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2024.12.04 暗闇に映る自分
「お前は、何をしたか。どのように貢献できたのか。」
日中は田園風景が広がるスロバキアだが、夜になると街頭が少なく、暗闇に包まれる。同僚の運転する車に揺られながら、窓に映る自分が問いかける。
体育館を一回り小さくしたほどの大きさの建物に、人が溢れかえった。
机の上にはぬいぐるみやお菓子が並び、赤や青などのパッケージが華やかに彩る。最初は20人ほどだったが、開始予定時刻の16時を回る頃には、1mの距離では会話が聞こえないほどの賑やかさだった。
この日は、スロバキア国内で生活しているウクライナ避難民の子どもたちに宛てて贈る、クリスマスプレゼントのパッキングを行うことになっていた。そのために、トレンチン周辺に住むウクライナ人ボランティアが多く集まってきたのだ。
コーディネーターが声を張り上げ、袋詰めが開始しされた。赤のサンタの絵が描かれた袋に、バケツリレー方式で、一つ一つプレゼントが詰められていく。最後に、リボンで締めるころには、袋はパンパンになる。それを200個分、作り上げる。
パッキングをする者、写真を撮る者、クリスマスツリーに飾りをつける者…。各々がクリスマスを迎える準備をしていた。近づく休暇に、人々の心は躍り、笑顔が溢れる。
「すべてパッキングが終了しました!」という声が響き、1時間も経たないうちに、目標が完遂された。その後クリスマスツリーの前で集合写真を撮り、5人の日本人スタッフが、全員の前に立たされた。
目の前には、0歳児から5〜60代ぐらいの老若男女が、およそ80人ずらりと並んだ。
私たちをじっと、にこやかに見ている。
数か月前にインタビューした男子高校生、一人娘と共に避難してきたお母さん、一緒に仕事をしているコーディネーターたち…。彼らの中には、ウクライナに家族を残しその身を案じていたり、スロバキアの生活に慣れず、苦しんでいる者もいる。彼らと一対一で話をしていると、時折目から光が消える瞬間を何度も目にした。
しかし今、一人一人の晴れやかな表情を見ていると、目頭が熱くなった。私たちが支援している人たちが、こんなにも多くおり、その全員が笑顔でいることに、強く心が揺さぶられた。
帰りの車内。喜びに満ちた明るい心に、夜の靄がするりと入ってきて問いかけた。
「お前は、何をした。」
私はクリスマスプレゼントを調達したわけではない。物資を購入する資金を確保するための、奔走もしていない。ウクライナ人ボランティアを、自ら呼び集めてすらいない。
駐在して1カ月足らずの時に参加した、ケジュマロクのイベントの時も「私は何もしていない」と自分の無力さを悲観した。あの時から約半年が経ち、仕事を覚え、間違いなく成長している自負はある。
だが、ふと立ち止まる。
一体、私は何をし、何を彼らに与えることができたのか。
暗黒の中、ぽつんと一人立ち尽くす。