、今やっぱり衛星データがアツいなと思ってまして。現在人工衛星は1万機以上飛んでますが、今後さらに打ちあがっていくと、地球の状況をより細かく、多様なデータがとれるようになります。そして一次産業への活用がもっと進んで、お米だけじゃなく、いろいろな食材を救う手立てになると思っています」
まとめ
パネルディスカッションの他に、参加者からの質問に登壇者が回答する時間も盛り上がり、イベントは1時間を少しだけ超えて終了しました。
一次産業には今まであまりデータサイエンスが入り込んでいなかったからこそ、データを活用することで、食の社会問題を解決する糸口がたくさん生まれるのではないかと感じました。
あまりなじみのない分野のイベントでしたが、大変勉強になり、おもしろかったです!
続いては、過去の2つのイベントをピックアップして、それぞれでどのように「衛星データ×他業界」の繋がりがあるのか、要点をご紹介します!
以降の内容は有料となります。
(この記事のみ購入する場合は、200円です。月に3~4記事が月額500円になるサブスクリプションプランもご用意しております。)
記事に関するご感想・記事の内容のリクエスト等がございましたら、info-note@tenchijin.co.jpまでお気軽にご連絡ください。
ここから先は
¥ 200