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「すうどんでっせ」

 「すうどんでっせ」。ワイルドな名前に引かれて買ったカップ麺。1960年代初めのころ、大阪では「かけうどん」ではなく「すうどん」といったものだ。お好み焼きも、イカ、肉などのトッピングはなし、生地は卵を混ぜないタイプで、「素焼き」と呼んだ。それでも子供のころに食べた、すうどんや、素焼きの「おふくろの味」ならぬ、「大阪の味」は忘れられない。

女性雑誌から取材

 この二つの味は我流ながら研究したが、とりわけうどんには思い出がある。20代前半、東京での独り暮らしが慣れたころ、講談社の「若い女性」という女性雑誌の企画「独身男性の自炊」の担当記者に取材された。何かのアンケートで答えた「得意料理は関西風うどん」が編集者の目に止まったらしい。

緊張のインタビュー

その雑誌の出版社の敷地内で女性記者の質問を受けた。答える度に、カメラマンがシャッターを切る。フラッシュの輝きが眩しい。さらに緊張感が高まる。何と答えたかまったく覚えていない。

「関西人やさかい」??

やがて書店に並んだ掲載誌。恐る恐る開いた。「僕は関西人やさかい、寒い日の関西風うどんはたまりまへん」。こんなこと言ったかな?

「やさかい」

特に「やさかい」の言葉は普段でも使ったことがなかっただけに、相当な違和感を覚えた。でも抗議もしなかった。その後、この女性雑誌の「やさかいねつ造」事件、すっかり忘れていたが、「すうどん」のカップ麺が忘却の彼方から、蘇らせた。


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