2024.11.07 約束
人には、それぞれの物語がある。
どこかの誰かが言っていた。
だが、エレナ(仮)から聞く話は、まるで映画を見ているようだった。
スロバキアの地方出張も慣れたもので、今回で4回目だ。片道4時間半の電車旅。
スロバキア人でもなかなか行かない、田舎村のケジュマロクに東洋人が月一ペースで通うと、何かと目立つようだ。ホテルのオーナー、レストランの主人は、すでに私の名前を覚え、「今月も来たのね」と迎え入れてくれる。
しかし、誰よりも大きな笑顔と抱擁で迎え入れてくれるのが、エレナだ。
私とは10ほど歳が離れているが、それを感じさせない。天真爛漫とは、彼女のための言葉だと思うほど、明るく人懐っこい。
これまで、空き時間があるとハイタトラス山脈に登ったり、ケジュマロク城を一緒に回ったりした。また、夕食を共にする機会も多く、このスロバキア生活の中で一番仲良くなったのは、彼女だと思う。随分と気心知れた仲になれた。
だから少し踏み込んだ。
「言いたくなかったら、答えなくていいからね。でも、もし聞いていいなら、エレナはどうやってウクライナから避難してきたのか教えてほしい。」
彼女はそっと目線を落とし、サーモンをフォークに乗せようとした。
「全然、いいよ。」と答え、少しずつ思い出しながら語り出した。
彼女の壮絶なるストーリーは、ここには書かない。
自由気ままに綴る私のNoteではなく、もっと大勢の人が目にする場に発信し、語ってくれた彼女への義理を返す必要があると感じているからだ。ニュースで報道される、数多くのウクライナ避難民ではなく、エレナという1人の人間が、このウクライナ戦争をどう生き抜いているのかを知ってもらいたい。
今はまだ、その執筆の途中にあり、それをどこで発信するかもまだ悩んでいる。だが、必ずやり遂げると、エレナと約束した。