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2024.12.27 ベラト

各国を旅した人が「ベラトはこれまで行った街の中で3本の指に入る」と言っていた。
ベラトで検索をかけると、“千の窓”で世界遺産に登録された写真が並ぶ。家が山沿いに沿って連なる場所は、ブルガリアのヴェリコ・タルノヴォなど他にもある。半信半疑の中、コソボのプリズレンからバスを乗り継ぎ、約6時間かけてアルバニアのベラトへ向かった。

アルバニアに入ると雪は溶け、久しぶりに暖かい日差しを感じた。地中海に面しているだけあり、一気に気候が変わる。20人程度を乗せたバンが、農村エリアを走る。時々、道端で手を挙げた人を車に乗せ、車内で立ち上がる人を下ろしていった。一面畑のような場所でも下車していくため、一体どこへ向かうのだろうかと思いながら視線を送る。

ベラトは、首都ティラなから南に2時間半ほどバスで行ったところに位置する。丸一日あれば、一通り見て回ることができる、比較的こじんまりした街だ。

到着早々腹ごしらえをし、メインであるベラティ城へと足を向けた。地図に従って、石畳の階段や坂道を上り、とにかく上に向かった。しかし、迷路のようなクネクネした道に、迷子になった。分かりやすい一本道があるため、普通の観光客は問題ないはずだ。だが、私にとってこの迷子タイムこそが、ベラトの良さを凝縮させていた。

地面も左右も全て石に囲まれ、まるでゲームの中にいるような感覚だった。人も少なく、時折すれ違う人は皆地元の人のようだった。スーパーの袋を持ち、パジャマに草履のような格好の人もいた。
天気も良かったためか、外で談話している女性二人組がいた。住宅街に観光客が紛れ込んだためか、声をかけてくれた。
「お城かい?下に降りて左に行くといいよ。」

アルバニア人は非常に優しい。これまでいった国で、親切にしてくれた人はいた。しかし大抵、お金の匂いをさせてきた。道案内をしたら、最後に報酬を求める者。自分が贔屓にしているタクシーを紹介する者。色々試食させて、土産を買わせようとする者。いつしか、旅をする時は心の鎧も装備し、騙されまいとしてきた。
しかし、アルバニアで会った全ての人が優しかった。いかに自分の心が荒んでいたのか、恥ずかしくなるほどだ。

人が親切だからか、野良犬まで優しく見えてしまう。実際、人々が動物に対しても丁寧に接しているからだと想像する。野良であるものの、耳にはタグをつけ、最低限の管理がなされているように感じた。住民たちで育てている野良犬というのは、新鮮だった。

隣国のコソボも、多数派はアルバニア人で構成されており、圧倒的なるムスリム教国である。就職などで優劣が出るため、ヒジャブをつける女性は少ないもののの、信仰心は強い。特にセルビアとの対立から、キリスト教の教会には鉄格子が張られ、世界遺産だろうと中に入ることができない。

一方で、アルバニア本土にいるアルバニア人は、宗教に寛容だ。無宗教政策が取られた影響かもしれないが、ベラト内にある教会もモスクも全て開放されていた。アザーン(イスラム教のお祈り)が流れが、教会も鐘を鳴らす。宗教に対するオープンマインドなところも、心が安らぐ一要因だ。

食事はオスマントルコの影響を受けたと思われるものが多い。パプリカにお米を詰めたものや、ケバブなどがあった。どれも程よいスパイスが感じられるが、辛くはない。ヨーロッパを旅すると、途中からお米を欲することがあるが、食文化も日本人に合う。

近年、トルコやモロッコは人気の観光地として注目を集めている。だが、次はアルバニアが来るような予感がする。観光業で一旗あげるか、と私も思ってしまうほど、初日から大満足の国である。

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