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天地人が注目する今月の宇宙ニュース~ リモートセンシング 編~Vol.9

天地人は、衛星データを使った土地評価コンサルを行っているJAXA認定ベンチャーです。地球観測衛星の広域かつ高分解能なリモートセンシングデータ(気象情報・地形情報等)や農業分野の様々なデータを活用した、土地評価サービス「天地人コンパス」を提供しています。

天地人が注目した4つの海外ニュースを紹介します。
今回は、 Googleによるインドのデジタル農業、米国環境保護庁の研究資金提供、光学分野の新技術、宇宙×農業への注目の高まりなど。

それぞれについて、天地人の専門家が、ニュースの注目ポイントや今後の動向を解説します。

天地人が注目したニュース4選!

ニュース1:Google、インドでデジタル農業実現へ

インドは広大な土地に対し小規模農家が多く、農業イノベーションに必要な情報を集めることが困難という課題に直面。Googleは、リモートセンシング技術に加え、高度なAIの機械学習能力を用いてインドの農業を全体的に理解するのに役立つモデルの開発を発表した。作物の種まきや収穫の時期など、各圃場特有のイベントを検出することも可能になる予定だ。
出典:Google for India 2022: Driving impact with AI across Indian languages, the agricultural ecosystem, and digitizing your doctor's penmanship (Building foundational innovations toward the vision of Digital Agriculture in India) , google India Blog, https://blog.google/intl/en-in/company-news/inside-google/google-for-india-2022-ai-announcements/ 

ニュース2:アメリカ合衆国環境保護庁、環境技術開発のため25の中小企業に研究資金を提供

アメリカ合衆国環境保護庁は、メタン排出を検出する技術、食品の保存期間を延長し食品廃棄物を削減する方法など、差し迫る環境問題に対処する技術を開発する25の中小企業に対し、250万ドルの研究資金を提供することを発表した。企業らは、最高10万ドルの資金で6ヶ月間の実証実験を行い、その後さらなる開発と商業化のための40万ドルの資金を申請することができる。出典:EPA Awards Research Funding to 25 Small Businesses to Develop Environmental Technologies, https://www.epa.gov/newsreleases/epa-awards-research-funding-25-small-businesses-develop-environmental-technologies 

ニュース3:誰も見たことのない破壊的な新技術:メタオプティクス

人間の目の能力をはるかに超えるものを見る光学(オプティクス)分野の研究が急成長している。偏光や位相など、人間の目では検出できない光の特性へのアクセスを可能にし、さらには、量子イメージング、リモートセンシング、通信に利用可能な光の量子状態の設計、操作、利用も可能になると推測される。
出典:Meta-Optics: the disruptive technology you didn’t see coming,EurekAlert,  https://www.eurekalert.org/news-releases/975205 

ニュース4:新たな「スペース・クラスター」計画が始動。農業技術が別の惑星へ

宇宙技術を利用した農業テックに注目が集まっている。宇宙技術は、農業における予測、自動化、意思決定を支援することができる。Agreed(気候テックのスタートアップ)は、食料生産に欠かせない窒素の利用効率を高めるために衛星データを活用する助成金を受け取った。
出典:AgriTech on a different planet as new ‘space cluster’ plans take off, Business weekly, https://www.businessweekly.co.uk/news/agriculture/agritech-different-planet-new-%E2%80%98space-cluster%E2%80%99-plans-take

天地人はこう読む

以下では、本記事で紹介した4つのニュースがなぜ注目されているか、どんなトレンドが今後起こりそうかなど、天地人の専門家の見解を記します。

ニュース1は、「途上国開発の職務経験を持ち、事業開発を担当している鳥海」の見解を記します。

ニュース1:Google、インドでデジタル農業実現へ

インドは14億人を超える人が暮らしており、2023年中には中国を抜いて世界一の人口になることが予想されています。

労働人口の40%強は第一次産業に従事していて、その多くは農村部に住んでいます。また、世界銀行はインド農村部の貧困率を11.6%と推計しており、改善傾向にはあるものの世界平均(9%程度)と比べて依然高い水準となっています。

地方農村部の特徴として、小規模農家が多いことから個々の農地は小さいことが挙げられます。
一方で、地方政府は十分な人材がいないため、少ない人員で広大な範囲を管轄しなければならず、全ての営農活動を把握することは難しい状況にあります。更に、インドは原則として農業から得た収入に課税されないため、政府として営農活動を詳細に把握するインセンティブが働きにくい状況となっています。

このような現状を打開するため、第二次モディ政権は農業セクターへの予算を倍増しており、農業分野の研究促進や、テック系企業の農業分野への参入を推奨しています。

Googleによるこちらの記事も、この流れの一つとして位置づけられるのではないでしょうか。リモートセンシングを活用して耕作地面積や営農作物、収穫状況などを把握することにより、政府は生産高や食料自給率、貿易収支などの統計情報を把握することが容易になります。営農に必要不可欠となる農業用水を確保するための灌漑ネットワークや、農作物を市場へ輸送するために必要となる道路ネットワークを効果的に計画することにも役立つでしょう。

更には、人口増加に伴う都市化は、既存都市の周辺にある農地が真っ先に開発される傾向があるため、農地の情報管理は都市の開発傾向を管理することと表裏一体の関係にあると考えられます。

最後に、包括的な農地情報は、スタートアップを始めとしたテック系企業が、農業分野へ参入する際の基本情報としても有効に活用されることが期待されます。
地方部における農業分野への参入障壁として、現地の耕作地面積や営農作物、年間収量などの基本情報が乏しいため、ビジネス計画が立てにくいことが考えられます。
この情報へアクセスできれば、今まで明らかになっていなかったインド農村部の現状を把握することができ、土壌分析や種子開発、マイクロファイナンスなど、農業振興には欠かせないサービスが更に活性化することが期待されます。


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ニュース2は、「国際開発コンサルタントの職務経験を持ち、天地人で事業開発を担当している淺羽」の見解、ニュース3は、「農業を専門に学び、天地人ではファームを担当する岡田」の見解、ニュース4は「天地人において通信衛星向けAIプロダクトの開発マネージャーである木村」の見解を記します。

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