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2024.12.31 年の瀬
海外で生活していると、どうしても“年末感“が薄くなる。
31日まで仕事をしているからか、日本の年末特番がテレビから流れてこないからか…。
日本もウクライナも、スロバキアですらもスタッフは実質稼働していない。だが、スロバキアの祝日と定められていない以上、私は今日も働くしかない。
ゆるゆると会計の書類の確認や事業監査の準備などを進めながら、一日が過ぎていく。
夕方になり、せめてワインの一本でも買って晩酌でもするかとスーパーに向かった。明日は祝日でスーパーも開かないためか、食品売り場は見事に空だった。分厚いコートに身を包んだ人々が、いそいそと残った食材をかき集めては、レジへと持っていく。
ブラチスラバでは、オペラ座の前でカウントダウン花火が上がる。2度と見る機会がないかもしれないから、行くかと考えていた。だが、あまりの寒さと、夜な夜な出歩くことへの面倒臭さが勝ってしまった。
ドーン、パチパチ。
18時ごろから、あちこちで花火の音がする。だが、窓から顔を何度覗かせても、見当たらない。花火の音を背景に、NHK +で紅白を見始めた。去年は札幌旅行中のホテルで、姉とアイスクリームを片手に見たことを懐かしく思う。
年越しが近づくにつれて、周囲の花火の音の数が増えてきた。
もう一度外を見ると、左の方でも、右の方でも花火が上がっている。住宅街の中にも関わらず、せいぜい10階ほどの高さで花開いている。ご近所さんは怖いだろうなと心配になりながら眺めていた。
また、よく見ると目の前でも、ぴかりと光るのが見えた。どうやら、爆竹も音の正体のようだ。
以前、ウクライナ人のスタッフと話をした時、「年末の花火が嫌いなの。戦争が始まってから、大きな音が怖くなってしまって…」と言っていたのを思い出した。いつしかきれいな花火は、爆撃音にしか感じなくなってしまったのだ。
そのようなことを思い出しながら、ぼんやりと靄がかかる夜空に咲く花を眺めた。
今年も色々あったなと思いに耽る。
今年は能登震災から始まり、発災3週間で現地入りした。私にとって、初めての緊急支援の現場だった。その数週間後には、スロバキア駐在を言い渡され、バタバタとこの地での生活を始めた。紆余曲折ありながらも、8ヶ月が経ち、随分と生活が落ち着いてきたなと思う。
小学校の教員を辞めて以降、来年はどこにいるのだろうと毎年考える。
去年は札幌、一昨年はイギリス。まさか2024年はスロバキアにいるとは思いもよらなかった。来年は、また違う場所にいるかもしれない。
まだ見ぬ未来が不安であり、楽しみである。
そう思いながら、ゆく年くる年から流れる鐘の音を聞きながら、布団に入った。