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2024.07.01 1/2の確率

あれ、来ないやん。
ジャマイカとスロバキアのハーフの同僚が、一向に事務所に到着しなかった。
今日は一緒に外国人警察署に言って、一時居住許可証を申請予定だ。
ビザ申請所に関わらず、一切英語が通じない窓口に1人で行くのは暴虎馮河と言える。

即座に連絡を取り、事務所最寄りの路面電車の停車場で落ち合った。
今朝実家のあるトレンチンから、電車で帰ってきた。しかし、車内にカバンを忘れ、探しに回ったら遅れたようだ。確かに、大きなリュック、布の肩がけ鞄、コートと荷物が多い。

30分間のトラムと、20分のバス。
徐々に街から離れ、田園風景へと移り変わった。道中、お互いのプロジェクトの話やこれまでの経歴などを話した。事務所では、私と彼女の2人で一室を使っている“フラットメイト”だが、これほど長時間話をしたことはなかった。

ちょうど警察署近くの停車場に着いた時、小雨が降りはじめていた。
悪天候の中、スロバキアの国旗が描いてあるヘリコプターが飛び、物珍しそうに中東系の男性がスマホを空に掲げた。その目の前に、外国人警察署があった。案外、こじんまりとした建物だった。数年前までは予約システムが存在せず、申請をするのに深夜0時から夜通し並び、次の日の順番を待つしか方法がなかったらしい。畦道を眺めながら、暗闇の中人々が並ぶ姿を想像した。なんとも旧共産国主義的な絵だ。

私は渡航1週間前に、スロバキア人同僚に数多なる個人情報を送り、予約をしてもらった。5月初旬に予約し、最短で7月頭。それでいて、提出書類は90日以内に発行したものでないと無効。日本では、出発までには間に合うけど、発行日は渡航日ギリギリを目指して準備してきた。

緊張していた。
イギリスの書類に公証はない。他にも、何か指摘され受け取ってもらえなかったら、次いつ予約が取れるか分からない。

電光掲示板に手元の番号が映され、扉を潜るとブースが並んでいた。
一番奥の左側が私の場。透明の仕切りの奥には、椅子に収まらないほどの大柄のおじさまが鎮座していた。咄嗟に、ズートピアに出てくるチーターを思い出した。側から見たら、この絵そのものだっただろう。

運よく、人柄の良さそうな方が担当してくれた。とてもおしゃべりで、付き添いの同僚と終始話をしていた。「notary(公証)」と知っている単語が出てきて、書類を指さされると、不安になった。しかし、同僚と笑っている姿を見て、大丈夫なのか?と双方の顔を伺う。何が会話されているのか分からないまま、20分ほどソワソワしながら座っていた。

彼の判子が押され、なんとなく受理されそうだと察した。
一度外に出て印紙を購入し、再び戻った。すぐに終わるだろうと、印紙を渡し立っていると、「まだ終わっていない」と指摘された。仕方なく椅子に腰掛け、おじさんの手元に目を落としながら時を待った。

「隣のブースにいけ」という雰囲気のことを言われ、写真撮影をし、指紋を収集された。最後に「ありがとう」と丸々とした手を合わせて、ぺこりとお辞儀をされた。目尻の垂れた可愛らしい目を見て癒され、やはりチーターだなと思いながら、警察署を後にした。

印紙を購入した際、“スタンダード発行ー30日”を選択したから、上手くいけば8月初旬には結果が分かるはずだ。だが、法的には申請から90日以内に通知をすればいいらしく、10月初旬が妥当だろう。

これまでスロバキア駐在した同僚のうち、1人は承認、1人は不承認となっている。
1/2の確率。
私はどちらに転ぶか。

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