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組織の成長を阻む二つの有害な文化

「無謬性と事なかれ主義がもたらす組織の停滞」

組織やサービスの成長機会が失われる主要因として、「無謬性」と「事なかれ主義」という二つの有害な組織文化が挙げられます。
これらは密接に結びつき、組織の健全な発展を著しく阻害しています。


無謬性

まず、無謬性がもたらす組織の機能不全について考えてみましょう。
組織において「誤っていないという考え」は「成功も失敗も理解出来ない」ため、深刻な負の連鎖を生み出します。

「自分たちは間違えない」という思い込みに囚われると、成功の本質的な要因を分析することも、失敗から教訓を得ることも困難になります。
なぜなら、「行動した結果は必ず成功している」と片付けられ、失敗は「例外的な外的要因」として処理されるためです。
これは主に学生が陥りがちな非常に稚拙な考えです。

例えば、プロジェクトが成功した際も、「我々は頑張ったから成功した」と安易に結論付け、どのような工夫や努力、あるいは幸運な要素が重なって成功したのかを丁寧に検証する機会を逃してしまいます。
一方、失敗していることを理解できないため、失敗はなかったものとして進み続けます。
深刻なのは、時間の経過とともに「失敗を見ない目」が組織文化として定着していくことです。
仮に失敗が起きたとしても、「外部環境が悪かった」「予期せぬ事態が発生した」と、外に原因を求め、自らの判断や行動を振り返ることができません。

このように、無謬性は組織の学習能力を著しく低下させ、同じ失敗を繰り返す一方で、成功要因も適切に把握できないという悪循環を生み出します。

問題が複雑化・複合化すると、解決にかかるコストは増大し、最悪の場合、組織やサービスの存続自体が危ぶまれる事態に発展する可能性があります。

さらに、失敗から得られるはずの教訓が適切に抽出・共有されないため、同様の失敗が繰り返され、組織の適応力と競争力は著しく低下します。

本質的な組織の成長は、謙虚に自らの判断や行動を見つめ直す勇気から始まります。

事なかれ主義

状況をさらに深刻化させるのが、無謬性への執着と結びついた「事なかれ主義」です。
事なかれ主義は現代の日本人にとって平和ボケの象徴ともいえます。

「慎重な判断」という美名で必要な変革が先送りにされ、「調整」という名目で責任の所在が曖昧になり、「全員一致」を重視するあまり、革新的なアイデアが抹殺されるという事態も発生します。

「無謬性」と「事なかれ主義」が結びつくと、人は何が正しいかを自ら判断できなくなります。
無謬性は、自分が間違っていないという思い込みから、他者や自分の過ちを認めようとしない姿勢を強化します。
一方で、事なかれ主義は対立や問題を避け、表面的な平和を維持するために深く考えることや決断を避ける態度を促進します。
この二つが結びつくと、どちらの選択が正しいか、どの行動がより適切かを見極める力を失い、結果的に何も変わらないまま、問題が放置されていくことになります。

改善のために

これらの問題を解決し、組織の健全な成長を促すためには、以下のような施策が必要です。

  1. 失敗を「学習の機会」として適切に捉える文化の醸成

  2. 早期警戒と問題提起を推奨する制度の確立

  3. 経営層による「失敗を認める勇気」の実践

  4. 透明性の高いコミュニケーションの推進

  5. 建設的な議論を促す心理的安全性の確保

  6. 意思決定プロセスの透明化

  7. 評価システムの再構築

真の組織の成長は、失敗を恐れず、それを糧として学習し、継続的に改善していく勇気から始まります。
無謬性と事なかれ主義を克服し、失敗から学ぶ文化を育てることこそが、組織の持続的な発展への鍵となるのです。

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