データセンターの適地選定を天地人コンパスでやってみよう!〜誰でも無料で使えるWebGISサービス〜
天地人は、2050年にも持続可能な地球環境を目指して活動するJAXA認定ベンチャーです。宇宙ビッグデータをWebGISサービス「天地人コンパス」で解析・可視化することで、まだ誰も気付いていない土地の価値や地球の資源を明らかにするサービスを提供しています。
『今日から使える宇宙豆知識 by JAXAベンチャー天地人』では、宇宙に関連するさまざまな最新情報を、天地人のエンジニア、研究者、ビジネスリーダーが一歩踏み込んで解説します。
今回の記事では、これからますます役割が増えていくデータセンターについて、その特徴と重要性を解説すると共に、天地人コンパスを用いた適地選定までを実際に行っていきます。
データセンターの重要性
データセンターに関する話題として、近年GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)が日本国内でのデータセンターへの大規模投資を予定していることが挙げられます。例えば、Googleは今年までの4年間で千葉県に新しいデータセンターを新設したり、Microsoftも今後2年間で東京に研究拠点を設立する計画を発表しています。サービスの提供側として、そのニーズが高まっていることが伺えます。
また、サービスの利用側である日本国内におけるデータ量の増加も加速しています。新型コロナウイルスの影響により、リモートワークやオンラインサービスの利用が急増したことで、通信量が大幅に増加しています。より多くの人がデータ通信を行う場合、より多くのデータセンターが必要になります。これによりデータセンターの需要が急増しているのです 。
上記2点、サービスの利用側の需要に、提供側が供給力で応じる動きがあることから、日本でのデータセンター建設が一気に盛り上がりを見せていると言えます。しかし、これらデータセンターの建設には、いくつかの重要な要件を満たす必要があります。それらを満たす土地ではない限り、データセンターの機能になり得ないのです。本記事の後半では、その適地選定について詳細に紹介します。
参考
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240415/k10014422131000.html
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/semicon_digital/0002/03.pdf
そもそもデータセンターって何?
ここまでデータセンターの重要性について紹介してきましたが、そもそもデータセンターとは何なのでしょうか。端的に説明すると、データセンターとは、「大量のデータを保管・処理・管理するための施設」で、インターネットやクラウドサービスの基盤を支える重要な役割を担っています。
データセンターの中には、さまざまな種類の機器が設置されており、それぞれが特定の機能を果たしています。まず、データセンターの中心的な役割を果たすのが「サーバー」です。サーバーは、データの処理や保存を行うコンピュータで、数百から数千台がラックに収められて運用されています。これらのサーバーは、高速なネットワークで接続されており、大量のデータを迅速に処理・転送することができる仕組みになっています。
次に「ストレージ機器」です。ストレージは、データを長期的に保存するための装置であり、ハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)などが使用されます。これらのストレージ機器は、大容量かつ高信頼性を持ち、重要なデータの安全な保存を確保しています。
さらに、データセンターには「ネットワーク機器」も多数設置されています。ルーターやスイッチは、データの送受信を管理し、ネットワークのトラフィックを最適化する役割を果たします。また、ファイアウォールや侵入検知システム(IDS)などのセキュリティ機器も重要で、データの保護とセキュリティの維持を行っています。
データセンターの運用には、これらの「機器を冷却するための設備」も必要不可欠です。サーバーやストレージ機器は稼働中に大量の熱を発するため、冷却システムを用いて温度を管理し、機器の安定した動作を維持します。空調設備や冷却水の配管などがこの役割を担い、データセンター全体の温度を適切に保っています。
また、データセンターは停電などの非常事態に備えるため、無停電電源装置(UPS)や非常用発電機などの「バックアップ電源」を備えています。これにより、電力供給が途絶えた場合でも、重要なデータとサービスの継続が保証される仕組みとなっています。
このように、データセンターは多種多様な機器とシステムが一体となり、大量のデータを効率的かつ安全に処理・保存するための基盤が構築されています。現代の情報社会において、データセンターはその重要性がますます高まっているといって良いでしょう。
参考
https://www.nttpc.co.jp/column/data_center/data_center.html
データセンターの適地はどういうところ?
これまで紹介してきたように、データセンターにはさまざまな機能が集約されています。では、これらの機能を満たすデータセンターの場所とはどんなところなのでしょうか。データセンターが安全かつ効率的に運用されるために不可欠な要素を、順を追って説明していきます。
1. 安定した電力供給が可能な場所
データセンターは大量の電力を消費するため、安定した電力供給が可能な地域が求められます。電力供給が不安定な地域では、停電や電力不足によるシステム停止のリスクが高まり、データセンターの信頼性が低下するからです。したがって、電力会社との長期契約や再生可能エネルギーの利用も含めた、安定した電力供給体制の確立が重要です 。
2. 自然災害への耐性
日本は地震や台風などの自然災害が多発する地域であるため、データセンターの適地選定においては、これらの災害に対する耐性が重要となります。耐震設計が施された建物や、洪水や津波のリスクが低い場所を選定することが求められます。具体的には、山間部や高台など、災害リスクが相対的に低い地域が適しています 。
3. 高速なネットワーク接続
データセンターは、大量のデータを迅速に送受信する必要があるため、高速なネットワーク接続が必須です。主要なインターネットバックボーン(ネットワークの中枢部分)に近い場所や、光ファイバーの敷設が容易な地域が望ましいとされています。また、複数の通信キャリアとの接続が可能な地域を選定することで、通信の冗長性を確保し、通信障害時のリスクを低減することができます 。
4. 冷却環境
データセンター内の機器は稼働中に大量の熱を発するため、適切な冷却環境が必要です。冷却効率を高めるためには、冷却水の安定供給が重要です。具体的には、冷却システムに使用する水道水の安定供給が確保できる地域を選定する必要があります。また、自然冷却を活用できる冷涼な気候の地域も、冷却コストを削減する観点から適しています 。
5. 人材の確保
データセンターの運用には、高度な技術を持つ専門家が必要です。そのため、IT関連の人材が豊富な地域や、技術者の確保が容易な都市部が望ましいとされています。また、地域の教育機関や研修施設と連携することで、人材の育成や確保を図ることも重要です。
6. 環境規制と地域社会
データセンターの建設にあたっては、環境規制や地域社会との関係も考慮する必要があります。特に、大量の電力消費や水使用に対する規制が厳しい地域では、データセンターの運用に支障をきたす可能性があります。そのため、地域の環境規制に適合した運用計画を立てることが求められます。また、地域社会との協調を図り、持続可能な運用を実現することも重要です。
以上のような条件を満たす地域が、データセンターの適地として選定されるべきです。多くの項目を満たす場所こそが、データセンターの安全かつ効率的な運用が可能となり、信頼性の高いデータ処理・保存が実現される場所といえます。
参考
https://www.mc-digitalrealty.com/blog/2
https://ent.iij.ad.jp/articles/6386/
https://project.nikkeibp.co.jp/bpi/atcl/column/19/081600410/
https://www.gizmodo.jp/2023/09/microsoft-water-usage-ai-iowa-data-center.html
天地人コンパスでデータセンターの適地選定をしてみた
それでは、今までの説明を参考に、今回は天地人コンパスを用いてデータセンター適地選定を行いたいと思います。天地人コンパスには類似度分析機能がありますが、データセンターはセキュリティの観点から住所が非公開となっています。そのため今回はデータセンターの適地項目のいくつかに絞って検討してみたいと思います。
主に検討する点
・洪水・津波リスクがあるか
・人材が集まりやすい場所か
・データセンターとして利用可能な土地か(現状の土地利用状況や土地の起伏など)
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