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2024.05.17 先輩の背中

朝から少しソワソワしていた。
久しぶりにスーツに袖を通したからか、背筋が伸びる。

朝降っていた雨は止んだものの、空はまだ灰色だった。出勤時に濡れた靴は、未だしっとりとしている。事務所にいた3時間でどうにか乾かせないかと、ペーパータオルを敷き詰めていたが、大した効果はなかったみたいだ。

スロバキアに来て5日目。歩きにくいけど、趣がある石畳。パステルカラーに彩られ、ヨーロッパ感あふれる連結したアパルトマン。ようやく旧市街に足を踏み入れた。

そして、その中心にあるのが日本大使館。今日は大使に挨拶に来た。
重い扉をくぐってからは、前任者である先輩の後ろをついて歩いた。本来私が話すべきところを、彼女が資料を用意、説明してくれた。何から何まで、おんぶに抱っこで情けないなと思う。それと同時に尊敬の眼差しで見ていた。

大学卒業後、民間企業の営業マンだったという彼女。
「就活の時、何したいのか分からなくて。そんな気持ちのまま面接行ったら、やっぱり落ちちゃって、そのまま就職に失敗したんだよね。」
先輩は、心を開くまではあまり積極的に話すタイプではない。だけど、上司だろうと思ったことはなんでも意見し、物怖じせず要求を伝える姿を見てきた。だから、「営業」と聞いて違和感を感じていた。

だが大使と話をしている彼女は、別人だった。“営業マンっぽい”。
今回の私のプロジェクトは、95%ウクライナが中心の活動である。正直スロバキアはほとんど関係がない。しかし、大使が興味あるのはスロバキアである。そのため話の主軸をスロバキアに置き、私たちの団体や活動を説明していた。

一見当たり前のことかもしれない。だけど、相手が求めているもの考え、提供できるというのは、彼女の力であると感じた。私は、横にちょこんと座って愛想笑いをするしかできなかった。ただ、しっかりと先輩の背中から学ばさせてもらった。

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