見出し画像

【FC東京】2024年シーズンレビュー

遅くなったが2024年シーズンの簡単な振り返りをしておきたい。

不本意な戦績

2024年シーズンは難しいシーズンだった。2022年に着任したアルベル監督が2023年シーズンを半分終えたところで解任、そのあとを受けたクラモフスキー監督の2年めになったわけだが、クラブとしてなにを目指し、どこをねらうかあまりはっきりしないまま開幕を迎えた感があった。

補強としては鹿島からレンタルで荒木を、新潟から高を、札幌から小柏を、ドイツからは元横浜FMの遠藤を獲得、積極的な強化を行った。前年のメンバーの主力も残留して十分戦えるメンバーがそろっており、少なくともタイトル争いに参加できる程度のベースは整えた。前年半年の助走を経てクラモフスキー監督の真価が問われた。

シーズン前半を8勝5敗6分、勝ち点30(1試合あたり1.58)の6位で終えたが、シーズン後半は負けが先行、9月から10月にかけて5試合負けなし(4勝1分)で勝ち点を稼いだ時期もあったものの、7勝9敗3分で勝ち点24(1試合あたり1.26)と振るわず、シーズン通して15勝14敗9分で勝ち点54(1試合あたり1.42)で7位に終わった。

松木、荒木、野澤大、バングーナガンデらがパリ・オリンピックを含むU23代表招集などで稼働できなかった期間があったほか、松木は7月に海外移籍、織り込み済みとはいえむずかしい舵とりを迫られたことは否めない。また期待された小柏が離脱をくり返して5月から7月はまったく出場できなかったことも響いた。

基礎教養は向上したが

以前から強度一辺倒でゲームプランがうまく行かなかったときのプランBがないと揶揄されていたクラモフスキー監督だったが、自陣からしっかり組み立てる、当てて落として飛ばす、トランジション重視、ゲーゲンプレスからのショートカウンター、ポジショニング、少ないタッチでボールを動かすなど、現代フットボールの基礎教養というか基礎体力みたいなものを落としこもうという意志ははっきりしていたし、その面での前進は確かにあったと思う。

いいときにはしっかりパスがつながりながらスピード感のある押し上げができてフィニッシュまで行けるが、一方で敵のしつこいプレスにハメられたり、一発で裏を取られたりすることも多く、戦いぶりが安定しないまま3歩進んで2歩下がるをくり返したシーズンだったという印象。落としこみに時間がかかり、チーム戦術が成熟するところまで行けなかったということだと思う。

こうした基礎教養を重視する点においてはアルベル監督もクラモフスキー監督も大差ないと思っていて、その意味ではここ3年の取組にニュアンスの変化はあっても大きな断絶はない。今のチーム構成がこうした現代フットボールに合っていないとも思わないし、方向性が間違っているわけではもとよりない。ただ、それを実戦に落としこむ方法論が十分でなかったのではないか。

尻すぼみのシーズン

戦績からいえば11月に3連敗したのが痛く、このうちどれか1試合でも勝てていればクラモフスキー監督続投もあったのではないかと思っている。戦略担当として鳥栖の前監督である川井健太あたりを招聘しヘッドコーチに据えれば、クラモフスキー体制3年目でタイトルをねらう目はあったと思うが、シーズンが尻すぼみで終わったことで9・10月の好調があだ花に終わってしまったのは残念だ。

たらればになるが、11月の3試合のうちひとつでも勝てていればシーズン最後の9試合を6勝2敗1分、最終の勝ち点57(1試合あたり1.50)となり、ヴェルディを上まわって6位でフィニッシュできていたはずだった。シーズン後半の戦績も8勝8敗3分と勝敗を五分にできていたのだ。優勝争い(町田)、残留争い(湘南、磐田)をしているクラブとの対戦となり、それを上まわる危機感がもてなかった。

味スタで勝てなかった

やるべきことはリセットではなく継続であり上積み。国立競技場でのホームゲーム開催もあって興行的には好成績を挙げたが、肝心のフットボールでは中途半端な結果しか残せなかった。東京という恵まれた後背商圏をもちながら、その商業的なアドバンテージを本業であるフットボールに還元できず、ともに東京都を本拠地にする町田やヴェルディ東京の後塵を拝することになったのは失策だったというほかない。

また本来のホームグラウンドである味の素スタジアムでわずか3勝しかできなかったこともサポーターのフラストレーションとなった。このことがクラモフスキー監督のもとで取り組んでいるフットボールの声価を必要以上に毀損したことは否めない。ときとして説明のつかないジンクスのようなものに囚われるのは勝負の世界ではよくあることだが、それを過剰に意識してしまうとネガティブなイメトレとして呪いになる。

この試行錯誤の結果を2025年に

そうしたことも含め、2024年シーズンはいろいろな意味で歯車がかみ合わず、ちぐはぐで不安定、中途半端で実態以上にイメージの悪いシーズンになってしまった。俵積田や野澤大、安斎、土肥、岡ら若手の台頭、仲川や遠藤が見せてくれた戦う姿勢など、来季への手がかりもあったが、取組を成果に結びつけることのできなかったシーズンだった。

さいわい主力が残留、来季に向け規模は大きくないものの補強も的確にできている。2024年の試行錯誤の意味や価値は2025年の戦いで示すしかない。アルベル監督、クラモフスキー監督とともに少しずつ積み上げてきたベースのうえに、どんなピースを上積みするのか、2024年シーズンをムダにしないために、松橋監督の下でしっかりした準備をしたい。

いいなと思ったら応援しよう!