憧れのベイ・シティ・ローラーズ / タータン・ホード

画像1

■ 憧れのベイ・シティ・ローラーズ
■ タータン・ホード
1975 東芝EMI
[7”]

1970年代に一世を風靡したベイ・シティ・ローラーズというアイドル・グループがあった。スコットランドのエディンバラ出身ということでタータン・チェックの衣装を身にまとい、音楽的には意外と正統派のブリティッシュ・ポップを歌って本国イギリスでも日本でも大変な人気を博した。

このシングル盤はそのベイ・シティ・ローラーズの作品ではなく、ローラーズ人気に便乗して1975年にリリースされた企画モノ。タータン・ホードと名乗るナゾのアーティストが、「Bay City Rollers, we love you」と歌う他愛のないポップ・チューンであるが、恐ろしいことにこれもそこそこのセールスとなり、日本でも国内盤が発売されたのみならず、ジャニーズ・ジュニア・スペシャルによるカバー・バージョンまで出てしまった。芸能界というのは怖いところだ。

そんなキワモノの7インチを中古盤屋で見つけ買ってしまったのは、このタータン・ホードの正体が他ならぬニック・ロウだからである。そう思って聴けば、声色はアイドルっぽく寄せているもののボーカルは明らかにロウだし、キワモノのわりに曲としてしっかりまとまっているのも合点が行く。

この曲はニック・ロウの拾遺集である「The Wilderness Years」というコンピレーション・アルバムに収録されているが、シングルのフリップ・サイドに収められているカラオケはこの盤で初めて聴いた。ジャケットは傷んでいるが盤の方は針飛びもなく、たしか500円ほどだったと思うが、ニック・ロウのファンならまあ押さえておくよねということで迷いなく買った。

当時、ロウは所属していたバンド、ブリンズリー・シュワルツが解散したあと、スティッフ・レコードのハウス・プロデューサーとなっていたが、契約上の事情でとにかく何かレコードを出す必要があった。必要があったからといってローラーズ讃歌とは思いきったものだと思うが、それが事実上ロウの初ソロ作品になってしまったわけである。

この盤がいったい日本で何枚くらい売れたのかわからないが、だれかがベイ・シティ・ローラーズの作品と間違って買ってしまい、時を経て売り飛ばされたのか。たぶんその人はニック・ロウなんて名前も知らなかっただろう。それが発売から50年近く経って僕の手許に落ち着いたのもなにかの縁。曲が悪くないのがなにより値打ちのある点。

いいなと思ったら応援しよう!