2024.07.09 遠すぎるウクライナ
「昨日キーウで爆撃があった。」
毎2週間に一度のウクライナとの会議。
今日は第6回目にして、初めてウクライナ側のプロジェクト・マネージャーがパワーポイントを準備してきた。
最初のページにあったのは、キーウの小児科病棟の写真だった。
大きく破壊された建物の前に人が集まり、水を運んでいる様子が写っていた。
他にも、白い壁が赤く染まった写真など生々しいものが含まれていた。
小児科病棟には、癌など重度な疾患を持った子どもたちがいた。
手術中だった子ども。
呼吸器がないと生きられない子ども。
きっと誰よりも「生」に必死になっている子どもたちを攻撃するとは。
日本にいたら、「またウクライナのニュース」と流していたかもしれない。
だが、今の私は心が震える。
画面越しで繋がっている、同僚からの生の声。仲間が、現場で水を配る写真。
もう遠い国の出来事ではない。
報道ではこの攻撃は、戦争的な影響は何も与えないと言う。
避難アラームが日常化しているキーウ在住者たちに、恐怖心を与えることを目的とした攻撃だったと語られている(もちろんロシア側は、小児病棟を意図的に攻撃したとは言っていない)。
国際人道法違反も甚だしい。
子どもに何の罪があると言うのか。
悔しい。
私ですら、怒りが込み上げてくる。
これまで、私のウクライナ渡航を団体として視野に入れていた。
外務省に申請して通るか分からない段階だが、この一件でキーウに入ること自体を危険視する意見が組織内で出てきた。
もちろん危険である。戦争が起きている国に入るのだから、当たり前だ。
そんな半端な覚悟で、私も入国を希望しているわけではない。
緊急人道支援の分野を選んだ時から、足の一本や二本くれてやるぐらいの思いを持っている。
むしろ、こういう時こそ現場に一目散に行くべきである。
今の団体に入って、緊急時の対応力に足枷を感じる。
能登半島地震が起きた時も、とある団体は発災の翌朝には現場に向かっていたのに対し、うちは数日遅れで入った。
団体の資金力・人材力・移動手段などのリソース、全体の動きの中での調整が重要なのは分かる。だが、焦ったくて仕方がない。
今回の小児科病棟は大きな病院だったのもあり、多くの支援が集まっているらしい。
だから、今すぐ私にできる何かがあるわけではない。
あったとしても、現場に入ることは許されない。
隣国にいながらも、ウクライナが遠すぎる。
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