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2024.11.24 ジレンマ
「人生ハードモードにしてるのは自分だからね。できるだけ悩みを少なくしたいなら、前の会社にあのまま残っていればよかっただけだから。」
久しぶりに電話した友人から、ズバリと正論を言われた。
彼は私と同じ大学院に通い、開発学を学んでいた。日本の大手民間企業を退職し、留学。その後UNVの制度を使って、国連機関で1年働いていた。同い年にも関わらず、すでに国連で働いた経歴を持つ彼に、羨ましさと悔しさ、そして誇らしさを私は持っている。
同じ業界に興味を持つ数少ない同期とは、定期的に電話をし、お互いの情報共有をしている。
彼は現在、駐日の国際機関で働き、日本政府との関わりも多いらしい。そうなると、日本資金を扱っている手前、いかに国益となるかが最重要課題として議論に挙げられ、参っているようだった。これは我々NGOでも追及される部分だ。
海外支援をする際、日本の税金を使っているケースがほとんどである。
なぜ我々の税金を他国に回すのか?
一つの大きな理由は安全保障だ。簡単な例で説明するなら、今回のようにウクライナがピンチの時に、日本資金で支援をする。そうすると、今後日本の身に何か起きた時に、ウクライナに助けてもらおう。また支援をしたら、ウクライナから日本に攻め入られることはないだろうという、国交政策だ。
だから、私たちが配布している支援物資には必ず、日本の国旗や“日本からの支援”とわかる文言を入れる。市民レベルで、ウクライナの方たちと良好な関係を築くためだ。
だが話を聞いていると、彼の組織の場合は日本の国益を重視しすぎて、結局支援先の国の発展や支援になりきれない事業が展開されているらしい。たとえ、こちらが良かれと思っていても現地にニーズがなければ、ただのありがた迷惑である。
彼も私も、途上国や困っている人を良くしたいという思いでこの業界に入っている。
事業を回すには資金が必要。その出資者に利となることしつつ、現地の要求にも応えたい。だが、なかなかその歯車がうまく回らない、歯痒さが時折訪れる。
一通り仕事の話を終えると、大概仕事とプライベートの両立の話へと流れる。
アラサーの同業者と話すと、100%この議題が上がってくる。
私たちの仕事では、海外を1〜2年単位で渡り歩き、かつ、その派遣先も決して治安や衛生環境が良いとは言えない地域で生活をする。そこで家族と生活するには、課題が山積してしまう。
パートナーが僻地に帯同してくれるのか。相手のキャリアも尊重できるのか。子どもを作るなら、衛生・教育環境は整っているのか....。悲しいことに、この業界は独身率と離婚率が高いのは、両立が難しいからだろう。
だが、たとえ課題があろうとも、家族帯同で駐在できるのが一番いいという結論になった。やはり、1人で海外に住んでいても楽しくないのだ。
そして「いやー、どうしたらいいんだろうね。」という負のループに入る。
彼のいう通り、この仕事は自らが選んで進んできた道だ。それに後悔はない。
結婚したいなら、日本に戻ればいいだけだ。
だが裏を返せば、自分のキャリアを諦めなければ結婚ができないのだろうか。
仕事も人生もジレンマだらけである。